イメージ画像

ETLツールとは?
DWH・EAIとの違いや必要な理由・選ぶ際のポイントを解説

あらゆる事業を展開する企業にとって、自社に蓄積されたデータは貴重な財産といえるものです。しかしその一方で、データの有効活用にあたっては、データの抽出にはじまり、集計、加工、出力など一連の処理が求められ、少なくない労力がかかります。

この労力を軽減してくれるものが「ETLツール」です。本記事では、データ活用の容易化をサポートするETLツールについて、DWHやEAIなど周辺ツールとの違いや、ETLの必要性、ツールを選ぶ際のポイントについて解説します。

ETLツールとは

ETLツールのイメージ

ETLツールとは、わかりやすく説明すると、社内外に点在するデータを収集し、活用しやすいように加工するツールのことです。「データを整理整頓するツール」とも解釈できるものであり、複数のベンダーから機能や性能が異なるプロダクトがリリースされています。

なお、ETLの言葉は次の単語の頭文字に由来します。

  • Extract(抽出する)
  • Transform(変換する)
  • Load(書き出す)

ETLツールは、データソースごとに異なる形式で蓄積されているデータを集約・統合し、部門間を横断したデータ基盤の構築に貢献します。

これにより、データ収集や加工処理の効率化、およびエラーの軽減に伴うデータの品質向上が見込めるほか、データ分析における作業効率および精度の向上も期待できます。

DWHとの違い

DWH(Date Ware House)とは、さまざまなシステムからデータを収集し、目的別かつ時系列ごとに整理するデータベースです。「データ用の大容量ストレージ」とも解釈できます。

DWHの役割はあくまでデータの「保管」「管理」であり、ETLのような「集約」「統合」は担いません。

役割
DWH データの保管・管理
ETL データの集約・統合・加工

つまり、DWHにて保管・管理するために必要なデータの集約・統合処理の役割を担うのがETLの関係になります。

なお、データ分析における最初のハードルは「データの統合」です。ETLは、データ活用の初期段階の課題を乗り越えるために欠かせない存在ともいえます。

EAIツールとの違い

EAI(Enterprise Application Integration)とは、社内のさまざまなシステムを統合し、データを連携するツールです。ETLと近しい概念となりますが、EAIはシステム間のデータ連携を主な役割とする、いわば「システム間の橋渡し」的な存在です。

残高照会や受発注処理といったリアルタイムなデータ処理を得意としますが、処理できるデータの量には限りがあり、大容量データの処理には適していません。

役割 得意な処理
EAI システム間のハブとなるデータ連携 残高照会、受発注処理などイベント的な処理
ETL データの集約・統合・加工 DWHへのデータ統合、請求書の月末締め処理などバッチ的な処理

一方、ETLはデータの集約・統合が主目的です。ある程度のデータを蓄積してからの一括処理を得意とするため、EAIよりも大容量のデータ処理に対応しますが、高速なデータ連携はできません。そのため、DWHへのデータ統合など、定期的なデータの連携処理に用いられます。

BIツールとの違い

BI(Business Intelligence)ツールとは、企業が蓄積するさまざまなデータの集約・分析を経て、その結果をビジュアル化し、迅速な経営判断や業務改善に貢献するツールです。

BIツールは、DWHに保管・管理されているデータを分析して可視化する役割を担うもので、ETLとはデータ処理のフェーズが異なります。

まずはETLにて分析しやすい形にデータを集約・統合してDWHに格納。そのDWHに格納されたデータを、BIツールで分析・ビジュアル化するプロセスになります。

ETLツールの機能と役割

ETLツールのイメージ

ETLツールが持つ機能とその役割を整理していきます。「ETL」の名に由来するとおり、異なる形式のデータを「抽出」「変換」し、必要な形式での「出力」が主な機能です。

  • 異なるデータを紐付ける
  • 対応する形式にデータを変換する
  • 必要な形式でデータを出力する

異なるデータを紐付ける

基幹システムやデータベースなど、複数の場所に散在するデータを抽出します。

ここでは、抽出元のシステムやファイルを指定し、そのなかから利用目的に沿ってデータを抽出するアプローチとなることから、CSVやExcelなど、データの形式が異なっていても問題ありません。この際には、データ妥当性の検証や識別、除外などの処理も合わせて実行されます。

対応する形式にデータを変換する

一定の規則に従い、DWHに格納しやすい形式にデータを変換します。なお前工程の「異なるデータの紐付け」において、格納しやすい形式にデータが変換・加工されている場合は、この工程は省略されます。

なお、ツールによっては抽出データの重複排除やグループ化といった機能を備えるものもあります。

必要な形式でデータを出力する

変換・加工したデータを出力し、DWHに格納します。DWHに格納する際は、データベースへのアクセスや操作を実行するコンピューター言語(SQL)を用いるよりも、DWHに備わった「インポート命令」機能の利用が、一度に大量のデータを高速で取り込めるためおすすめです。

出力方法として、データのフルロードのほか、データ抽出元のデータが更新されたら出力する増分ロード形式にも対応するツールがほとんどです。ツールによっては「毎週月曜日の朝8時」など決まった日時の定時処理なども可能です。

なぜETLツールが必要なのか?

ここまでに見てきた各工程を実行できるようなプログラムを構築すれば、ツールを利用しなくてもETLと同様のデータ処理は可能です。しかし、ETLツールが必要とされているのには、次のような理由が挙げられます。

  • データ処理にかかるコストを下げる
  • データ処理におけるヒューマンエラーを防ぐ
  • 点在するデータを統合して活用可能にする

データ処理にかかるコストを下げる

事業規模が大きくなり取り扱うデータ量が増えるほど、社内での役割分担や、それに伴う属人化が進行します。各部署や担当者に応じて、データの入力や保管に最適なシステムが使用され、その数が増えていくようになる流れです。

これにより、データを使用する側には、あちこちに点在するデータを集め統合する作業が求められるようになります。とても手作業では追いつかないため、プログラムを構築し実行することになるでしょう。しかし、データソースの数だけプログラムを開発する必要に迫られれば、データを集約・統合するだけでも多大な工数が発生します。

一方、ETLツールを使用すれば、各工程はノンプログラミング化し、作業効率は大幅に改善されます。データの取り扱いに長けた専門エンジニアリング人材も求められないため、人件費の低減にもなります。

データ処理におけるヒューマンエラーを防ぐ

ETLツールを導入せず、専用プログラムの開発にて対応する場合、データを直接操作することになります。結果、データの誤変換や喪失といったリスクが常に付きまとうことになるでしょう。

しかしETLツールを導入すれば、プログラムをゼロから開発する必要はなく、ヒューマンエラーの発生も未然に防止できます。専用ツールならではのUIにより、データの集約・統合の直感的な操作性が高まることも利点です。

点在するデータを統合して活用可能にする

データの有効活用は、事業の成長にも密接にかかわる重要なアプローチです。しかし、データが複数の拠点に点在している状態では、適切な運用は叶いません。

データは「必要なときに」「必要なものを」「素早く」取り出せるように、一箇所に集約・統合する必要があります。その実現に向け、ETLツールが必要とされているのです。

ETLツールを選ぶ際のポイント

ETLツールのイメージ

ETLツールを選ぶ際に意識すべきポイントは次のとおりです。

  • 連携が必要なデータに対応しているか
  • 利用目的との費用対効果
  • リテラシーに合わせた操作性

連携が必要なデータに対応しているか

ETLツールによって、対応するデータ形式やデータベースは異なります。これらの項目と、データ活用が想定される業務とのマッチングは、最初に確認すべきポイントです。

また、ツールの導入後には新たなデータ形式への変換が必要となる局面も考えられます。現時点で連携したいデータ形式・データベースと合わせて、「将来的に変換が必要になるデータ形式・データベース」も推測のうえで、ツール選定基準に反映しましょう。

利用目的との費用対効果

ETLツールは、プロダクトに応じて性能や機能が異なります。

たとえば「データを分析しやすいように成形したい」場合は、ETL機能に特化したツールがおすすめです。また、膨大なデータを抱えており、業務効率化を主目的に掲げる場合は、大量データの高速処理が可能なツールを選ぶ必要があります。

利用目的に沿ってツールを選定し、導入候補となるプロダクトが出そろった段階で、導入前後のデータ連携処理における作業コストを試算して費用対効果も算出しましょう。

リテラシーに合わせた操作性

ETLツールは直感的に操作できるものもあれば、操作に一定の知識や習熟度が求められるツールもあります。

ETLツールを実際に使用する担当者のデータ分析リテラシーやSaaSに関連する知識が優れていれば問題ありませんが、そうでない場合は、操作性を重視してツールを選定すべきです。

また、誰でも使いやすいツールを選ぶことはメンテナンス工数の削減や、属人化の防止といった意味でも重視したいところでしょう。

まとめ

データドリブンな事業運営において、社内外に点在するデータを収集し、形式をそろえ加工・書き出しを実行するオペレーションの整備は大前提となるものです。しかし、膨大な量のデータを取り扱うとなると、手作業では必ず限界が訪れます。

変化が激しい現代において、迅速なデータ分析・活用ができなければ生き残りは難しくなります。ETLツールにかかる期待値はますます大きくなっていくでしょう。

別窓 このアイコンのリンクは、新しいブラウザウィンドウ、または新しいタブを開きます。