誰でも簡単にできる
お客様の心をつかむ接客術

2024年1月15日

流通お店づくりトピックス

■業種・業態:飲食店/物販店/衣料店  
■キーワード:一期一会/テクニック/振り返り

誰でも簡単にできる お客様の心をつかむ接客術のイメージ

コロナ禍を経て、ネット通販や宅配サービスの利用が増え、お客様が実店舗を訪れる機会や求められる応対に変化が起きています。店舗にわざわざ足を運んでもらうためには、「接客」の質があらためて重要になります。本特集では、現場スタッフの誰もがすぐに実践できて効果も大きい「お客様の心をつかむ接客術」を紹介します。

再来店のカギは接客にあり 「一期一会」を大切にする

お客様がお店に滞在中に「楽しい」「心地いい」と感じられれば、「また来たい」と思ってくださる可能性が高まります。そのためのカギとなるのが「接客」です。接客に正解はなく、一人ひとりのお客様のことを、その時々で、できるだけよく知ろうとすることが大切です。日々、「今日もお客様と向き合う」という意識を持ち、「一期一会」を楽しむつもりで接客に取り組みましょう。

店舗では、品出しや開店準備、レジ対応、電話応対など複数の「作業」をこなさなければなりません。業務が忙しい中でも、どのように接客を充実させるのか、一期一会を大切にするために一人ひとり何ができるのか。誰もがすぐに実践できる具体的な接客ノウハウをご紹介します。

簡単にできて効果が大きい今すぐできるテクニック

① まっすぐ前を向いて歩く
仕事の時はまっすぐ前を向いて歩きます。特にお客様がいる場所で下を向いて歩く、下を向いて立っているのはNGです。スタッフは常にお客様から見られています。一人が下を向いているだけでお客様はお店全体に対してネガティブな印象を持ちます。

下を向いて歩いていると、周囲から「疲れているのかな?」「仕事がつらいのかな?」などと思われがちです。また、本人のメンタルもネガティブになりやすく、良い影響がありません。

② お客様と目を合わせる
お客様の表情から「情報」を受け取り、お客様を知る手がかりを得るために、お客様と接する時はできるだけ正面から向き合って目を合わせます。

スーパーのレジのように多くのお客様にスピーディーに対応する場合でも、目を合わせることで、例えばお客様が不満そうな表情をした時、おつりの渡し方や声の出し方が悪かったのかなど、自分の行動を振り返り、改善につなげられます。

③ 一言でもコミュニケーションをとる
心を込めた接客応対は実店舗だからこそ可能です。飲食店でのタッチパネルによるオーダーの場合でも、実際に料理を運ぶスタッフは「お待たせしました」「ごゆっくりお召し上がりください」と心を込めて声掛けする、一言二言でもコミュニケーションをとるなど、少ない接客場面でもお客様の心をつかむ機会を逃さないことが大切です。

④ お客様の言葉をよく聞く
お客様の言葉には、喜んでもらうための接客のヒントがたくさん詰まっています。お客様の言葉を聞くことで、お客様の本当に求めていることを探ります。

飲食店で「(携帯電話をいじりながら)あ、ハンバーグで」と注文されるお客様がいたとします。「誰かと連絡を取り合っている最中かもしれない」「店員とコミュニケーションを取りたくない方かもしれない」と自分なりに想像して、メニューの説明を最小限にして邪魔をしないようにするなど、言葉を手がかりにお客様が喜びそうなことを実行します。

その対応が間違っていたとしても、考えて実行した経験が増えることで、お客様が本当に求めていることを見つけるスキルが向上します。

⑤ 「目で接客」する(周りに気を配る)
他の作業をしていて、お客様にサービスをすぐに提供できなかったり、話しかけられなかったりする場合は「目で接客」します。

飲食店で一人のお客様の対応にかかりきりになっていたとしても、チラッと別のお客様を見るだけで、「料理をお待たせし過ぎていないか」「飲み物が空になっていないか」などの確認ができます。他のスタッフに話しかけてもらって場をつなぎ、ドリンクメニューをお持ちするなどしてカバーします。スタッフ同士でも協力し、お客様から「お願いします」や「すみません」と声をかけられる前に気づくことができるようにしましょう。

図表1・お客様の心をつかむために今すぐできることを紹介している画像

「振り返り」の積み重ねで大きな差が生まれる

前述したテクニックのほかに、すぐにできて効果が大きい方法として、特におすすめしたいのが「振り返り」です。お客様との会話、お客様の仕草、お客様の表情を思い出し、「次はどうしたらもっと喜んでもらえるのか」を考えます。業務以外の時間に実践するのは大変ですから、一日の仕事が終わった後、掃除や片付けなどの単純作業や、帰り支度の際のちょっとした時間を利用します。具体的には、次の4つのステップで振り返ります。

ステップ1:ストーリーで振り返る
まずはお客様の入店から退店までの一連の流れ(ストーリー)を思い出します。図表2のように具体的な場面を整理しながら、「どんなお客様か」「初回か、リピートか」「何を求めたか」「会話の内容」「滞在時の様子」の5つを振り返ります。

ステップ2:お客様の反応の良し悪しを探る
次に「お客様の反応の良かったところ(=満足そうだったところ)」と「反応が悪かったところ(=不満そうだったところ)」を思い出します。

ステップ3:不満の原因を考える
良かったところは他のお客様にも喜んでもらえるように定着させていけば、自身のチャームポイントや強みになります。一方、悪かったところは、次回以降の改善につなげていきます。

改善のために、お客様の不満の原因を探り、具体的な対応を考えます。この時に役立つのが「ロジックツリー」と呼ばれる思考法です(図表3)。

ステップ4:改善策を実行する
ロジックツリーでお客様の不満の原因を突き詰めて考えたら、次の機会に実践します。

ただし、ロジックツリーで原因を自分なりに整理して解決策を導き出し、実行しても、お客様に必ず満足いただけるとは限りません。不満の原因が一つではなかったり、こちらの接客とは無関係の原因があったりするケースも考えられます。辿り着いた答えが唯一の解決策だと決めつけず、その都度振り返り、考えるサイクルを続けてください。お客様は一人ひとり個性があります。ご来店のたびに置かれている状況も変わります。考えた改善策を実行するチャンスは現場に出るたびにあるのです。

図表2・飲食店の場合のストーリーの例と図表3・改善のためのロジックツリーを紹介した画像

お客様を一番大切な方と思い対応する

テクニックも大切ですが、接客で何よりも大切なのは「お客様を思う気持ち」です。そうした気持ちを持つために、目の前のお客様を「自分の一番大切な方」と思って接してみてください。父母・兄弟姉妹・パートナー・子どもや孫、友人が来店したと想像すれば「サービスをもっと相手の好みに近づけたい」「良いところを見せたい」「いろいろ話をしたい」という気持ちが生まれ、お客様に対する発言や行動も自ずとより良くなるはずです。

※当記事は2023年1月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。