ネットスーパーの利用3割に留まる
セルフレジは8割が利用

2024年2月28日

流通トピックス

■業種・業態:スーパー  
■キーワード:レジ省人化/Webルーミング/セルフレジ/ネットスーパー

セルフレジは8割が利用しているイメージイラスト画像

ある監査法人グループが、2023年1~3月にWebルーミング、BOPIS(Buy Online Pick-up In Store、以下BOPIS)、ネットスーパー・ネットコンビニ、パーソナライズされた販促、トレーサビリティに関する取り組み、レジ機能の省人・無人化、非デジタル系サブスクリプションサービスの7つのツール・サービスについて、企業・消費者双方にアンケート調査を行いました。
消費者調査は20代~70代以上を対象に6,185サンプル、企業は小売業を中心に1,089社に送付して80社の有効回答を得ましたが、その調査で大変興味深い結果が出ています。

レジ省人化、Webルーミングは早急に手を打つ段階

ネットを使用している女性のイメージイラスト画像

調査によれば「頻繁に利用している、利用したことがあるまでが50%以上あれば消費者ニーズが顕在化しているし利用している人も多い。企業サイドとしては手を打っていないのであれば早急に手を打たないといけないという領域と認識しているが、「レジ機能の省人・無人化」「Webルーミング」がそれにあたる」とのことです。

「パーソナライズされた販促」「トレーサビリティ」「ネットスーパー・ネットコンビニ」は20%以上50%未満になっています。ある程度ニーズは顕在化し始めていますが、ネットスーパーは、消費者の利用率は20%に留まっている段階です。大手小売を中心にネットスーパー事業には相当な投資を行っていてかなり注目すべきポイントといえるようです。

「BOPIS」「非デジタル系サブスク」は利用頻度が20%未満です。BOPISはアメリカでは普及していますが日本ではなじみにくい商取引の形態です。こちらは企業にとっても慎重な検討が求められる領域と考えられるとのことです。

高齢者のセルフへの抵抗は少ない

年代別高齢者のイメージイラスト画像

消費者側の調査では、セルフレジ、完全キャッシュレス決済への移行に対して8割以上が利用ないし利用意向があるとしており、大きな抵抗を感じていないことがわかりました。

当初の予想では利用経験、利用意向は年代別で高齢者層は利用しづらいと思っていましたが、想定に反し年代別の相違はそこまで大きくなく満遍なく受け入れられているようです。

一方でレジに対する不満は、待ち時間が長い(78%)、希望する決済方法に対応していない(66%)、というのが最も強く出ていました。この2つの不満が解消されるのであれば有人であれ無人であれ、どちらでも問題なく受容されるということが調査結果からみえてきます。

企業側の取り組みは消費者の受容度の高さに反して、導入は限定的のようです。その要因は、導入コストが膨大である(59%)が最も多く挙げられていました。

しかし、人材不足や人件費の高騰を踏まえ、今後、外部環境がますます厳しくなることを想定し、より安価なオプションや段階的な移行により初期コストの抑制などで、早期に対応策を実行する必要がありそうです。

ある小売企業では大きな箱モノを導入するのではなくてスマホアプリで消費者がスキャンして専用の自動精算機で決済するアプリを開発し仕組みを導入しました。

セルフレジの7割の費用でレジ省人化を実現していたといいます。また、レジ待ち時間の短縮が評価され、ある導入店では利用率が3割超えたといいます。

ネットスーパーの倉庫型はどのような客層を掴むのかがポイント

ネットスーパーを利用しているイメージイラスト画像

コロナ禍を機に食品に関わる宅配ニーズが高まり、各社、ネットスーパー・ネットコンビニの展開を加速しています。

従来、店舗から配送している例が多くありましたが、実店舗と同じオペレーションで行うので受注数に制限や、欠品リスクなどの問題がありました。そこで大手では大型倉庫を建設して一括で出荷するスタイルに切り替えるところが出てきています。そうした大きな投資をした効果を上げるためにはより多くの顧客の獲得が不可欠です。

コロナ禍にあっても、「ネットスーパーの利用状況は1、2回利用したことがある」を含めて利用経験者は約3割程度。ネットコンビニは1割未満で想定に反し比較的低い結果となっています。コロナ禍でドライブがかかっていたにも関わらずこの状況です。アフターコロナに入り、今後、市場拡大のスピードは落ち着き、食品の宅配ニーズは減っていくのではないかといった声も多く聞かれます。

そこで、倉庫出荷型に切り替えている業者がどう顧客を獲得していくのか、能動的にニーズのあるところを掴まえいかなくてはならないでしょう。

現状のネットスーパーの消費者像。スーパーの実店舗の主要顧客層は40~60歳代の女性が多く、その客層をネットスーパーに誘導する形で新たな利用者獲得を目指してきました。

しかし、ネットスーパーの主要顧客層は、ITリテラシーが高く、オンラインでの買い物に慣れている30~40代の女性、共働きまたは子育てをしていて可処分時間が少ない主婦が多いという結果です。

今回の調査で20~30代の若年層、さらに600万円以上の高所得者層において、ネット公売の利用経験・意向ともに高いので、これまでターゲットにしてこなかったところを掴まないといけないことが見えてきているようです。

その客層が、あまり実店舗を使っていないとすると、ECのプラットフォーマーと協業する形でそのお客様にネットスーパーを利用してもらうように、引っ張ってくる場所を変えることを短期的には考えないといけません。

中長期的には食品宅配のEC市場(3.77%)は、他商材のEC化率と比較して成長余地はまだ大きいと考えられていますが、今後ITリテラシーの高い高齢者が増えることを踏まえると若年層だけでなく中長期的目線で幅広い世代へのアプローチも検討することが求められます。

日本では構造的に進みにくい店舗ピックアップ

ネットショップでカートに商品を入れているイラスト画像

コロナ禍で注目されたオンラインで注文し、店舗で引き取るBOPISですが、欧米に比べ日本では導入が進んでいません。

商品種類別でも全部門で使ったことのある人は概ね1割に満たないといいます。ただ、衣料品だけは試着したり返品したりをその場でしたいニーズがあるので2割程度と高いようです。

オンラインで完結し配送もしてもらえるサービスと比べると、発送料がかからない、受取りのタイミングを柔軟に決められるなどがメリットとして挙がっていますが、アメリカでの「置き配の盗難リスクを回避できる」「配達遅延・紛失等のリスクを回避できる」といったメリットは日本では低く、アメリカと違って宅配業者への信頼度の高さが伺えます。

また、「商品を持って帰るのが手間、重い」などをデメリットとして挙げる回答がアメリカと比較して多いのも特徴です。アメリカは車社会で持ち帰りを苦にしていないことが伺えます。

こうした日本とアメリカの違いは構造的なものなので企業が導入を進め利便性を高めたとしても利用が進みづらい領域です。

企業がBOPISを導入した目的は「ついで買いの喚起」「物流コスト削減」を挙げられています。しかし、消費者の利用動機が弱いことから未実施企業はその導入について慎重な検討が必要なようです。

すでに導入している企業では、目的である「ついで買いが少ない」、「そもそも利用者数が少ない」が上位2位に入るようです。ただ、これまでは店舗のオペレ―ションに時間を費やされていて、ついで買いのための実店舗内への導線づくりが不十分な小売が多く、今後の可能性は十分にあるといえるでしょう。

発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2023年10月時点のものです。
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