これからの消費のカギを握る
実践「Z世代マーケティング」
2024年1月15日
流通お店づくりトピックス
■業種・業態:物販店/衣料店
■キーワード:SNS/スマホ/購買行動/リピーター
これから消費の中心を担うとされるZ世代(一般的に1990年代半ばから2000年代初頭生まれを指す)。彼らはどんな価値観をもち、どんな消費行動を好むのか。Z世代の素顔を探り、若いお客様を呼び込む実践的な「Z世代マーケティング」をお伝えします。
「失敗したくない」が共通価値観 スマホで調べ、実店舗に足を運ぶ
Z世代の価値観に大きな影響を与えているのは、世の中の出来事より、SNSやスマホの中のアプリの進化です。それによって友人や家族とのコミュニケーションや自分らしさの表現方法が変わり、行動に影響を与えています。
Z世代は東日本大震災を子どもの頃に経験しています。親の多くは団塊ジュニア世代で、親自身が就職氷河期に社会人になるなど、苦労を重ねた世代です。Z世代も経済が低迷する中で育っているので、不安感の裏返しから「しっかり準備しなければ」という意識が強い傾向があります。
彼らに共通するのが「失敗したくない」「後悔したくない」という価値観です。Z世代は世の中に流通する情報量が爆発的に増えていった2000年代以降に育ち、様々な情報がスマホなどを通して入ってくるという経験をしています。あふれる情報に惑わされ、失敗や後悔も経験しています。それが何をするにしても「失敗したくない」「後悔したくない」という価値観につながっています。
したがって、よい情報だけを元に行動することには不安があります。彼らの購買行動の多くはスマホをきっかけに始まります。
しかし、広告だけを見て衝動的に買うことはほとんどありません。SNSなどで気になる商品に出会ったら、様々なサイトを見に行き、よい情報だけでなく、ネガティブな情報がどれだけあるかもチェックします。最終的に自分の中でOKサインが出たら、最後はお店に行き、自分の目で見て、触って、確かめてからでないと買わない世代です。
目新しさより安心感 流行に惑わされず定番志向
Z世代は定番志向が強く、目新しさより安心感を重視します。なぜなら、目新しさは「失敗するかも」という不安につながるからです。したがって、あまりに斬新なものや奇をてらったものは敬遠し、よく知っているブランドの正統的なものを好みます。
アパレルなどは好きなものを大切に使いたいから、長く着られるものを購入したいと考えます。それがすぐ上のミレニアム世代との違いです。
28歳より上のミレニアム世代はファストファッションがブームだった頃に育っており、安いことが正義と考える傾向がありますが、Z世代はトレンドに惑わされたくないという気持ちの方が強いのです。
商品の〝ストーリー〟に共感 応援や感謝の気持ちで購入
非常にコスパ(コストパフォーマンス)感覚のある世代ですが、コスパをただ安いだけとは捉えていません。
安くて品質がよいのは当たり前で、購入してみたら「メーカーがこんな思いで作っていたんだ」というような〝想いとストーリー〟に共感し、そこにコスパを感じます。
彼らの購買行動には共感や応援、感謝の気持ちなどが入っています。この感覚がいわゆる〝推し〟につながっており、「気に入っているインフルエンサーを応援したいので、その人が紹介していた商品を買いました」という購買行動をとったりします。
環境意識が高いのもZ世代の特徴です。節水・節電などを学校できちんと教えられてきた世代であり、〝エコ〟は彼らにとって当たり前の価値観です。調査では「環境に配慮した商品を買う」人が全体で15%未満(図2参照)でしたが、よく聞いてみると「わざわざエコな商品を探し、高くても購入する」人が少ないだけで、「環境によくない商品はそもそも選択肢から外す」という人がほとんどでした。むしろ「消費しないことこそがサステナブル」と、消費をネガティブに捉えている世代です。
Z世代の消費行動
Z世代に聞いた「購買の際に意識していることは何ですか?」
全体 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
1.コスパの良いものを選ぶ | 59.1 | 55.8 | 61.5 |
2.長く使えるものを買う | 48.3 | 47.2 | 49.1 |
3.流行よりも自分が必要とするものを自分で選ぶ | 39.6 | 33.1 | 44.5 |
4.衝動買いをしないようにする | 38.1 | 30.7 | 43.7 |
5.女性用を気にせずに買う・男性用 | 20.7 | 19.9 | 21.3 |
6.なるべくものを買わない | 20.2 | 19.7 | 20.6 |
7.新商品よりも今使っている商品を買う | 16.5 | 15.6 | 17.5 |
8.トレンドや流行を気にして買う | 15.4 | 16.0 | 14.9 |
9.発売元の企業の知名度やブランドを気にする | 15.2 | 16.7 | 14.1 |
10.環境に配慮した商品を買う | 14.6 | 17.1 | 12.8 |
図2:Z世代の消費行動
N=1,073 単位:%(複数回答)
出典/産業能率大学経済学部 小々馬敦研究室
「Z世代・大学生が描く2030年のウェルビーイングな社会」
常に〝ときめき〟を探す「自分で選んだ」感覚を重視
そうした特徴を持つZ世代に商品やサービスを訴求し、購買につなげるにはどんなアプローチが有効なのでしょうか。
まず、彼らは常に〝ときめき〟を探しており、商品の購入プロセスにおいても、それを重視します(図3参照)。例えば、よく見ているスマホのページで偶然見つけたとか、お店のショーウィンドウで目を引いたなど、その商品に思いがけなく出逢ったように感じると、ときめきを感じます。
次に、信頼している人の情報を見に行き、自分に合っているかどうかを確認します。重要なのはオフィシャルな情報と、口コミ的な情報の両方をチェックすることです。オフィシャルな情報はこれまであまり見られていませんでしたが、SNSの情報だけで購入して失敗した経験も重ね、最近は両方を見比べたいと考える人が増えています。これがきちんと満たされると購買に進みます。そこで、商品のPOPにQRコードを付けるなど、そうした情報へのアクセスを容易にするような工夫があるとよいでしょう。
彼らは「自分で選んだ」という感覚を大事にします。押し付けがましさを嫌うので、広告やSNSを使った販促などで「あなたにピッタリ」「おすすめ」などといった文言は効果的ではありません。スタッフが実際に使ってみた感想を自分の言葉で伝えるなど、実直さを感じるリアルなメッセージの方が共感してもらえます。
ネットとリアルを融合させ「楽しい」と思える体験を応援
消費行動を起こすきっかけはスマホかもしれませんが、前述した通り、初めて買う商品は店頭で実際に見てから買いたいと考えています。ネットのみでの買い物は基本的にときめきを感じにくいからです。そこで、わざわざ店舗に来てくれた彼らにどう応えるか。そこにZ世代を取り込むヒントがあります。
例えばアパレルショップなら、どんどん試着をしてもらい、スマホでの自撮りをOKにするなど、この世代が恐る恐るやっていることを思い切って受け入れる方法などが考えられます。
また、商品は実店舗でもネットで買うときのように家まで届けてほしいと考える世代であり、ネットとリアルがうまく融合した仕組みづくりも有効です。店舗で買った商品を家まで届けるサービスを提供しているスーパーマーケットがありますが、こうしたやり方がZ世代にも案外受けるかもしれません。
飲食店の場合も、その場でときめきを味わいたいという動機が先にきます。したがって、環境や空間など、いわゆる〝映え〟を優先して店を選びます。そして「おいしいね」「いいね」となれば繰り返し来店します。
1度だけで終わらせず、何度も来店してもらうには、心から「楽しかった」と思えるような体験が必要です。業態を問わず、そうした体験をうまくサポートできると、Z世代をリピーターにすることができます。
※当記事は2023年7月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。