コロナ禍を経て急速に進むデジタル化
急激なコストアップで急増するセルフレジ導入

2023年12月21日

流通トピックス

■業種・業態:スーパー  
■キーワード:ネットスーパー/移動販売/DX/AI/EC

スーパーのイメージ

コロナ禍を経て非接触の生活スタイルが定着しつつある中、スーパーマーケット業界のデジタル化対応は、オペレーション面だけでなくマーケティング上からも避けて通れなくなってきています。2022年のロシアのウクライナ侵攻に端を発したエネルギー高、資源高、ことに電気代の高騰、さらには賃上げ圧力の高まりなどもあって、スーパーマーケット業界はコスト高に見舞われています。そのオペレーション面での対応としてデジタル化が急速に進み始めているのはご存知の通りです。

DXの取り組み

スーパーのイメージ

大手の総合スーパー(General Merchandise Store以下GMS )とスーパーを展開する各社は、賃金単価の上昇による人件費増を吸収しようと DXに必死で取り組んでいます。

あるスーパーでは、これまで効果のあった電子棚札を日配、生鮮食品中心に新たに導入する店舗を増やしています。それにより総労働時間の年5%削減を見込んでいるといいます。

また、棚板を引き出しの様にて前に出すことができるスライド棚 の導入店舗も増やしています。素早く商品補充でき、効率的に作業ができるほか、無理な体勢で作業することがなくなるので労働災害の防止が期待でき、商品補充時のお客様へのストレス負担を減らし快適な買い物環境に繋げられるといったメリットから、今後も積極的に導入していく方針の企業は多いようです。導入部門の総労働時間を2.5%削減するともいわれています。

セルフレジも導入率が96%とほぼ全店に広げるスーパーもあります。形態もフルセルフレジにシフトし、キャッシュレス決済率が上昇しているのに合わせキャッシュレス専用レジの導入にも積極的です。キャッシュレスに対応すれば、釣り銭機がないため小スペースで効率よく配置でき、さらに釣り銭回収の手間が省かれ業務改善に繋がると稿評価です。お客様にとってもレジ待ちのストレスも軽減されるため、積極的に推進するという企業が多くあります。

AI自動発注も普及期に入るキャッシュレス専用レジも増える

餃子のイメージ
釣銭管理が不要になるキャシュレス専用レジ

ある大手スーパーは、システム投資に65億円を振り向ける方針です。首都圏で電子棚札を全店に導入し、2022年から本格稼働しているAI発注を現在の日配から生鮮部門に拡大しています。

同社ではレジの効率化策として、セルフ化を進めていますが、今後、スマホPOS、カートPOSも拡大導入していく考えです。

また別のスーパーでは、今期、労働生産性改善策として、多機能端末、需要予測型発注、スマホPOSをDX戦略として矢継ぎ早に投入していく構えで、一人当たり粗利額を当初中期計画の900万円から950万円に上方修正する計画です。スマホPOSは2022年の4店から2023年は22店に導入、レジの生産性を上げていく取り組みを積極化しています。

店舗現場では、急速に進むセルフレジ化、キャッシュレスレジ化を目の当たりにします。

新宿の高層ビル群の中に開店したスーパーでは、1フロア314坪の売場で20台ものキャシュレス対応のフルセルフレジが並んでいました。チェッカーが対応する有人のレジも6台設置されていますが、スペース的に圧倒的にフルセルフレジが占有しています。

同店の商圏は高層ビルが目立つが、地元の生活者も多く、オフィスワーカーとの混在エリアです。午前中は地元住民、昼はオフィスワーカー、夕方は住民、勤め帰り客がですが、昼は弁当などを求めてオフィス客が殺到するため、一挙にフルセルフレジ化に踏み切ったとのこと。店長はこれによりレジ要員を通常店舗の半分に減らせ、他部門などの業務に人を回し易くなったと話していました。

同じように高層マンション林立地帯の湾岸エリアにある413坪の店でも、レジはフルセルフのみ8台を導入。うち4台が現金使用可で、キャッシュレスのみが4台。先にオープンした同じ湾岸エリアの店でのキャッシュレス比率は35%以上で、通常の15~20%を大きく超えています。

進むロボティクスにEC対応

ロボティクスイメージ

セルフレジ、電子棚札など店舗オペレーションでのデジタル化が進む一方で、外に向けて顧客を獲得するマーケティング面でのデジタル化も急速に進みつつあります。

某大手流通企業は、英国オカドのノウハウを取り入れた本格的なネットビジネスとして、オンラインマーケットを2023年7月10日稼働開始しました。

同社が新設したフルフィルメントセンター(FC)では、ロボットが5万点のもアイテムを数秒でピックアップします。中でも注目されるのは、注文からお届けまでが使い勝手良く組み立てられていることです。

例えば、注文の手間を大幅に省けるように、クリック一つでお客様が 欲しいと思われる商品をAIによって、2秒で提案商品がカートに入った状態で提示。お客様は表示された商品を実際に買うかどうか判断して、選択して買い物を続けます。

これは、お客様の過去の購買履歴などから自動的にカートに用意するもので、お客様がこのシステムを使えば使うほどパーソナライズされ、より便利になります。購買データが蓄積されれば、1回の買い物が15秒で済ませることも可能になるということです。

同社では「このシステムをまとめ買いを提案するために開発した」と言い、「子育てや仕事で忙しい人は買い物をまとめて簡単に済ませたいというニーズが強いようです。まとめ買いを時間に追われながら行うのではなくてお客様自身の好きな時に楽しみながら行っていくスタイルに変えていきたい」としています。

発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2023年12月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。