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アドホック分析とは?
活用例から見るメリットやBIツールによる効率化の可能性

アドホック分析とは、個別の課題に対してリアルタイムにてデータを分析し、原因と対策を講じるための手法です。データ分析は、一定の項目の計測に対し定期的に実施されるケースが多いですが、アドホック分析では目の前にある個別の検証にフォーカスします

アドホックとは「限定的の目的のため」「その場限り」などを意味する言葉です。突発的に発生した特定の課題に対し、アドホック分析を用いることによって、適切なアプローチがスピーディーになされるようになります。

本記事では、アドホック分析の概要や活用シーンを解説します。

アドホック分析とは

アドホック分析とは、個別の課題や突発的に発生する問題への対処を目的とする際に実施される、データ分析の手法です。「ad hoc(限定的な目的)」のラテン語に由来するもので、定期的に実施するデータ分析とは異なり、スポット的にデータ分析を実行します。

ある事象を検証するために、担当部門に逐一データ分析の依頼をかけたり、その場では活用しない定期レポートまで作成したりといったオペレーションでは、不要な時間やリソースのコストが膨らむ一方です。重要度の低いアウトプットに時間が割かれた結果、事業判断におけるスピード感なども毀損されかねません。

一方、アドホック分析は、上記のような定型レポートには該当しません。決まった形式を持たない、いわゆる「非定型レポート」に分類されます。決まったフォーマットに必ずしも落とし込まないことから柔軟性に優れ、ミクロな視点からの適切な原因調査や仮説検証に役立ちます。

定型レポートとは

定型レポートとは、決められた項目のデータを定期的に集計・分析した結果を記録した報告書です。定期的に実施するデータ分析のほか、取引先に発行する発注書なども定型レポートに該当します。

定型レポートは、毎月の売上や店舗ごとの発注数推移のグラフ化などに優れています。状況を時系列にて分析できるほか、特定の条件からフィルタリングしたデータを抽出したいときなどにも役立ちます。

その一方で、突発的な課題の分析や、非定期に発生するデータ分析などへの対応には向きません。

また、レポートの作成そのものが目的になりやすいことから、「なぜ」データ分析を実施しているのか、本来の目的を見失わないよう留意しなければいけません。また、データを蓄積するツールにレポーティング機能があるものを選ぶなど、業務を半自動化しておかないと、アウトプットに少なくないリソースが割かれることになります。

非定型レポートとは

一方、非定型レポートとは、突発的な課題解決や、非定期にて実施するデータ分析に関する報告書です。アドホック分析も、この非定型レポートに分類されます。

定型レポートとは異なり、非定型レポートでは項目や内容は固定化されていないことから、必要となるデータも異なります。個別の目的に応じた内容で作成するため、定型レポートと比較して柔軟性の高さが特徴です。

また、内容は仮説検証や特定の商品在庫のレポーティングなど、個別の視点に立脚するものが多く、事前計画や準備も問われません。アドホック分析のような非定型レポートは、リアルタイムな課題に対する迅速な意思決定などに貢献します。

アドホック分析の活用例

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ここまでの内容を鑑みると、「アドホック分析」の言葉に馴染みがなくても、日常の業務のなかで近しいデータ分析をしていることに気付くかもしれません。

つまり、アドホック分析自体は、目新しいものではありません。あくまでも「非定型レポートの作成によって、突発的に発生した課題を解決する手段」です。

アドホック分析は、個別の課題の原因の究明、および改善が急がれるケースなどに用いられます。たとえば売上が急増した理由や、解約の急増、業務効率の悪化などが代表的なユースケースです。

販売実績の分析

特定の商品の売上が、あるタイミングを契機に急増、あるいは急落した場合の原因究明に、アドホック分析は有効です。顧客セグメントやキャンペーンの実施状況、地理的要因などを精査し、売上の変動要因を把握できれば、再現性の高い施策へとフィードバックすることも可能です。

仮に季節要因のような一時的なものであったとしても、変動に関連する条件をトレースすることで、局所的ながらも効果的な施策創出に発展します。

たとえば「12~1月だけ、前年対比で顧客が200%増加した」場合です。その前後の月も含めて前年と今年の顧客データや販売データなどを確認すれば、変動要因は世の中の需要の変化にあるのか、あるいは自社による何かしらの取り組みによる効果なのかを検証できます。この場合、必ずしも通年のレポートを作成することはありません。

解約理由の分析

アドホック分析は、サブスクリプションサービスの解約原因を探る場面でも用いられます。

たとえば、ある期間にユーザーの解約数が増えた場合、それは一過性のものなのか、あるいは持続的な課題が疑われるのか、判断しなければいけません。

また、ユーザー数が増えて解約数も増えたのか、それとも解約数だけが増えたのかによっても状況はまったく異なります。後者の場合は、問題は解約「率」にあるため、解約の「数」ばかりに目を向けていても、本質的な原因究明にはつながらないためです。

この場合のアドホック分析では、自社のデータのみを対象とするのではなく、競合他社の動向や市場の変化にも着目します。他社の価格調整によって顧客が流れている可能性など、目の前の問題との関連性が疑われる項目をリストアップし、原因究明と対策に反映します。

生産効率・業務効率の分析

原材料価格や人件費、機械の性能など、複数の要因から生産コストが変動している場合も、アドホック分析が役立ちます。サプライチェーンのどこにコスト増加の要因があるのか、ボトルネックとなる箇所はどこにあるのかを特定し、生産プロセスの最適化を図れれば、最低限の分析工数で対応が可能になります。

業務効率の改善も同様です。システムや機械の稼働による従業員のパフォーマンスへの影響など、個別の視点からのアドホック分析は、業務改善にも応用できます。

アドホック分析を効率化するBIツール

アドホック分析のような非定型レポートの作成は、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールなどの活用がなければ、分析作業が属人化しがちです。また、分析に多くの時間が割かれてしまい、肝心のアクションプランの策定へのリソースが欠乏することにもなりかねないため、ツールの導入を検討すべきでしょう。

BIツールとは、企業が蓄積するさまざまなデータの集約・分析を経て、その結果をビジュアル化し、迅速な経営判断や業務改善に貢献するツールです。データの可視化に優れているため、データアナリティクスの知識がベースになくとも、迅速かつ高精度な意志決定を下せるようになります。

BIツールを活用すれば、必要なデータを「誰でも」「素早く」「見やすく」取り出せます。データ分析に割かれるリソースも大幅に削減されることから、BIツールはアドホック分析に求められるスピード感をさらに高めてくれる存在です。

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まとめ

市場の状況が目まぐるしく変化する現代では、定期分析と合わせ、アドホック分析の重要性が高まっています。突発的な課題に迅速かつ柔軟に対応できるようになれば、競合に対する優位性の確立にもつながります。

さらにアドホック分析のスピード感を高めるためには、BIツールの導入も検討されます。効果検証の精度も高まり、データ分析の実効性も大きく向上するでしょう。

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