人間関係をスムーズにする
職場で役立つ「言いかえ」の極意

2024年1月15日

流通お店づくりトピックス

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■キーワード:ポジティブ/言いかえ/丁寧語

人間関係をスムーズにする 職場で役立つ「言いかえ」の極意のイメージ

仕事のやりがいや充実感に大きな影響を及ぼすのが「職場の人間関係」です。同じことを伝えるにも、言葉一つで相手が受ける印象は大きく変わります。職場やお客様の前で発しがちな「よけいなひと言」を「好かれるセリフ」に言いかえ、コミュニケーションをよりスムーズにするための秘訣を紹介します。

4つの〝ひ〟を避けポジティブな言葉を使う

私たちは毎日たくさんの言葉を使いこなしているように思いますが、実は決まったフレーズを繰り返していることが多く、日常生活で話している言葉はさほど多くはありません。口癖と言ってもいいその言葉がマイナスイメージのものばかりだと、日々の積み重ねだけに相手との関係に大きな影響を与えます。

日本では、結婚式などのお祝いの席ではネガティブな言葉を避け、縁起のよい言葉を使う風習がありますが、それは言葉の持つ力を知っているからです。日常生活でもそうした意識を持つことが大切であり、常にポジティブな表現を心がけることで、あらゆる人間関係がよくなります。

相手と良好なコミュニケーションを築くために特に避けなくてはならないのが、「非難」「批判」「否定」「比較」の4つです。いずれも〝ひ〟から始まるので、〝4つのひ〟または〝4H〟などと呼ばれています。

中でも一番多いのが「比較」です。例えば「前任者は1週間で仕上げていたから、あなたも1週間でお願いね」のように、相手と誰かを「比較」して仕事を頼むケースです。頼んだ方に他意はなくても、頼まれた方はプレッシャーに感じ、優劣を判断されているように受け取ります。別に比較対象を出さなくても、「1週間でお願いします」だけでいいはずです。

「非難」「批判」を避けるのは当然ですが、無意識に使っている人が多いのが「否定」です。注意したり、指示を与える際も「〇〇しないでください」と否定文で言うのではなく、「〇〇してください」と肯定文で伝えた方が、伝えたい内容は同じでも相手が受け止めやすくなり、前向きに取り組んでもらえます。

相談や指示は具体的に ハラスメントになる表現に注意

上司が部下に話す上で注意したいのは、「若いのによくやっているね」「女性なのに遅くまで頑張っているね」「もっとリーダーらしく振る舞って」のように、性別や年齢、役職などを引き合いに出すことです。これらはたとえ褒めているつもりでも、ハラスメントとして受け止められる恐れがあります。

もう一つは、人格を否定する表現です。仕事が遅い人に対して「期日を守ってください」と言うのは、相手の行動に対する要求なのでOKですが、「ノロマだな」などと言うのは相手自身を蔑んでおり、人格否定になります。

同じ職場にいると「言わなくてもわかるだろう」と思いがちですが、互いに「伝えたつもり」「わかったつもり」で行き違いが生じ、トラブルになりやすいのが現実です。「そもそも相手は理解していない」を前提に、指示を出す際は具体的に言う必要があります。例えば、仕事を頼むときなどは「できるだけ早く」ではなく、「〇月〇日までに」と期限をはっきり伝えるようにします。

一方、部下が上司に話す場合は、まず遠慮しすぎないことが大切です。言えばわかってもらえるかもしれないのに、最初から「言っても無駄」と決めつけている人もおり、その結果、最初に相談していれば大ごとにはならなかった、というケースがよくあります。

上司に何かを相談する際は、「〇〇について、こんなふうに悩んでいる」「この部分がわからない」のように、具体的かつ率直に話し、感情より先に事実を述べるようにします。「とにかく困っているんです」などと感情的に話し始めると、「お前がしっかりしてないからだ」と上司も感情的に返してしまうこともあるからです。

言いかえ例1を紹介した画像

すべての人に対して丁寧語を使う

近年は上司が年下で、部下が年上という職場も増えてきました。小売業や飲食業では、年下の社員が年上の契約社員やパート従業員に指示を出すケースも珍しくはありません。そんな場合はどんな点に気をつけたらよいでしょうか。

まず注意したいのは言葉遣いです。指示を出す際はもちろん、常にデスマス調の丁寧語で話すようにします。職場では年齢や性別、役職などで差別せず、「平等に接する」という理由から、年上の部下に限らず、誰に対しても丁寧語を使うのが基本です。

呼び方に関しても、よく「〇〇ちゃん」と「ちゃん付け」で呼ぶ人がいますが、これも職場の人全員が互いに「ちゃん付け」で呼び合っているのであれば、「平等」という意味で許容されますが、一部の人だけを「ちゃん付け」で呼ぶのは、相手を見下しているようにも感じられ、セクハラと言われても仕方ありません。職場では同じ苗字の人がいる場合などを除き、「苗字+さん」か「〇〇課長」のように役職で呼ぶのが原則です。

お客様に対しても同様です。「親しくなったら、タメ口の方がフレンドリーでいい」と考える人もいるかもしれませんが、相手は友だちではなく、あくまでもお客様です。一言二言タメ口になってしまうのは構いませんが、デスマス調の丁寧語で話すという基本はしっかり守る必要があります。

お客様と話すときは相手の言葉を受け止めてから

お客様と話す際は、相手の言葉を受け止めてから話すことが大切です。お客様の役に立ちたいと思うあまり、自分の持っている知識や案内を先行させても、お客様はご自身の話を聞いてもらってからでないと、頭に入らないことが多いものです。「こういうことですね」と相手の話す内容を時々確認しながら、お客様がお店に来た理由や背景、困っている点などを聞き取るようにしましょう。

クレーム対応の場合も同じです。電話や対面でお客様が怒っているときに、「〇〇を確認されましたか」「説明書に書いてあります」などと相手の話をよく聞かずに言ってしまうと、火に油を注ぐ結果になってしまいます。怒りというのは二次感情なので、その下には困惑や失望といった別の感情が存在します。冷静になって相手の主張をしっかり受け止め、怒りの裏にある困り事を解消することがクレームを解決する近道です。

お客様に対する言葉遣いでもう一つ気をつけたいのは、褒め言葉です。高齢の方がスマートフォンなどを使いこなしていると「そのお年ですごいですね」などと言いがちですが、「そのお年で」はよけいなひと言です。

また、お客様を気遣うつもりで「今日は元気がありませんね」と言うのもNGです。本当は元気なのに、そう言われると「今日は髪の毛がボサボサだったかしら」などと逆に落ち込ませてしまいます。ネガティブなことをあえて言う必要はありません。元気がなさそうに見えても「最近、どうですか」ぐらいにとどめておきましょう。

ポジティブな言葉遣いは、良好な人間関係を築く秘訣です。相手から言われて心地よいと感じる言葉を意識して使うことで、職場だけでなく、家族や友人とのコミュニケーションもより円滑になるはずです。

※当記事は2023年4月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。