セール品は定価を 表示した方がよく売れる?
数ある商品やサービスの中から、私たちはなぜそれを選んでしまうのか?

2024年2月26日

流通お店づくりトピックス

■業種・業態:小売業  
■キーワード:アンカリング効果/希望小売価格/景品表示法

スーパーで1980円の値札が付いたお寿司を手に持っている女性のイラストイメージ

「アンカリング効果」でお得感を演出する

クルマ好きのA氏は以前から憧れていた1000万円のクルマが、とあるウェブサイトで700万円で売っているのを見つけました。思わず「安い!」と感じ、貯金をはたいて買ってしまおうかと思いましたが、よくよく考えてみれば、700万円はA氏の年収とほぼ同じ。

どうして彼はそれを「安い」と感じてしまったのでしょうか。

人は最初に受けた印象が錨(アンカー)のように心に引っかかり、強く印象に残ってしまう傾向があります。A氏の場合、「このクルマは1000万円する」という情報が錨=基準となり、700万円を安いと思ってしまったのです。

このように最初に受けた印象が後々の判断に影響を与えることを「アンカリング効果」と呼びます。

「アンカリング効果」は、商品の値付けによく利用されます。例えば、家電量販店などでは、自店の売価のほかに「希望小売価格」を表示していることがあります。

消費者はその価格をアンカー、つまり基準として考えるため、実際に提示された金額を安いと感じることが多いのです。

アンカリング効果は、新商品や限定商品のように、消費者に馴染みの薄い商品ほど高い効果を発揮します。そうした商品は、自分なりの価格の基準を持っていないため、「通常価格の半額」などと書かれた売価をより「お得」と感じてしまいます。

価格表示にアンカリング効果を使う場合、注意点もあります。例えば、「通常価格1万円が今だけ5000円」とうたう場合、この商品が普段は本当に1万円で売られていれば問題ありませんが、本来5000円の商品を「通常価格1万円」と表示して販売すれば、景品表示法違反となる恐れがあるからです。

※アンカリング(anchoring)=錨を下ろして、船をつなぎとめておくこと

※当記事は2023年1月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。