顧客データの分析方法
5つのフレームワークと売上アップの方法
顧客データを定量的に分析してマーケティングに活用していくことで、販促活動はより効率化します。では、顧客データ分析は実際にどのようなアプローチで行っていくべきなのでしょうか?
顧客データ分析の代表的なフレームワークについて、特徴や活用できるシーン、売上アップにつなげる方法などを紹介していきます。
顧客データ分析のフレームワーク
顧客データ分析に用いられる手法にはさまざまな種類がありますが、代表的なフレームワークとして以下の5つのアプローチを取り上げていきます。
- デシル分析
- セグメンテーション分析
- バスケット分析
- RFM分析
- CTB分析
デシル分析
「10等分」を意味する「デシル」分析は、購買履歴データから過去の購入金額を顧客ごとに算出し、購入金額順に10等分にグループ分けをする手法です。すべての顧客を購入金額で10等分したグループに分類し、グループごとに購入比率や売上構成比率を算出していきます。
デシル分析を用いることで、売上への貢献度をグループごとに把握し、販促活動を効果的に行えるようになります。たとえば、上位グループの売上構成比率が高ければ、上位グループにのみ販売促進のためのさらなる施策を展開するといったアプローチです。
なお、デシル分析はマーケティング初心者でも取り入れやすい手法ですが、高額な商品を「一度だけ」購入した顧客であっても、購入金額の上位グループに入ってくる点などに注意が必要です。
セグメンテーション分析
セグメンテーション分析とは、顧客を属性によって類似性の高いグループに分類し、市場を細分化する手法です。顧客を分類する指標には、年齢や性別、所得水準、居住する地域などの属性情報のほか、購入頻度や購入回数などさまざまな切り口が考えられ、目的に応じて使い分けます。
セグメンテーション分析は、自社の商品やサービスを有利に展開できる市場を見つけたいときに有効な手法です。細分化した市場の中でターゲットを絞り込むことで、商品やサービスの企画、あるいは販売戦略に役立てられるなど、効率的なマーケティング施策の展開をサポートします。
バスケット分析
バスケット分析は買い物かご単位、つまり1回の会計単位で同時購入されたものの傾向を分析することで、合わせ買いをされやすい商品の傾向を把握する手法です。
同時購入されやすい商品の相関関係を把握することで、一緒に購入される傾向がある商品同士を近くに配置するなど、売場のレイアウトや棚割りに活用できます。あるいは、同時購入されやすい商品をセット販売するなど、販促キャンペーンにも役立てられます。
RFM分析
RFM分析は、下記の3つの指標の頭文字から名付けられています。
- Recency(最終購入日)
- Frequency(購入頻度)
- Monetary(購入金額)
RFM分析は、購買履歴をもとに3つの指標からランクづけをし、グルーピングを図る分析手法です。まず、3つの指標のそれぞれで3~5つのランクにグループ分けを行います。
- Recency:最終購入日でグルーピングし、直近であるほど高ランク顧客とする
- Frequency:購入回数でグルーピングし、合計回数が多いほど高ランク顧客とする
- Monetary:購入金額でグルーピングし、合計金額が多いほど高ランク顧客とする
次に、3つの指標ごとのグループをもとに、顧客全体を3~5つ程度のランクのグループに再分類し、このグループごとにマーケティング施策を展開します。
RFM分析は、商品やサービスがある程度浸透・成熟した段階で、顧客の状況に応じて効率よく販促施策を手がけていく際に向いた手法です。
CTB分析
CTB分析は、下記の3つの指標の頭文字から名付けられています。
- Category(分類)
- Taste(趣向)
- Brand(ブランド)
CTB分析は、3つの指標で顧客をグルーピングし、購入予測に用いられる手法です。
「Category(分類)」には大分類や小分類があります。たとえば、大分類はファッションアイテム、小分類はTシャツ、コート、スカートといったカテゴリに細分化します。「Taste(趣向)」は形や色や模様といった顧客の好みに関わるものです。「Brand(ブランド)」は顧客の好むブランドやキャラクターです。
このCTB分析は、パーソナライズされたマーケティングを展開したいときに向いている手法です。
エクセルを使った顧客分析
顧客データ分析にあたって役に立つのがエクセルです。エクセルを活用した顧客分析の具体的な方法として、次の2つの手法の手順を紹介していきます。
- デシル分析
- RFM分析
エクセルを使ったデシル分析
1.リストを作成する
デシル分析に必要な情報として、「注文番号」「顧客ID(顧客名)」「購入日」「購入金額」が入ったリストを作成します。
2.顧客ごとの購入金額を算出する
ピボットテーブルを用いて、行ラベルに「顧客ID(顧客名)」、値ラベルに「購入金額」をドラッグします。
3.顧客を購入金額の合計で並べ替える
顧客ごとの購入金額が自動集計されたら、購入金額の合計が大きい順になるように、降順で並べ替えます。
4.顧客に順位付けをする
購入金額が多い順に、顧客に順位付けします。
5.顧客のグループをランク付けする。
ここでは30名の顧客を10ランクに分けるため、3名ずつに分けてランク付けします。
6.表を作成する。
デシルランクごとに「顧客数」「合計購入金額」「合計購入金額比率」をまとめた表を作成します。「合計購入金額」の算出にはSUMIF関数を用います。
なお、「合計購入金額比率」は、「合計購入金額」を「総合計金額」で割って算出します。
7.円グラフを作成する
「合計購入金額比率」を円グラフにすると、視覚的に理解しやすくなります。
エクセルを使ったRFM分析
1.顧客ごとに最終購入日、購入件数、累積購入金額を集計する
「顧客ID(顧客名)」ごとに「最終購入日」「購入回数」「購入金額」をピボットテーブルで集計します。
2.最終購入日からの経過日数を算出する
基準日となる日を決めて最終購入日からの経過日数を算出します。
3.3つの指標ごとに基準を決めてランク分けをする。
「R:最終購入日からの経過日数」「F:購入頻度」「M:累積購入金額」の3つの指標ごとにランク分けの基準を決定し、「セルの書式設定」のユーザー定義を使ってランク分けをします。
POSシステムを使った顧客データ分析
多くの小売店が活用しているPOSシステム(POSレジ)は、レジ機能を効率化するだけのものではありません。会計時に取得・集積するデータを分析し、マーケティングに転用できることが、POSシステムの真価です。
POSシステムによって管理されるデータには、商品が販売された日時や店舗、商品名、個数、価格などさまざまな情報があります。また、ポイントカードなどによる顧客管理を行っている場合には、顧客の年齢層や性別といったデータも蓄積可能です。
このように、POSシステムから取得できるデータは、デシル分析やバスケット分析、RFM分析など顧客データの分析に必要な要素を網羅しています。データの利活用はますます重要性を増し、POSデータの分析は店舗運営のカギを握るでしょう。
これからのデータ分析には、属人性を極力排除した定量的なアプローチが求められますが、エクセルを用いた顧客データ分析では、関数などの専門知識がある程度必要になるため、人を選ぶ作業にもなりかねません。POSデータを多角的に分析し、効果的な店舗運営施策を提案する弊社システム「データソリューション」の導入をぜひご検討ください。
分析データを売上アップにつなげるには
顧客データを分析した結果を売上につなげるために、次に挙げるポイントへの理解を深めておきましょう。
- 現状を把握する
- 目的・目標を定める
- 適切なアプローチをする
現状を把握する
顧客データの分析で数値化されたデータにより、現状を客観的に把握し、問題点や改善すべき点を抽出できます。
たとえば、幅広い顧客層に対して販促活動を行っていても、デシル分析によって上位ランクの売上構成比率が高い状況が変わっていないことが判明した場合には、顧客の裾野拡大には機能していないと評価できます。戦略の見直しなども含めた対策が求められるでしょう。
目的・目標を定める
分析手法によって得られるデータには、分析それぞれの特徴が反映されるため、目的による向き・不向きもあります。分析した顧客データを活用していくにあたっては、「どういった目標を達成するために」「どんな目的でデータを活用するか」の明確化は欠かせません。
たとえば、「1日の売上目標▲万円アップ」という目標を立て、顧客1人あたりの売上価格の向上を図り目標達成を目指すには、バスケット分析を用いる方法が浮上します。バスケット分析の結果に基づいて売場のレイアウトを変える、セット販売のキャンペーンを行うことで、顧客の「ついで買い」を呼び込み、顧客単価のアップにつながることが期待できます。
適切なアプローチをする
顧客データの分析によってアプローチを図るべき顧客層が把握できたら、属性に合わせて適切な施策を講じることが大切です。
たとえば、最近はSNSが幅広い年齢層に浸透し、特にLINEでのアプローチは多くの顧客に受け入れられやすい傾向があります。その一方、セールの案内を毎年ハガキで送っている場合には、長年の付き合いのある優良顧客にとっては、なじみのあるハガキの方が向いていることも考えられます。
顧客の立場に立って、適切なアプローチ方法をとっていきましょう。
まとめ
顧客データ分析の実施で、限りある経営資源を有効に活用し、効率的なマーケティング施策を講じられるようになります。なお、顧客データ分析はエクセルで行うこともできますが、相応のスキルが必要となるため、属人性の高い作業となりがちな点には注意しましょう。専用ツールの活用も含めて分析方法を検討し、効率的な販促施策を展開してください。