総務部は出社しないといけない?
テレワーク移行を阻む原因とその対処法を探る

2021年02月02日オフィス テレワーク

総務部は出社しないといけない?テレワーク移行を阻む原因とその対処法を探る

2020年4月に緊急事態宣言が出されて以降、各企業においてテレワークへの移行が急速に進みました。実際に、緊急事態宣言の発令期間(4月7日~5月25日)後の5月29日~6月5日に東京商工会議所が会員企業12,555社を対象として実施した緊急アンケートの結果を見てみましょう。

緊急事態宣言前後のテレワーク実施割合の図
緊急事態宣言前後のテレワーク実施割合の図

参照元:東京商工会議所ホームページ「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」  調査結果を取りまとめました

宣言前の3月には「テレワークを実施している」と回答した企業は全体の26.0%でしたが、緊急アンケート時には67.3%と、3か月足らずの短期間に約2.5倍以上にも増えたことが分かります。解除後、一時的にテレワークの必要性が低下したと同時に実施率も低下したことがありましたが、それから半年以上が経過した現在、少なくとも「テレワークを実施できる体制が整っている」企業はさらに増加していると考えられます。

しかし、テレワークへの移行割合は同一企業の中でも部署によりかなり偏りがあるようです。特に、経理部、人事部、総務部といったいわゆる「管理部門」においては特に進んでいないとされています。実際に、東京都が3月に行った「多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)」を見てみると、テレワークを「したことがある」と回答した割合は全体では18.9%でしたが、経理部、人事部、総務部を含む「事務職」では15.0%と、「営業職」の28.1%と比較して半分弱に留まっています。

参照元:令和元年度(2019年度)多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)- PDF  

テレワークに限らず、会社全体として働き方改革に取り組むうえで、今後は管理部門の改革が必要となりそうです。そこで今回は特に総務部を取り上げ、なぜテレワークへの移行が遅れているのか、その原因と対策について探ります。

総務部の業務は、「つなぐ」ことであるとよく言われます。社内の部署と部署とをつなぐ、経営者と従業員とをつなぐ、そして自社と協力会社、公的機関などをつなぐ。そしてそれにより業務を円滑に進められるような環境を整える業務と言えるでしょう。ここに総務部のテレワーク移行が難しい側面があるようです。

では具体的に、総務部のテレワークが難しい理由を3点あげてみます。

● 郵便物、FAXなどの対応が必要

出社しなければならないもっとも大きな理由は、日々会社に届く郵便物、FAXなどへの対応でしょう。総務部が会社の代表としてそれらを受け取る役割を担うケースは多いことと思います。到着する正確な日時が分からない他社からの書留郵便などを確実に受け取るためには、部署内で毎日最低でも一人は出社する必要があります。

● 契約書や請求書などに押印が必要

「脱ハンコ」が加速しているとはいえ、契約書、請求書など、発行時に角印や社判の押印が必要な書類はまだまだ存在します。角印や社判を自宅に持ち帰るわけにはいきませんから、それらを管理する役割を担う総務部のスタッフが常に会社にいて押印に対応しなければならない、というケースも多いでしょう。

● 「その人にしかできない」業務が多い

総務部の業務は、社会保険や雇用保険の手続き、入退社手続き、勤怠管理からなど多岐に渡ります。「その人にしかできない」業務が生まれやすい環境となっています。そのため、交代勤務が困難になりがちです。

この他にも代表電話の応対、備品の補充や施錠といったオフィス機能の維持・管理など、出社しなければ難しい業務は多数存在します。こうした原因から、総務部では在宅勤務、交代勤務がともに難しい状況にあります。

実際に、日本で唯一の総務専門誌「月刊総務」を発行する株式会社 月刊総務が全国の総務担当者320名を対象として6月16日~6月18日に実施した調査によると、緊急事態宣言期間中に「完全にリモートワークだった」と回答した人は全体のわずか1.6%。反対に「ほとんど毎日出社していた」と回答した人が25.3%と、テレワーク(リモートワーク)への移行が困難であったことが数字の上からも裏付けられています。

緊急事態宣言中の総務のリモートワーク実施状況の図
緊急事態宣言中の総務のリモートワーク実施状況の図

参照元:PRTimes「緊急事態宣言中に完全リモートワークができた総務は1.6%」  

そして、他ならぬ「コロナ禍そのもの」により業務量が増加したことで、さらにテレワーク移行が困難となったという側面もあります。

● コロナ対応業務への対応

コロナ禍により経営が悪化した企業向けに、雇用調整助成金、持続化給付金、家賃支援給付金などの支援策が発表されました。そのため、申請に必要な書類を揃えたり、申請に赴いたりといった業務が新たに生まれました。また、社員のテレワーク実施に伴い、就業規則の変更や新たな業務ルールの設定などの業務が必要だった企業もあるでしょう。

● 社員の勤怠、健康管理負担の増加

緊急事態宣言に伴い交代勤務を導入した企業では、どの社員が出社し、どの社員が欠席し、どの社員がリモートワークに就くのかなど、勤怠管理が通常時と比較して煩雑になりました。また、在宅勤務やサテライトオフィス勤務をする社員の勤務状況や健康状態を把握するために新たなツールや仕組みを導入し、負担が増したケースもありました。

● 出勤人数減少による業務のしわ寄せ

リモートワークの実施により出勤する社員の人数が減少すると、普段は社員全員で担当していた業務などの負担も増えることになります。シュレッダーの廃棄紙処理、コピー用紙の補充など、普段であれば気にならないような業務でも、積み重なればかなりの業務量に。忙しい中であればなおさら、時間的にも心理的にも負担となるでしょう。

さらに問題となるのは、いわゆる「一人総務」の問題です。中堅・中小企業も含めた企業全体の約三割が一人で総務業務を行っているとする統計もあります。総務担当者の負担はさらにますばかりです。

そこで必要となるのは解決策ですが、総務業務には相手のあるものも多く、自部署だけで改革を行うことは困難な場合が少なくありません。それでも、電子化により効率化が可能な業務もあるでしょう。既に社会保険・労働保険などの行政手続きがオンラインされていること、脱ハンコの動きが加速していることなどは追い風となるでしょう。

例えば、請求書、納品書あるいは領収書などの発行・受発送業務は、取引先の了解を得るという条件はあるものの、電子化により解消できます。契約業務に関しても、電子契約サービスが開始されています。その他、どこからでも見ることのできるオンライン業務マニュアルを作成するなどで担当個人への負担を減らすなど、できることはたくさんあります。

請求書、納品書あるいは領収書などの発行・受発送業務の図
請求書、納品書あるいは領収書などの発行・受発送業務の図

一気にすべての電子化を図るのではなく、まずはできるところから始め、その結果として在宅ワークや交代勤務の拡大につなげられれば、効率化は成功と言えるでしょう。

売り上げや利益など、直接会社の業績に結びつく部門に比べ、総務部を始めとする管理業務への投資は抑えられる傾向にあります。しかし、前述のとおり総務部の役割は業務を円滑に進められるような環境を整える重要な業務です。BCP(事業継続性)の観点からも、総務業務の効率化を検討してみてはいかがでしょうか。それは総務部門だけでなく、会社全体の業務効率化や働き方改革へとつながっていくことでしょう。

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