「物流倉庫ロボティクス・オペレーション展2024」
レポート

物流倉庫のロボティクス、自動化・無人化オペレーションが体感できる物流倉庫ロボティクス・オペレーション展2024が2024年3月、東京・品川で開催されました。物流ロボティクス企業、WMSベンダー、物流3PL企業など計30社の最新システムやロボット技術が実機で体感できる展示会の概要を東芝テックの出展を中心にレポートします。

物流倉庫ロボティクス・オペレーション展2024レポートのイメージ画像

東芝テックブース展示紹介

物流の2024年問題、そして生産年齢人口の急速な減少に伴い、ドライバー・働き手不足の恒常化が見込まれる中、物流の自動化・無人化は避けて通れない課題です。今回の出展を通して東芝テックが示したのは、RFIDトンネル式ゲートの新たな可能性でした。

大量のRFタグを瞬時に読み取るその特長は、2017年の発表当初大きな注目を集めましたが、東芝テック独自技術による読み取り速度・精度は今も進化を続けています。会場に実機が展示された自動搬送型の最新機種TG-1800の場合、シャッター機構の見直しによる縦方向のコンパクト化も注目ポイントです。

自動搬送型トンネル式ゲート TG-1800のイメージ画像
自動搬送型トンネル式ゲート TG-1800

作業者がハンガーラックごと通過できることが特長のウォークスルー型は、今回、ガラス素材の電波遮蔽板を採用したタイプを参考出展。より明るく、清潔感がある職場環境を実現したいという物流企業のニーズへの対応に注目されているのが、特殊な合成樹脂の中間膜を挟み込むことで電波を遮蔽・吸収する特殊な合わせガラスです。電波を吸収することで、機構の簡素化が図れることもその特長です。

ハンガーラックごと通過できることが特長のウォークスルーゲートのイメージ画像
ガラスウォークスルーゲート

また、AGV、AMRとの親和性の高さもRFIDトンネル式ゲートの強み。自動搬送型の場合、コンベアとの連携により読み取りを完全自動化。ウォークスルー型はAGV、AMRが通過するだけで読み取りが完了し、荷姿に応じたカスタマイズも可能です。

会場全体を見渡すと、最も目立ったのはAMRの展示でした。マテハンメーカーの椿本チエインとKDDIの合弁でこの春設立された、株式会社Nexa Ware(ネクサウェア)の重量計付きAMRもその一つ。ある調査では、ピッキング業務において移動に要する時間はピッキング時間とほぼ同等でした。

AMRが自走し、作業員がピッキングだけを行うアイデアはこうした現実に基づきますが、さらに同社はAMRに重量計も搭載。同一商品の大量受注時に、トレイに商品を置くだけで数量のカウントまで行える点が大きな特長で、すでに化粧品メーカー倉庫などで実証実験が開始されています。

多様なAMR実機やロボティクスソリューションが展示された同展は、物流倉庫の明日を考える上でも貴重な場になりました。

Nexa Wareのイメージ画像
Nexa Ware

【セミナー】
可能性は無限大! 物流現場での目視確認をAI画像認識で省力化

物流倉庫ロボティクス・オペレーション展2024の画像

RFIDや二次元コード・バーコードに並ぶもう一つの自動認識技術がAI画像認識です。物流倉庫ロボティクス・オペレーション展2024で行われた東芝テック リテール・ソリューション事業本部 ソリューション企画開発センターSCMソリューション商品部*の片岡好広によるセミナーをダイジェストします。

*2024年3月現在

東芝テック リテール・ソリューション事業本部 ソリューション企画開発センターSCMソリューション商品部の片岡好広氏
東芝テック リテール・ソリューション事業本部
ソリューション企画開発センターSCMソリューション商品部 片岡好広

物流現場には、段ボールの印字を目視確認しシステムに入力する煩雑な作業が存在します。食品物流の賞味期限はその一例で、メーカー各社が独自形式で表示する賞味期限の読み取りはミスも少なくないのが実情といいます。また化学・原材料物流の有効期限管理は原材料袋の印字を目視確認することで行いますが、その際のミスは製品の全量廃棄にもつながりかねないため、問題は深刻です。

その解決に大きな役割を果たすことが期待されるのが、東芝テックのAI画像認識技術です。RFIDや二次元コード・バーコードと異なる、自動認識技術としてのAI画像認識の特長は、カメラで撮像した現物画像を通し多様な情報が柔軟に読み取れる点です。

自動車部品物流では、通い箱ラベルに記載された複数のキーワードの目視による読み取りが負荷増大やミスにつながっています。また手術時に利用される数百点の医療器具の目視による術前・術後の2度の検査には3時間以上掛かることが一般的です。画像から自由に情報を読みとるAI画像認識であれば、こうした課題を容易に解決することが可能です。

さらに物流の2024年問題の観点では、物流センターのトラック駐車バースの空き状況確認、トラックのナンバープレート確認による駐車指示効率化などの効果が期待できます。

AI画像認識の可能性は無限です。

私たちは今後、多様なパートナーとの共創に取り組んでいきたいと考えています。

【パネルディスカッション】
EC物流の困りごとを解決する 物流テック×ロボティクスの新潮流

物流ジャーナリスト 菊田 一郎氏のイメージ
エルテックラボ代表
物流ジャーナリスト 菊田 一郎氏
「物流の持続可能性」を主要テーマに行われた物流ジャーナリストの菊田 一郎氏と3PL大手のSBSホールディングス、都市型立体ロボット倉庫のCuebus、東芝テックの3社のパネルディスカッションのイメージ
パネルディスカッションの様子

ドライバー・作業者の不足がいわれる中、拡大を続けるEC市場への対応は物流の大きな課題の一つです。「物流の持続可能性」を主要テーマに行われた物流ジャーナリストの菊田 一郎氏と3PL大手のSBSホールディングス、都市型立体ロボット倉庫のCuebus、東芝テックの3社のパネルディスカッションをレポートします。

セッション冒頭で菊田氏が人手不足の解決策として掲げたのは、ホワイト物流の実現でした。

「生産年齢人口の急速な減少が見込まれる中、ロボティクスによる自動化や共同物流による省力化は避けて通ることができない課題です。労働環境改善による従業員エンゲージメント向上は、企業の生き残りにおいても今後より重要な意味を持つことになります」

こうした問題提起を受け、SBSホールディングス LT企画部長の曲渕 章浩氏は現状をこう報告します。

BSホールディングス LT企画部長の曲渕 章浩氏
SBSホールディングス株式会社 LT企画部長 曲渕 章浩氏

「私の知る限り、物流専業企業でロボティクスを使いこなせている例は皆無に近いです。よりシビアな費用対効果など専業企業ならではの事情はありますが、当然導入すべきであると我々は考えています」

現時点のロボットシステムはそれぞれ一長一短があり、導入にあたっては複数のシステムの組み合わせる視点が重要になるとも指摘しました。同社Eコマース事業推進部長の大森 茂氏は共同物流の取り組みをこう説明します。

同社Eコマース事業推進部長の大森 茂氏
SBSホールディングス株式会社 Eコマース事業推進部長 大森 茂氏

「EC物流の特色は在庫の多さです。保管代の観点から倉庫は郊外に目が向きがちですが、その場合人手確保が一層難しさを増すことになります。我々は都市部に近い千葉県野田市の4万坪の物流センターの1万坪をEC専用として利用し、最終的に60社ほどのEC企業がそれぞれの強みを生かしつつ共同物流を推進することを計画しています」

BtoBと違い、配送ミスが許されないこともEC物流の難しさの一つ。Cuebus 代表取締役社長兼CEOの大久保 勝広氏はロボティクスの強みをこう説明します。

Cuebus 代表取締役社長兼CEOの大久保 勝広氏
Cuebus株式会社 代表取締役社長兼CEO 大久保 勝広氏

「再配達コストで利益が吹っ飛ぶECではミスは許されません。こうした中、私たちが強く意識しているのが『初めての人でも簡単に操作できる』という観点です。またホワイト物流では冷凍倉庫の無人化も重要な課題です。マイナス20度の環境ではバッテリー性能も低下によりロボットは機能しませんが、当社のリニアモーターによるソリューションは、そうした環境でも運用可能です」

最後に東芝テックの古内 博は、ホワイト物流に向けた取り組みをこう説明しました。

「生産性向上という観点でまず注目いただきたいのはRFIDトンネル式ゲートとAGV、AMRの親和性の高さです。また従業員を守るという観点では、検品台と映像検索を組み合わせ、問合せの際にただちに作業動画が確認できるソリューションの普及を図っているところです」

東芝テック リテール・ソリューション事業本部 ソリューション企画開発センターSCMソリューション商品部の片岡好広氏
東芝テック リテール・ソリューション事業本部
ソリューション企画開発センターSCMソリューション商品部
RFIDソリューション担当シニアエキスパート 古内 博

EC市場が成長を続ける中、自動化・省人化ソリューションが果す役割は今後ますます大きくなることは間違いなさそうです。

※当記事は2024年4月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

この記事で紹介した商品 / 関連サイト

RFIDトンネル式ゲートシリーズへのリンクバナー画像

RFIDに関するすべての情報は「RFIDトータルソリューションページ」からご覧いただけます

RFIDトータルソリューションページへ