コンビニ、GMS、コロナ禍での低迷から回復が顕著に
値上げで底上げのSM、節約志向、簡便志向への対応強める

2024年2月19日

流通トピックス

■業種・業態:スーパー、コンビニエンスストア  
■キーワード:パスタ/電気代/簡便さ/使い勝手

女性がスーパーで野菜を手にしようとしている画像

2023年5月8日にコロナ感染症が5類に変更され、人々の行動が活発化、チェーンストアの売上にも大きく影響してきています。
2023年5月度の既存店ベースでの売上前年比をみると、GMS(総合スーパー:General Merchandise Store以下GMS)が101.8%、SMが102.3%、コンビニが105.1%でした。前年5月はGMS105.1%、SM95.7%、コンビニ103.0%だったので、GMS、コンビニは2年連続で伸びており、コロナ禍での低迷からは回復しつつあります。

コンビニが加盟する日本フランチャイズチェーン協会では、2023年5月実績について「ゴールデンウィークや新型コロナウイルスの5類移行、インバウンド需要などから人流や観光客が増加したことにより、おにぎり、カウンター商材、菓子、ソフトドリンク、酒類、アイスクリームなどが好調に推移し、全店ベース、既存店ベース共に、前年実績を上回った」とコメントしています。

一方、食品の売上構成比の高いGMS、SMは2022年4月からの広範囲でかつ頻繁に実施されている食料品の値上げによる売上の底上げ効果が大きいようです。実際、SMの2023年5月実績は2022年5月のマイナスの反動という面が強く「1品当り買上額が上がって買上点数、客数が減少している」という状況にあるようです。

日本スーパーマーケット協会、全国スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会の3協会の統計を合同で集計している事務局では、2023年5月実績について「商品単価の上昇が続いているが、5類移行による人流活発化などもあって中食需要が伸びており、節約志向による内食需要も堅調で、売上高としては好調な販売動向が続いている。お客様は値上げを受け入れている一方で、コモディティ商品については、より低価格の商品を求める傾向が強まっているとのコメントが多くみられた。引き続き商品原価や光熱費、人件費などあらゆるコストが上昇していく環境下において数量減を伴わない単価増の継続に向けた販売戦略が求められている」としています。

2023年5月の業態別・月別伸び率の推移を表したグラフの画像
2023年5月の業態別・月別伸び率の推移(既存店ベース)

パスタに見る消費トレンド
中価格帯にシフト、低くなる値頃感

パスタソースとパスタのイラスト画像

2020年のコロナ禍が始まった頃、巣ごもり需要を最も強く受けた商品の一つであるパスタ関連品について、首都圏の中堅SMに聞いてみました。

スパゲッティの1.6㎎結束600gについて、「今年2月から5月までの4か月実績では高価格帯品を328円から368円に40円アップしたら買いづらい価格になったのか落ち込んだ。中価格帯品は228円から248円への20円アップに留め伸びていて、高価格帯から中価格帯にシフトしている。一方で、留型の400g98円品は140%と伸びている。237~248円が値頃になってきていて、400円に近づくと買いづらいのではないか」とし、「全体として動く価格帯は下にシフトし、裾値品の構成比が高まっていて、生活防衛意識が強まっている」と話しています。

パスタソースも「売れ筋品を2022年4月150円、2022年10月180円と値上げして数量がダウンしています。一方で100円のPB(プライベートブランド)は前年比126%、140円から148円に値上げしたあるNB(ナショナルブランド)品は113%と落ちておらず、傾向として150円を超えなければ落ちない、と感じている」と消費者の価格を見る眼は相当厳しくなっていると指摘しています。

チャレンジしなくなった消費者

女性がパスタを湯でようとしているところの画像

別の地場SMでは春の値上げ後の2023年5月~6月のパスタソースは数量で前年比86%と減少したのに対し金額ベースでは99%とほぼ前年並みを維持しています。

担当者は「パスタソースは大体20円くらい値上げしている。ベーシックのミートソースのNB売れ筋品はかなり値上がりしたが、数量・金額とも伸びている。他の商品が全部値上がりしているので、受入れられているようだ。逆にいえば、同じ高くなった商品を買うのなら、今まで通りの美味しい商品にしたい。全体が安い時は新しいものにチャレンジしようという気もでるが、今はあまり冒険しなくなった」と、消費者は堅実で慎重になったと話しています。

ただ、パスタソースの数量ベースのべスト20には、低価格PBが1位、8位、11位、12位と上位に4品入っており、消費者の生活防衛意識の強まりも反映されているようです。

電気代上がり早ゆでスパゲッティ人気
簡便さで商品を選ぶ傾向強まる

スパゲッティのイラスト画像

前出の中堅SMの担当者は3~4分で茹でられる「早ゆでスパゲッティ」が伸びているといいます。「小鍋でも茹でられるということからコロナ前から売れていたが、最近では電気代の高騰が影響している。ガス代、電気代を考えると、少しでも早く茹で上がってくれたら助かると思われているようだ。大鍋に水を入れて10分もかかるのでは電気代が勿体ない。3~4分の方が良いというので、ショートパスタも早ゆでが全盛。パスタソースもレンジ対応が伸びている。『3分間で茹でている間にパスタソースが温まる』という使い勝手の良さが評価されている」と話しています。

使い勝手の良い冷凍野菜が人気に

冷凍ほうれん草と冷凍いんげんのイラスト画像

コロナ禍で冷凍食品も巣ごもり需要を引き受けたジャンルですが、地場SMの話では冷凍食品では、冷凍米飯(金額ベース106.8%、数量ベース82.1%)、冷凍麺(104.1%、81.6%)などでは数量ベースで減少していますが、値上げで金額ベースでは伸びています。

同社の冷凍麺にはパスタ、うどん、ラーメンなどが入るが、金額ベースのべスト20にはパスタが9品が入っていて全体を押し上げているといいます。「冷凍パスタは、コロナ禍を経て今でも1食で完結するものが伸びている。それまで、外食で過ごしていたのをテレワークで食べる時に便利と実感されたようだ。チンすればよくコスパも良い。味も良くなっている。まさに簡単便利で美味しいと評価されている」とバイヤーは話しています。

また、同社の冷凍野菜は金額ベース106.9%、数量ベース113.3%と、金額、数量共に伸びているとのことです。その背景について「コロナ禍で海外から商品が入らず欠品していた前年の反動という面もあり、今年は供給が安定し売上げ増につながっているため」としていますが、「ただ、欲しい時に欲しい量だけ冷凍庫から出してくればいいという冷凍野菜そのものの使い勝手の良さも喜ばれている。生野菜を買うと早く使い切らないと傷んでしまう。

その辺の利便性と価格の安定性が評価されている。特にブロコッリーは「必要な分だけ湯がいて、弁当の彩り・付け合わせに少しずつ使うこともでき売れている」と重宝さが受けています。

パスタ、冷凍食品など、コロナ禍で実感された簡便性、商品そのものの品質(味)の良さから、コロナ後も定着しつつあるようです。

(文)販売革新 編集部
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2023年7月時点のものです。
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