人時生産性向上目的に、レジのセルフ化急ピッチで進む
スーパーマーケット業界3団体
「2023年統計調査結果」より

2024年4月24日

流通トピックス

■業種・業態:スーパー  
■キーワード:経営課題/収益性/セミセルフレジ/スマホレジ/ポイントカード

スーパーマーケットの看板イメージ画像

スーパーマーケット(SM)の実態や課題の調査を目的にスーパーマーケット業界3団体(一般社団法人全国スーパーマーケット協会、一般社団法人日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会)が調査を行い、このほど「2023年スーパーマーケット年次統計調査報告書」としてまとめられました。

同調査は、2023年7月~8月の期間、952社にアンケートを送付、283社の有効回答(回収率29.7%)を得ています。調査内容は経営環境、レジ・売場・センター、人事、ポイントカード・決済手段、販売促進・サービス、PB商品、環境対策など広範。コロナ禍を経て、スーパーマーケット業界がどう変化していくのかを考えるうえで貴重な資料になっています。

その中から、経営環境、レジ、ポイントカードなどレジ周りについてレポートします。

最大の経営課題は収益性の向上

矢印を引っ張っている男性のイラスト画像

SM各社が重視している経営課題は、「収益性の向上」が58.4%と最も高く、次いで「人材確保・育成」13.6%、「売上の拡大」11.8%の順となりました。

昨年からの原材料の値上り、電気代の高騰、物流費のアップなど経営コストが軒並み上昇。加えて、ドラッグストアなどの他業態との価格競争も激化し、利益が確保し難い経営環境になっており、こうした声が多くのSM経営者の共通認識になっています。

差別化戦略では、「品質」が50.4%となり、半数以上の企業が重視しています。次いで「品揃え」、「サービス向上」の順。大半のSMは生鮮3品と惣菜を磨き上げることに腐心。

SMの収益構造上ドラッグストアやDS(ディスカウントストア)とは真っ向から価格競争はできないことから、必然的に「品質」に力を入れている実情がうかがえます。

セミセルフレジは8割近くの企業が導入

セルフレジのイラスト画像

セルフレジ(フルセルフ)設置企業は、31.1%の企業が設置していて増加傾向が続いています。51店舗以上展開する企業は75%が設置していて、保有店舗数が多い企業ほどセルフレジを設置している割合が高い傾向がみられます。また、都市圏より地方圏で設置率が増える傾向があります。

今後、セルフレジを「新たに設置したい」企業は28.9%、「台数を増やしたい」が17.4%になっていて、近い将来、6割の企業がセルフレジを設置した店になりそうです。企業規模別では保有店舗数26~50店の企業で「新たに設置したい」が44.4%と高く、すでに設置率の高い51店舗以上の企業では「台数を増やしたい」割合が50%超となっています。大きな企業を先頭に設置が進みそうです。

精算だけセルフで行うセルフ精算レジ(セミセルフレジ)設置企業は78.2%と、セルフレジの2倍以上あり、増加傾向にあります。保有店舗数11店舗以上の企業ではセミセルフレジの導入企業の割合は8割を超えています。

今後の設置意向は、「新たに設置したい」が12.8%、「台数を増やしたい」が24.4%。すでに導入している企業が多いため、新たな設置意向より設置数の増加意向を示す企業が多いです。

スマホレジなどは13%ほどが導入

スマホで決済しているイメージ画像

スマホないし買い物カートに設置したタブレット連動のスキャナーで商品のバーコードを読み取るセルフバーコードスキャンの導入企業の割合は13.2%で、前回調査よりやや増加しています。

こちらは保有店舗数が多い企業ほど設置割合が増えていて、51店以上保有企業では31%と3割を超えています。今後の導入意向では、「新たに導入したい」企業は10.1%で既導入企業の割合と合わせても23%ほど。今のところ、セミセルフレジほどの勢いはなく、Z世代の増加と共に増勢に転じると思われるが、まだ予測はつかない状況です。

お客様のスマホに紐づいたクレジット情報などを元に、カメラやセンサーで購買商品を特定してレジを通さないで自動的に決済する「レジレス」の導入企業の割合は3.0%、236社中7社でした。レジレスは企業事務所などの閉鎖商圏(職域)で実施されているケースが多いとみられますが、不特定多数が来店するスーパーマーケットでも手掛けられ始めているのは興味深いです。

実際のところ、改装店、新店では、フルセルフレジ、セミセルフレジ、それに有人の通常レジの混在は当たり前の光景になっており、セミセルフを中心にセルフ化はますます進みそうです。

最も高いレジの人手不足がセルフ化の要因に

人手不足を表現しているイメージ画像

こうしたレジのセルフ化が進んでいるのは人手不足のためと言われていますが、今回の調査でもレジ部門を中心とした人手不足問題が浮かび上がっています。

パート・アルバイトが不足している部門は「レジ」が71.1%で最も多く、次いで「水産・鮮魚」の59.7%、「惣菜」の56.1%、「精肉」の47.1%と続く。「グロサリー」「日配」もそれぞれ26.4%、22.0%と比較的低いものの、年々その割合は増えています。そのためか、レジのセルフ化で空いた時間をグロサリー、日配の品出し作業などに充てる多能化を進める動きも強まっています。

一方、正社員ではレジ部門で不足としているのは34.6%。その不足度合いは年々増えてはいるもののパート・アルバイトの不足の半分弱。正社員はレジより、「水産・鮮魚」(52.3%)、「精肉」(46.4%)、「惣菜」(46.2%)など生鮮4品で不足度合いは高く5割前後の企業が人手不足に陥っています。

9割近い企業がポイントカード導入

買い物の支払い時にポイントカードを提示しているイメージ画像

ポイントカードの導入率は86.7%で、前回調査からやや増加しています。企業規

模別では51店舗以上保有企業が92.7%と保有店舗数が多くなるにつれポイントカード導入率が高くなる傾向がみられます。ただ、政策的にポイントカードは出さないという企業は以前からあり、現状の9割前後がポイントカード導入の到達点かもしれません。

導入済ポイントカードの種類は、「自社独自のポイントカード」が70.1%で最も多く、「共通ポイントカード」は13.9%。保有店舗数が多い企業では「共通ポイントカード」が26.8%と平均の2倍と多いです。

また、共通ポイントカードは地方の12.0%に比べ都市圏が20.0%と高い一方で、自社独自ポイントカードは地方(73.7%)の方が都市圏(61.5%)を1割以上上回る。地方SMは地域に基盤を築いている企業が多く、自社ポイントカードで顧客の囲い込みを図ろうとする政策を表しているのかもしれません。

購入価格に対する通常時(ポイントアップ企画などを行っていない時)ポイント還元率は「1.0%未満」が70.2%と最も多く、ポイント還元率の平均は0.6%。企業規模別では、保有店舗数1~3店の企業で「1.5%未満」の割合が高くなっていて、小規模企業ほど還元率が高くなっています。

最も利用されているポイントカードの最大還元率は平均2.4%。地方の企業の方が都市部に比べ平均がやや高いです。

電子マネー、QRコード決済が増加傾向

スマホで電子マネーやQR決済を行っているイメージ画像

決済手段では、クレジットなど現金以外の決済手段の導入率は96.8%。11店以上保有企業では100%が導入しています。

導入済の決済手段では「クレジットカード」が91.2%で最も高く、「電子マネー」(79.6%)、「QRコード」(62.0%)が続く。電子マネー、QRコードの導入率の増加傾向が顕著になっています。各決済手段とも企業規模が大きくなるに従い、比例的に導入率が上がっています。

今後の導入予定の決済手段は「QRコード決済」が25.1%で多いが、全体的にはクレジットカード以外は前年に比べ減少傾向にあって、導入を考えていない企業が64.3%で年々増えています。

自社独自のキャッシュレス決済は41.4%が「導入している」。保有店舗数51店舗以上では約6割が導入しています。

決済手段の利用額は、電子マネーの「利用額を増やしたい」が46.4%と半数を占め、保有店舗数が多くなるにつれ、「利用額を増やしたい」割合が高くなる傾向にあります。

(文)株式会社ストアジャパン社
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2023年11月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。