ドライバー不足が深刻化する中、「物流の2024年問題」

2024年1月29日

流通トピックス

■業種・業態:スーパー  
■キーワード:ドライバー不足/物流問題/時間外労働/製配販連携

今日から取り組むSDGsのイメージ

多くの加工食品物流は、物流事業者が午後に出荷指図を受けて、翌日午前中に納品する仕組みが一般的です。市場経由の青果物は、遠隔地のものであっても、小売の販売日は集荷日から3日以内が求められています。このため九州や北海道の産地から東京の卸市場には夕方4時に集荷したものを翌日の深夜までに届けています。
また、物流事業者は、輸送だけでなく荷物の積み込みや荷下ろしなども行っていることが多いのですが、こうした作業も輸送費の中に含まれているような場合もあると言います。
夜間作業、夜間配送を伴う業務は食品物流の至るところで発生しています。ドライバー不足が深刻化する中、夜間運転や夜間の仕分け作業を前提とした業務が敬遠され、ドライバーのなり手が更に減るという事態に陥っています。

賃金構造基本統計調査を表すグラフの画像
トラック運送事業の働き方をめぐる現状

(出典)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」ほかより国土交通省作成

ドライバーの働き方改革が進む

運送イメージの画像

こうした現状に追い打ちをかける「物流の2024年問題」が間近に迫っています。

2024年4月1日から自動車運転業務における時間外労働時間の上限を年間960時間とする法規制が施行されます。働き方改革関連法の施行で、一般労働者はすでに2020年までに時間外労働時間の上限が年間720時間規制されています。自動車運転業務については、その業務内容から上限時間の適用猶予期間がありましたが、2024年3月末には期限切れとなるため、物流業界は対応を迫られているのです。

また、同じタイミングで「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告知)」も適用されます。同告示はドライバーの拘束時間や休息時間を定めたもので、2022年12月23日に改正され、年間の拘束時間が従来の3,516時間から3,300時間に短縮されます。

また、1日の休息時間は、現状の継続8時以上から継続11時間で9時間を下回らないことが求められています。

このように、長時間残業を前提としていた勤務形態の見直しが迫られていることに加えて、残業代についても2023年4月より割増賃金比率が変更されます。月間60時間を超える時間外労働の割増賃金は中小企業も従来の25%から50%に引き上げられるのです。

運送事業者だけでは解決出来ない

トラックを運転するドライバーの画像

こうした規制強化や経済環境の変化を受け、運送事業者の悲鳴が聞こえてきます。燃料費の高騰、人件費の増加、規制強化でドライバーの数を増やさないと業務が遂行できない状況なのに人が集まらない状態が続いているのです。

加えて荷主側の理解も進んでいないようです。物流体制の見直しには発・着荷主の理解や協力が欠かせませんが、荷主の法改正に対する認識が不足、または分っていてもあえて踏み込まないのが現実で、まさに四面楚歌の状況となっています。

現在物流が直面する課題を解決するには物流事業者と一部の荷主だけでは限界があり、発荷主と着荷主も問題解決の協議の輪に加わり、それぞれ担うべき役割を果すことが急務となっています。

製配販連携による効率化が不可避

配送前の荷物仕分けの画像

政府や業界団体も手を拱いて見ている訳ではなく、様々な協議会や研究会などを立ち上げ、検討しています。

FSP(フードサプライチェーン・サステナビリティ・プロジェクト)は製配販の新たな取組みを目的に2022年4月に誕生、小売りはSM3団体、卸は日食協、メーカーはSBM会議(食品物流未来推進会議)で構成されています。

ここでは、翌々日納品を確かなものにするために、小売りに3点の物流改善を求めています。1つは賞味期限180日以上の商品の納入期限を2分の1残しへ、2つ目定番品の発注時間を午前12時前へ前倒し、3つ目は特売・新商品の計画発注運用依頼です。

サプライチェーンの物流はメーカー、卸が負担しているため、物流がどうなっているかに関心を示さない小売りは意外と多いようです。しかし物が届かなくなると話は違ってきます。FSPでは、3つのテーマのマイルストーンも共有されています。

ドライバーが増えない中で、輸送の滞りを回避するには荷待ち時間削減、手積み、手降ろしなどの荷役時間削減、発注から納品までのリードタイムの延長、出荷・納品伝票のデジタル化、共同配送による積載効率向上などを、製配販が総力を上げて推進していくことが不可欠でしょう。

また、袋が膨らんだ袋菓子や巾着型のちょんまげのような形状の包装容器に入った肉加工品などなどのパッケージは、荷姿が大きく積載品がスカスカになる要因にもなります。そのため、包装のスリム化に取り組むメーカーも出始めています。
スリム化については、積載効率を上げるだけでなく、売場陳列のコンパクト化にもつながり有効です。

今後、こうした取り組みが増えてくるものと予想されます。

(文)食品商業 編集部
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2023年6月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。