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昭プラ株式会社

インタビュー

昭プラ株式会社様

東芝テックのパートナー企業である昭プラ株式会社。同社が扱う国産バイオマスプラスチック「ライスレジン」の特徴や、SDGsへの考え方について、関西支店・支店長の三宅大輝さんにお聞きしました。

説得力ある「ストーリー」で
環境への取り組みを推進する
――昭プラ株式会社インタビュー

2022年4月から、プラスチックごみを削減し、回収やリサイクルを通じて資源循環を促す「プラスチック資源循環促進法」が施行されます。このような国の動きや、海洋プラスチック問題などをめぐる環境意識の高まりを受け、現在注目を集めているのが、植物など再生可能な有機資源を原料に作られた「バイオマスプラスチック」です。

そこで今回は、東芝テックのパートナー企業である昭プラ株式会社を訪問。同社では、環境対応の気運が高まる以前から、非食用米を原料に使ったバイオマスプラスチック「ライスレジン」を取り扱ってきました。ライスレジンの特徴や、同社のSDGへの考え方について、関西支店・支店長の三宅大輝さんにお聞きします。

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―御社の事業概要について教えてください。

昭プラのルーツは複数の会社が合併してできた会社で、プラスチック原料およびフィルムシートの卸売や、環境問題対応の商品開発・コンサルティング業務、物流資材の設計販売およびリサイクル企画設計など、事業領域は多岐にわたります。縁の下の力持ち的な存在なので、社名が表に出る機会はあまりありませんが、例えばメーカー様から委託を受けて、スーパーやコンビニで販売される冷凍食品の外装やトレーなど食品パッケージを製造していたりもします。また、ガソリンスタンドなどに設置されている埋設配管を、サビや歪みが出やすい鉄から環境にやさしく長保ちするバリアパイプに交換するような環境対応事業も行っていますね。

―私たちの生活に身近な事業を、幅広く展開されているんですね。今回は、バイオマスプラスチック「ライスレジン」の事業について詳しく伺いたいのですが、ライスレジンとはそもそもどのようなものなのでしょうか?

ライスレジンは、食用に適さない古米や農家などから出る破砕米など、廃棄してしまうお米を有効活用できる新しいプラスチックです。日本国内だけで、お米の廃棄量は年間7万トン以上といわれています。これには、国が非常事態に備えて管理している備蓄米由来も含まれます。この備蓄米は、5年持越になった段階で鮮度のいいものに入れ替えられますが、その際には、開発途上国などに援助物資として送ったり、工業用アルコールとして加工したり、家畜のエサにしたりするなど、「捨てる」以外のあらゆる手段がとられるんですね。それでも処分しきれないお米を活用し、“もったいない“をなくそうというところから、ライスレジンの開発がスタートしました。

―御社とライスレジンの関係について教えてください。

環境意識の高まりによって、近年、バイオマスプラスチックが注目を集めていますが、当社ではライスレジンの持つ社会貢献度や将来性に魅力を感じ、10年以上前からライスレジンフィルムの開発に取り組んできました。2019年に、当社が所属するスカイマテリアルホールディングスと、ライスレジンを製造する株式会社バイオマスレジンホールディングスが共同出資して、バイオマスレジンフィルム社を創設。フィルムだけでなく、成型品などライスレジンの可能性を広げるために、パートナーとして活動を行っています。

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―植物由来のものから食品由来のものまで、世界中でさまざまなバイオマスプラスチックが開発されていますが、ライスレジンの特長は何でしょうか?

特長は2つあり、1つは「国産バイオマス」であることです。コロナ禍で海外からの原料の安定供給が難しくなってきているいま、国産バイオマスは原料の安定供給につながります。増えていく需要に追いつけるよう、起点となった南魚沼のほか、福島や熊本、大阪など、生産拠点を徐々に増やしているところです。

―2つ目の特長は?

「フードロスの削減」に貢献でき、そこに説得力のある「ストーリー」が付随することですね。これは、身近な例を挙げて説明するとわかりやすいでしょう。現在、国内の大手ファストフード店等で使われているレジ袋は、植物由来のバイオマス原料がほとんどです。ところがなぜ環境にいいかと問われると、なかなか簡潔な説明が難しい。原料は海外から輸入しているため、海上輸送費がかかりますし、二酸化炭素の排出にもつながってしまいます。それに比べて、ライスレジンは国内で廃棄される予定だったお米を有効活用するため、「なぜ環境にやさしいか」がイメージしやすいんです。「お米を捨てるのはもったいないから、プラスチックと混ぜて新しい素材を作る」という、幼い子どもたちでも理解できるシンプルなストーリーで語れる点は、ライスレジンの一番の強みともいえます。

―実際、ライスレジンを使用することによって、どのくらい環境負荷を低減できるのでしょうか?

例えば、ごみ袋を年間100万トン使用しているとしますよね。これを、ライスレジンを使用したバイオマス率25%の袋に置き換えると、単純計算で枯渇資源である石油を約25万トン削減することにつながります。また、製品焼却時に発生する二酸化炭素を植物である米が吸収するため、カーボンニュートラルも実現できますね。

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「京のあられ処橘屋」で使用されているライスレジンのレジ袋

―ライスレジンを使用した製品にはどのようなものがありますか?

さまざまな企業と一緒に、レジ袋や、箸やスプーンなど日常で使われる製品、赤ちゃんの積み木、買い物カゴ、収納ラックなど、あらゆる製品の開発を行っています。お米を20%使用したクリアファイルなども作っていて、こちらも引き合いは多いですね。いずれはお米の割合を、51%以上まで引き上げることを目標にしています。

―通常のクリアファイルより手触りがやわらかく、色も少し黄色みがかっていますね。

この手触りと色味は、ライスレジンならではのものです。レジ袋も同じく、シャリシャリ感のないやわらかい手触りですね。着色することもできますが、「お米が配合されている」ことがひと目でわかる、この色味を好まれるお客様も多いです。

―現在、最も力を入れている製品は何でしょうか?

この先、脱プラスチックを推進するためには、使い捨てされるプラスチックをどれだけ環境対応のものに置き換えていけるかがポイントになってきます。そういう意味でも、いまは新幹線などで販売される駅弁の容器を目標に動いていますね。なぜ駅弁かといえば、電子レンジで温め直す必要がないため、実績に乏しいライスレジンでも置き換え可能だからです。ライスレジンを普及させていく上でも、このように毎日使い捨てされるものに採用されることが、ひとつのゴールだと思っています。

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―御社のSDGsへの考え方について教えてください。

近年、「SDGsに関して何か取り組まなければいけないけれど、どうすればいいか」といったご相談をお客様からよく受けます。そのひとつの選択肢として、ライスレジンを提案できる点は大きいと思っています。例えば、スーパーやアパレルなどの小売店なら、買い物カゴをライスレジン製のものに替えることで、脱プラスチックへの取り組みを表明できます。最近では、社員食堂で使われているリユースのプラスチックスプーンを、ライスレジン製のものに替える企業も増えてきましたね。社内で環境意識を高めていくことはもちろん、さまざまなお客様にライスレジンを活用していただくことで、SDGsの取り組みの可視化につながれば……と考えています。

―ありがとうございます。最後に、ライスレジン事業の今後の展望についてお聞かせください。

先ほども少し触れましたが、ライスレジンの需要拡大に合わせて、昨年から生産拠点を全国に広げ始めました。私自身も、大阪を拠点とする「バイオマスレジン関西」の立ち上げに携わっていて、2025年までの整備を目指しています。大阪で生産されたライスレジンを、同年に開催される大阪万博で提供し、将来的には技術の海外展開を図っていくサポートをしていきたいですね。

ライスレジンは、農家の雇用創出など、環境以外の面でも社会貢献できる可能性のある原料です。ただ「環境対応素材はコストがかかる」という意識から、なかなか切り替えに踏み出せない企業が多いのも実情。量が動けばコストが下がり、コストが下がればより使いやすく改良していけます。三宅さんがおっしゃる通り、駅弁のお弁当容器をはじめ、日常遣いされるものに使用されていくことが、普及のためのひとつのゴールといえるでしょう。そのゴールに向けて、東芝テックも共にトライしていけたらと思っています。(東芝テック・岡本)

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