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植物由来の新素材、セルロースナノファイバーの驚きのチカラ!
紙の原料であるパルプは、樹木の繊維です。そしてパルプは、もっと細かい繊維、セルロースナノファイバー(CNF)が集まってできています。その太さは、髪の毛の5,000分の1から、1万分の1程度。それなのに、強度は鉄の5倍、重さは鉄の5分の1とも7分の1とも言われます。 CNFは、これまでの常識を一変させるかもしれない新素材として、熱い注目を集めています。その魅力と可能性を、2回シリーズでご紹介します。
そもそもセルロースナノファイバーとは?
紙と鉄、どちらが強いか。考えるまでもなく鉄ですね。理由の一つは、紙の原料であるパルプが、さほど強く絡み合っていないため。パルプから取り出した極細の繊維、セルロースナノファイバー(CNF)は、固めると繊維同士がとても多く結合するために、鉄の5倍もの強度をもつ夢のマテリアルと言われています。
セルロースは、樹木をはじめとするあらゆる植物に70%ほど含まれ、木の強さの源となる重要な成分です。古い木造建築物が、いまでもしっかりと当時の姿をとどめているのも、セルロースの力です。
化石燃料に頼らない循環型社会を実現
CNFが「夢の新素材」と期待されるのは、化石燃料に頼らない循環型社会を実現できるかもしれないからです。
CNFは、木材からはもちろん、野菜くずやジュースを絞ったあとの果実かす、ワラや雑草からも取り出すことができます。あらゆる植物から高機能な工業原料を作れるとなれば、林業にも農業にも新しい注目が集まり、結果として二酸化炭素の吸収も促進されることでしょう。
ナノレベルまでほぐすことが最大の課題
CNFは、植物繊維を化学的・機械的に処理して、ナノレベル、つまり100万分の1ミリまで細かくほぐすことで作れます。でも、ほぐす工程に膨大なエネルギーがかかり、価格が高くなってしまいます。 軽量で強度が高い、ガスを通しにくい、粘性を高めるなど、他の素材よりも優れた特性を持ちながらも、応用製品が少なかったのも、この価格のせいでした。
ついに発見された画期的な製造法
CNF製造技術のブレークスルーは、2006年に起こりました。東京大学農学生命科学研究科教授の磯貝明教授らのチームが、「TEMPO(テンポ)」と呼ばれる薬品を使って、パルプの表面を酸化させることで、限界までバラバラにする方法を世界で初めて発見したのです。これによって、従来の100分の1のエネルギーでCNFが作れるようになりました。
磯貝教授らはCNF実用化への道を開いたことなどにより、2015年に「森林・木材科学分野のノーベル賞」と言われるマルクス・バーレンベリ賞を受賞しています。
まとめ
いかがでしたか?
CNFを活用した製品は、身近な日用品として、すでにいくつか販売されています。本格的普及には、生産コストのいっそうの低減が課題とはいえ、日本発の機能素材が近未来の可能性を開き始めています。 次回は、現在CNFがどう使われているのか、これからどう使われていくのかをご紹介します。