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働き方改革を実現するには?
いまさら聞けない基礎知識と取り組み

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2019年4月より働き方改革関連法案の一部が施行され、現在「働き方改革」は企業にとって重要な経営課題のひとつとして認知されています。新型コロナウイルスの影響もあり、持続的な労働環境のあり方を模索している企業も多いでしょう。

そもそも、働き方改革はなぜ推進されてきたのでしょうか? また、現在までにどのような変化や成果があったのでしょうか? 本記事では、働き方改革が推進されてきた背景や、課題解決のための取り組みについて、さまざまな法案やそれに伴う制度を軸にご紹介します。

働き方改革の定義と推進される背景

厚生労働省が2019年に発表した定義によれば、働き方改革とは「働く人々が個々の事情に応じ、多様で柔軟な働き方を自分で選択できる社会を実現するための改革」とされています。働き方改革が推進される背景としては、大きく3つの理由が挙げられます。

1. 労働人口の減少

働き方改革が推進され始めた背景のひとつに、労働人口の減少が挙げられます。労働人口とは、生産年齢人口といわれる15~64歳のうち、労働の意思と能力を持っている人口のこと。生産年齢人口にあたる人々が、育児や介護などの事情によって、離職したり職場復帰が困難になったりしているケースも見られます。

また、日本では少子高齢化も問題視されています。1984年には出生率(女性が産む子どもの数の指標)が1.81でしたが、2020年には1.34まで減少しました。このままのペースでいくと、2020年代は毎年約60万人、2040年代には毎年約100万人のスピードで総人口が減少していくと予想されています。このように、労働人口の減少や少子高齢化から、日本は深刻な人手不足に陥っているのです。

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2. 労働生産性の低下

2つ目の背景は、労働生産性の低下。労働生産性とは、労働者1人あたり、または1時間あたりにどのくらい成果を生み出したか測る指標です。労働生産性が高ければ高いほど、企業の収益性が向上し、国の経済成長にもつながります。

日本の労働生産性は、主要先進国の中でも低いといわれています。実際のところ、OECD(経済協力開発機構)データに基づく2020年の日本の労働生産性は1時間あたり49.5ドルで、OECD加盟38ヵ国中23位でした。

「日本人は真面目で勤勉」といわれますが、なぜ労働生産性が低いのでしょうか? この原因としては、労働時間の長さが考えられます。労働生産性が高い国の多くは日本よりも1人あたりの総労働時間が少なく、その差は最大で年間約300時間もあるそうです。労働生産性を高めるためには、労働時間や環境の改善、有給休暇取得の義務化など、働きやすい仕組みづくりが必要です。

3. 長時間労働や過労死の問題

3つ目の背景として、長時間労働や過労死など、労働上のさまざまな問題が挙げられます。

日本政府は、2013年5月に国連から「多くの労働者が非常に長時間の労働に従事し、過労死が発生し続けている」と指摘され、是正を求められました。このような状況を生み出していた原因のひとつは、残業時間に上限がなかったこと。1947年に労働基準法が制定されてから近年に至るまで、長時間の残業(月45時間・年360時間以上)に対しては行政指導が入るのみで、罰則などはありませんでした。

しかし、長時間労働が続くと、身体的・精神的に疲労が溜まり、最悪の場合、うつ病や過労死につながるおそれもあります。長時間労働が原因とされる疾患や過労死は大手企業でも発生しており、訴訟にまで発展したケースがあることは、皆さんもご存知でしょう。

厚生労働省は、時間外労働や休日労働が月45時間を超えると健康障害のリスクが少しずつ上昇すると指摘。時間外労働や休日労働を含めた残業が月100時間超、あるいは2〜6ヵ月間の平均が80時間超になると、脳疾患や心臓疾患のリスクがかなり上昇すると報告しており、適正な労働時間を考える目安となっています。

働き方改革の3つの柱

2019年4月に「働き方改革関連法」が施行されてから現在までに、どのような取り組みが検討・実施されてきたのでしょうか? 3つの柱に沿って見ていきましょう。

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1. 長時間労働の解消

2019年に労働基準法が改正され、残業時間について罰則付きの上限が設けられました。例外はあるものの、原則として、1日あたり約2時間までしか残業が認められなくなったのです。この改正労働基準法では、年間10日以上の有給休暇を付与する労働者に対して、年5日は有給休暇を取得させなければならないなど、有給休暇の取得についても義務づけられました。

このような法改正を受けて、さまざまな企業が休日出勤の禁止を規定したり、残業の事前申請制を導入したりするなど、労働時間の是正やワークライフバランスの見直しに向けて取り組みをスタートしました。

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2. 非正規と正社員の格差是正

非正規雇用とは、パートやアルバイト、契約社員、派遣社員など、正規雇用以外の有期雇用を指す言葉です。非正規雇用が問題視されるのはなぜでしょうか? それは、賃金や待遇の面で、正規雇用労働者との間に格差が生じているからです。

これを是正するため、2020年に「改正労働者派遣法」が施行され、正規雇用者と非正規雇用者の“不合理な待遇格差”をなくすための「同一労働同一賃金」制度がスタート。正規雇用者と同じ労働を行っている非正規雇用者には、正規雇用労働者と同じ賃金や年次有給休暇を付与する義務が生じました。

このような法改正の成果は、データに表れています。厚生労働省が2021年に発表した「非正規雇用の現状と課題」によると、2019年に約2,165万人いた非正規雇用者が、2020年には約2,090万人に減少。労働者全体に占める非正規雇用者の割合も、2019年の38.3%から、2020年には37.2%に減少し、2010年以降初めてマイナスに転じたことがわかります。

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3. 多様で柔軟な働き方の実現

2019年に施行された「働き方改革関連法」には

・フレックスタイム制の清算期間変更(1ヵ月から3ヵ月に延長)

・勤務間インターバル制度

・高度プロフェッショナル制度

など、多様で柔軟な働き方の実現に向けた制度も盛り込まれました。また、2021年1月には「改正育児・介護休業法」が施行され、育児や介護を行う労働者は、子の看護休暇や介護休暇を時間単位で取得できるようになりました。

各企業においても、テレワークや短時間勤務など、多様で柔軟な働き方を実現するためのさまざまな取り組みが実施されています。時間や場所にとらわれない労働環境づくりは、今後ますます求められていくでしょう。

東芝グループの取り組み

「ホワイト物流」推進運動とは、トラック輸送の生産性向上・物流の効率化、女性や高齢運転者が働きやすい労働環境の実現に取り組む運動のこと。深刻化が続くトラック運転者不足に対応するもので、生活や産業活動に必要な物流の安定的な確保と、経済の成長に寄与することを目的にしています。

東芝グループではこれまでも、分割して複数台の車両で運んでいた大型製品について、輸送効率を考慮し、車両1台で運搬できるよう製品設計を見直したり、梱包・荷役を簡素化できる専用ラックを開発したりするなど、独自の物流改善に取り組んできました。

今後は「輸送条件を考慮した製品設計」「出荷情報の事前提供」「出荷に合わせた生産・荷造り」「船舶や鉄道へのモーダルシフト」といった項目も盛り込み、物流の改善の取り組みを加速していきます。また、パートナー企業にもホワイト物流推進運動の主旨をご理解いただき、持続可能で安定的な物流の確保のほか、物流現場の働き方改革にもより積極的に取り組んでいきます。

次回誰でもわかるSDGsは、プラスチック資源循環促進法に対応したフルオートラミネーター Revo-Anyを紹介していきます。

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