サーキュラーエコノミー
(循環型経済)とは
どのような考え方?
近年、資源の枯渇やゴミの増加、気候変動をはじめとする環境問題の深刻化が、世界的な課題となっています。グローバル規模で経済活動の見直しが求められている中、注目を集めているのが、製品を長く使い、活用されていない資源から価値を生み出す「サーキュラーエコノミー」です。
今回の「誰でもわかるSDGs」では、環境への対応と経済的なメリットを両立するといわれるこの概念についてご紹介しましょう。
サーキュラーエコノミーとは、循環型の経済システムのこと。具体的には、テクノロジーを通じて資源の循環を促し新たな価値を生むことを目指す経済活動や、その体系のことを指します。
これまでは、一方通行の直線で表される「リニアエコノミー」と呼ばれる経済システムが浸透していました。これは「Take(原料を採掘して)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」を基本とした体系で、長年にわたって自然環境と天然資源に大きな負担をもたらしてきました。
日本では「3R(Reduce、Reuse、Recycle)」を基本とした「リサイクリングエコノミー」も浸透していますが、この経済システムも廃棄物の発生を前提としており、環境に優しいとは決して言えません。
これに対して、サーキュラーエコノミーは、そもそもの原料調達や製品デザイン(設計)の段階から、資源を再利用することを前提としています。原料を継続的にリサイクル、または別のものに活用することで、資源を節約したりゴミ問題を改善できたりするだけでなく、温室効果ガス排出量削減も期待できるのです。
イギリスに拠点を置くエレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーを推進する団体として知られています。この財団では、「サーキュラーエコノミーの3原則」として以下の内容を挙げています。
サーキュラーエコノミーは、環境に優しいだけでなく、持続可能な経済成長や新たな雇用の創出も見据えた経済システムと考えられています。
欧州連合(EU)では、2015年12月に、リサイクル率向上によって資源の枯渇から産業界を保護し、新しい事業領域と雇用の創出を目標とする「サーキュラー・エコノミー・パッケージ」を採択。これに基づく法的規制により、政策に適合しない企業は、将来的に排除される可能性もあるといわれています。
日本におけるサーキュラーエコノミーの定義は、経済産業省および環境省が2020年5月に発表した「循環経済ビジョン2020」にまとめられています。また、経済や環境の分野で取り組みが紹介されたり、再生可能な素材を導入する企業が注目されたりするなど、日本でもサーキュラーエコノミーの知名度は少しずつ上がっています。
環境と経済の両立は、企業がこれからの事業を考える上で外せない課題。ここからは、サーキュラーエコノミーの推進に動き出している、海外および国内企業の事例を見ていきましょう。
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工場で出たスクラップを
原料に取り入れて開発アメリカを本拠地とする大手スポーツメーカーは、ペットボトルやTシャツ、糸くずといった再生素材を、85%以上使用したスニーカーを開発しています。製品を製造する過程から再生・リサイクルの考えを展開し、プラスチックボトルを再利用した再生ポリエステルや再生レザーも積極的に活用しています。
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食品廃棄物のリサイクル率を
100%に小売のほか、金融ITなどにも事業領域を広げる国内の大手流通企業は、2019年5月に「GREEN CHALLENGE 2050」を発表。プラスチック製レジ袋の使用量ゼロや、食品廃棄物のリサイクル率100%など具体的な目標を掲げ、2050年までの実現を目指して取り組みを進めています。
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食品廃棄物のリサイクル率を
100%に小売のほか、金融ITなどにも事業領域を広げる国内の大手流通企業は、2019年5月に「GREEN CHALLENGE 2050」を発表。プラスチック製レジ袋の使用量ゼロや、食品廃棄物のリサイクル率100%など具体的な目標を掲げ、2050年までの実現を目指して取り組みを進めています。
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消費者参加型の
マテリアルリサイクルを推進国内・海外のアパレル小売りでは、グローバルな共通目標である環境イニシアチブや共通ツールを使って、環境負荷を可視化する取り組みが始まっています。一部店舗に衣料品回収ボックスを置き、自社以外のブランドの洋服もすべて回収する、消費者参加型のマテリアルリサイクルに取り組んでいる企業も増えてきました。回収された洋服は、お下がりシェアサービスを通じて次に着る人の手に渡ったり、再生技術を持つ企業で新たな原料に生まれ変わったりします。
東芝テックは東芝グループの一員として、2050年までの実現を目標に、気候変動をはじめとする環境問題の解決に取り組んでいます。
具体的には「気候変動への対応」「循環経済への対応」「生態系への配慮」「環境基盤活動」の4つをテーマに、省エネ設備や再生可能エネルギーの導入、省資源化量やプラスチック資源循環量の拡大、化学物質や水受入量の管理、情報開示などのコミュニケーションや厳格なコンプライアンス体制の構築などを推進。製品・サービスのライフサイクル全般における環境負荷低減を進め、持続可能な社会の実現を目指しています。
サーキュラーエコノミーを実現するには、メーカー、小売、回収・リサイクルなど幅広い業種の連携が必要になるほか、消費者の協力も必要です。サーキュラーエコノミーの推進を通じて、さまざまな業種・分野との連携が生まれ、オープンイノベーションにつながることも期待しています。
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