小売業にビジネスチャンス
リテールメディアでB2Bへ!

2024年2月19日

流通トピックス

■業種・業態:小売業  
■キーワード:ネット広告/リテールメディア/広告事業

リテールメディアのイメージイラスト画像

広告ビジネスを取り巻く環境は大きく変化しています。特にプライバシー保護の観点から、Cookieを活用したターゲティング広告は終わりを迎えつつあります。Appleは、提供するWebブラウザSafari で、Google はGoogle Chromeで、広告企業などの運営企業以外が行動追跡に使ってきた「サードパーティCookie」を完全にブロックすると発表したからです。
消費者側も、Cookieによるターゲティング広告への不安を抱えています。一度検索した情報が、さまざまなサイトやアプリでしつこく表示される追跡型に「見られている」と感じるようです。

ネット広告に変化
消費者に直接リーチできる店舗に注目

女性がスマートフォンを持っている画像

こうした背景と消費者心理から、メーカーが広告宣伝費を見直し、小売業の広告ビジネス拡大が進んでいます。実際、大手飲料メーカーは、ネット広告に対する予算を大幅に縮小すると表明しました。その予算がテレビCMへ流れ、テレビ広告は伸びていると大手広告代理店はいいます。

また、消費者に最も近い接点である小売店頭や会員アプリ、小売業のWebサイトなどへの広告、クーポン発行を強化する動きに出ています。これがリテールメディアと呼ばれるもので、会員アプリや店内のデジタルサイネージなどへの広告を積極化しているのです。

これは小売業にとって大きなチャンスです。

現状、インフレによる仕入れ原価、光熱費の高騰、人手不足による人件費の高騰など、収益悪化の要因が増え続けている中、消費者との接点を活かした広告配信や、ファーストパーティデータ(企業が自社で直接収集したデータ)の拡充に伴う広告精度の向上など、広告先としてのメリットが大きくなっているからです。

ではどんな広告媒体への投資が最適なのでしょう。広告主であるメーカーは、主にWeb広告と顧客IDへのOne to Oneマーケティング、小売業側の店内サイネージとデジタルマーケティングに投資しています。

メーカー側から見た場合、最も効果的な広告媒体はメールやアプリによるデジタルマーケティングです。これにより、会員へのメールやアプリのプッシュ通知、ECバナーなどで広告表示が可能になるからです。また、店舗やECでの購買までの効果を測ることもできます。小売側が持つ膨大な顧客への配信と、ファーストパーティデータから精緻にターゲットを限定した広告配信ができるメリットがあるからです。

アメリカ大手小売企業がリテールメディアを積極化
日本でも急速に広がる

拡声器を持っている男女のイラスト画像

アメリカの世界最大の小売業W社は、2022年2月の決算発表でグローバル広告事業の年間売上高が21億ドルに達したと発表しました。これにより広告事業は136%増、広告主も前年比の2.7倍と大きく増加しています。

なぜW社が広告事業を手掛けるのでしょう。理由は全米で4500店以上を出店し、アメリカ人の90%をカバーしていることと、リアル店舗とECの来訪数は1週間で1.5億人という、圧倒的な顧客接点を有しているからです。

それら来店者に向け、リアル店舗では17万台のモニターによる広告およびセルフレジへの広告表示、EC・アプリでは検索連動型のブランド広告の表示が可能というわけです。

さらには、自社EC・アプリ以外のウェブサイトやSNSへのディスプレー広告も実施。W社は小売業以外に、広告代理店としても大きな収益を確保しているのです。

一方、EC最大手のAの広告収入は、年間売上4兆円を記録。過去3年で3倍の成長を遂げ、今や動画投稿サイトの広告売上を超える規模となっています。

では、Aの広告事業の強みはどこにあるのでしょうか。それは、消費者が商品を探す際の接点を押さえていることです。2021年の調査によると、アメリカの74%の消費者は、オンラインで商品を探す際にAを利用すると回答。商品検索の消費行動にAが入り込んでいることが分かります。

Aのサイト内では3種類の広告を表示されます。一つ目はトップに出てくるスポンサードブランド広告、二つ目はスポンサードプロダクト広告、三つ目は商品詳細ページで表示されるスポンサードディスプレー広告です。広告商品には「スポンサード」と表記し、消費者の信頼を得るようにしている点が特徴です。

日本でもリテールメディアは急速に拡大すると予想され、参入企業が増えています。例えばコンビニ大手A社は、広告事業を「3年以内に4桁億円の事業にしなければならない」とコメントしています。また某ドラッグストア大手B社は、広告技術開発ベンチャー協力の下に広告事業を立ち上げています。

さらに国内の大手小売C社では、メーカーから1通数円の広告費をもらい、会員向けのメールやアプリで配信。C社は原価をほぼかけず、広告費をまるごと利益にできるため、大きな収入源となっています。

広告事業を収益源にする
システム投資も必要

広告事業を連想させるイラストとパソコンの画像

広告事業を収益源に拡大するためのポイントは、広告主を多数持つことです。それには、広告主から見て広告媒体として魅力が無くてはならないことです。

そのために小売業側は、デジタルでアプローチ可能な会員を多数持つこと、顧客情報のID管理を行い購買売歴等のデータを保有することが必要になります。

小売業の広告事業の業務では、システム構築とその活用が不可欠で、メーカーなどへ広告出稿を営業するためには、ファーストパーティデータによる顧客データ、購買履歴データが必須であり、ID-POSと会員管理システムの構築がポイントになります。

また、メーカーがキャンペーンを希望する場合は、店舗のサイネージやメール、アプリでの配信を実施し、効果測定までをスムーズに行うシステムも不可欠になるでしょう。

2021年から2026年までのリテールメディア広告市場規模計測と予測を表したグラフの画像
出典:株式会社CARTA HOLDINGS
プレスリリース「リテールメディア広告市場調査を実施」

(文)販売革新 編集部
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2023年7月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。