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在庫日数とは
適正な在庫日数は?計算式も紹介

消費者の購買行動が多様化している現代では、顧客のニーズを反映した売り場づくりと、適正な在庫管理によるキャッシュフローの健全化が重要視されています。

在庫日数は、在庫管理で重要とされる指標のひとつです。その計算式や適切な在庫日数の目安、在庫日数の適正化の重要性などについて紹介していきます。

在庫日数とは

在庫日数とは、在庫として抱える商品の数量が何日分の売上に該当するかを示す指標です。

在庫日数が長いほど、商品を在庫として抱える期間は長期化します。売上に変わるまでに期間を要し、在庫管理にコストがかかっている状態とみなされるでしょう。一方、在庫日数が短い場合は売上が立つまでの期間が短く、在庫管理のコストを抑えられていると評価できます。

在庫日数は、商品の欠品や過剰在庫を防ぐために重要とされる、在庫管理の適正レベルを測る指標として機能します。特に小売業の中でも、賞味期限・消費期限のある食品業界、季節ごとの商品を取り扱うアパレル業界や家電業界などでは、在庫日数は経営全体を大きく左右しかねない枢要な視点です。

在庫日数の計算式

在庫日数は、売価ベースによる在庫高を1日の平均売上高で割って算出します。

  • 在庫日数=在庫高(売価)÷1日の平均売上高

【計算例:平均在庫高200万円、年間売上高2,000万円】
200万円÷(2000万円÷365日)=36.5(日)

1日の平均売上高は、年間売上高2000万円を365日で割って算出。平均在庫高200万円を1日の平均売上高(2000万円÷365日)で割ると、在庫日数は36.5日となります。

なお、在庫日数は月別や週別といった単位でも計算できます。

月の在庫日数の計算式

月別に在庫日数を求める場合には、次の計算式で算出します。

  • 在庫日数=月平均在庫高(売価)÷1ヶ月の平均売上高

【計算例:月平均在庫高400万円、1ヵ月の平均売上高800万円】
400万円÷800万円=0.5(ヶ月)

月平均在庫高400万円を1ヵ月の平均売上高800万円で算出した在庫日数は0.5ヶ月に相当します。

週の在庫日数の計算式

週別に在庫日数を求める場合には、次の計算式で算出します。

  • 在庫日数=週平均在庫高(売価)÷1週間の平均売上高

【計算例:週平均在庫高400万円、1週間の平均売上高200万円】
400万円÷200万円=2(週)

週平均在庫高400万円を1週間の平均売上高200万円で割って算出した在庫日数は2週(14日)です。

適正な在庫日数

適正な在庫日数の目安は、商品や業種、地域などさまざまな変数に左右されるため、一概に論じることはできません。自社の適正値を設定しておくことが大切です。

適正な在庫日数の目安や判断基準となるのは、手配から納品までの発注リードタイムや需要予測です。たとえば、発注した翌日に納品される商品と、発注から納品までに1ヶ月を要する商品では、保有すべき在庫量は異なります。また、どの程度の売上が見込めるのか、需要予測によっても必要な在庫量は異なってきます。

実際には、入荷の遅延など不測の事態などに備えた安全係数も踏まえ、適正な在庫日数を算出します。

在庫日数の適正化はなぜ重要?

在庫日数が長期化し、過剰在庫や売れる見込みのない滞留在庫を抱えた状態では、キャッシュフローの悪化が懸念されます。

一方、在庫日数が短くなれば、仕入れた商品を売上として回収できるまでの期間も短縮されるため、キャッシュフローの健全化につながります。しかし、商品の在庫量が少なすぎると、在庫切れを起こして販売機会の損失を招く恐れがあります。

そのため、商品の販売数量や市場動向、トレンドなどをもとに顧客のニーズを分析して、適正な在庫日数となるように在庫管理を行うことが重要になるのです。

たとえば、「Aという商品の在庫が1000個ある」という数値だけでは、その在庫量が適切であるか判断することはできません。Aの在庫日数が100日、しかも発注の翌日に届くというケースでは、明らかに過剰在庫です。一方、Aの在庫日数は10日、発注から納品まで1週間かかるというケースでは、適正な在庫量と評価できるでしょう。

このように、在庫日数は適正な在庫量の判断基準となることがメリットです。

また、商品ごとの在庫日数を把握すると、「3日分の在庫しかないから追加で仕入れよう」とシンプルな基準で仕入れを行えるほか、売れ行きが落ちこみ過剰在庫となっている商品に対して、セールなどの施策を展開するなどの判断材料にもなります。

このほかにも、仕入れ数が同数の商品であれば、在庫日数が短いほど売れ筋商品、長いほど死に筋商品といった判断も可能です。

さらに、在庫日数の把握は売り場づくりにも役立てられます。陳列されている商品が売れるまでの目安がわかると、売り場の商品の入れ替えを行う業務が効率化します。在庫日数が短く頻繁に補充を行う商品と、在庫日数が長い商品の陳列スペースを分けると、品出しはさらに効率化されるでしょう。

在庫回転日数と在庫日数の違い

在庫日数と似た用語に在庫回転日数(商品回転日数)があります。在庫回転日数は、対象となる商品の在庫が何日で入れ替わっているかを示す指標です。

在庫回転日数は以下の数式から求められます。

  • 在庫回転日数=日数(年・月・日・時間)÷在庫回転率
  • 在庫回転率=売上原価÷平均在庫金額
  • 売上原価=期首在庫金額+仕入れ在庫金額-期末在庫金額
  • 平均在庫金額 =(期首在庫金額 + 期末在庫金額)÷ 2

在庫回転日数は、売上原価を平均在庫期間で割った「在庫回転率」をもとに算出します。

なお、売上原価は期首在庫金額に仕入れ在庫金額を加えて、期末在庫金額を引いて求めます。平均在庫金額は期首在庫金額と期末在庫金額の合計を割ったものです。

在庫日数も在庫回転日数も在庫管理に関わる指標です。在庫日数は保有している在庫量が何日分の売上に相当するのか「売上」をベースにしているのに対し、在庫回転日数は保有している在庫が何日で入れ替わっているのか「日数」をベースにしている点に差分があります。

まとめ

在庫日数を把握して在庫の適正化を図ると、過剰在庫による管理コストの増加や欠品による販売機会の損失を防げます。また、商品の入れ替えの際などの売り場づくりの効率化にも役立つでしょう。

在庫日数を活用した在庫管理には、データの取得が不可欠となります。POSシステムに蓄積された販売実績や在庫に関するデータを分析し、在庫日数を算出しましょう。

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