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紙の雑学

薄いのに裏が透けない、広辞苑本文用紙のイノベーション

2018年1月、10年ぶりに改訂された広辞苑 第七版が書店に並びました。候補となった約10万項目から厳選した1万項目を追加。合計25万項目を収録しました。その結果、第六版よりも140ページが増加。でも、厚さは変わりません。いったいどんな秘密があるのでしょうか?

目次
  1. 1955年の発行以来、版を重ねた広辞苑
  2. 薄く、透けにくい用紙を開発
  3. 三浦しをんさんの『舟を編む』の舞台?
  4. まとめ

1955年の発行以来、版を重ねた広辞苑

広辞苑の初版が発行されたのは、1955年。高名な言語学者で国語学者の新村出(しんむら・いずる)さんと、その息子でフランス文学者の猛(たけし)さんによって編まれました。 20万項目を収録した広辞苑の価格は2,000円。公務員の初任給が9,000円ほどの時代でしたが、1年で12万部が売れました。コンセプトは、「国語辞典と百科事典を1冊に」。以来、「日本語として定着した言葉」を厳選し、日本を代表する辞書として人々に愛されてきました。

140ページ増えても厚さは変わらず8cm

広辞苑 第七版は、第六版よりも1万項目多い合計25万項目を収録しています。その結果、ページ数も140ページ増えています。けれども厚さは同じ8cm。それ以上厚いと製本できないからです。文字を小さくしたり、行の間隔を詰めたりすると読みづらくなるため、残る方法は「紙を薄くする」ことだけ。ところが、用紙を薄くすると、今度は裏面の文字が透けてしまうことが問題でした。

薄く、透けにくい用紙を開発

本文用紙の開発にあたった製紙メーカーでは、5年の月日と10回ものテストを繰り返し、薄さと透けにくさを両立した第七版専用の用紙を開発しました。透けにくさの決め手は不透明度。紙に配合する薬品の種類と適切な量を、技術者の経験と技とはじき出し、難しい条件をクリアしました。

指に紙が吸い付くような、めくりやすさを

もう一つのハードルが「ぬめり感」。広辞苑編集部がこだわる、指に紙が吸い付くような、めくりやすさの感覚です。静電気で指にまとわりついたり、次のページが一緒にめくれたりせず、快適にページをめくっていける絶妙な触感です。数値では測りきれない、人間の感性や感覚にフィットする必要があり、この調整も困難を極めました。

三浦しをんさんの『舟を編む』の舞台?

広辞苑 第七版の発売にあたっては、本屋大賞にも輝いたベストセラー『舟を編む』の著者・三浦しをんさんのルポエッセイ『広辞苑をつくるひと』が予約特典になったことも話題を呼びました。 「辞書は言葉の海を渡る舟、編集者はその海を渡る舟を編んでいく」という意味を込めた『舟を編む』の執筆にあたって、三浦しをんさんは広辞苑をつくった岩波書店辞典編集部の取材も行いました。 『舟を編む』は、新しく刊行する辞書『大渡海』の編さんメンバーとして、主人公の馬締光也が辞書の世界に没頭していく姿を描いた作品です。この小説を読んでから広辞苑を手にすると、編集者たちの情熱がリアルに伝わってくるかもしれません。

まとめ

いかがでしたか?
もしかすると、紙の辞書を手にする機会は以前より少なくなっているかもしれません。でも、川端康成さんは広辞苑を「終生机上師友」と呼び、宮尾登美子さんは上京の際に蔵書を売り払ったのに広辞苑だけは手放さなかったというエピソードが残っています。時には紙の辞書で、言葉に触れてみるのもいいかもしれませんね。

広辞苑 第七版に新たに収録された項目(抜粋、あいうえお順)

●現代語
朝ドラ、安全神話、いらっと、上から目線、お姫様抱っこ、可視化、加齢臭、口ぱく、小悪魔、ごち、婚活、自撮り、白物家電、ちゃらい、まかない料理、無茶振り

●カタカナ語
イップス、グランドデザイン、コインパーキング、スピンオフ、スマホ、スルー、ツイート、ハニートラップ、バリスタ、フードコート、ブロガー、レジェンド

●人文・社会
アラブの春、イスラム国家、ウィキリークス、LCC、オスプレイ、強制起訴、ねじれ国会、ハラーム、ビットコイン、ブラック企業、マタニティー・ハラスメント

●人名
植田正治、梅棹忠夫、永六輔、大鵬、高倉健、つかこうへい、鶴見和子、土井たか子、戸塚洋二、原節子、オバマ、スピルバーグ、チャスラフスカ、ベッケンバウアー

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