イメージ画像

ローコストオペレーションとは?
人件費の削減など5つの施策と取り組み事例

ローコストオペレーションは、コストの無駄を省いた店舗運営を指す経営学用語です。消費者ニーズや消費行動の変化、あるいは競争の激化といった状況にさらされても確実に収益を上げていく仕組みとして、店舗運営における重要な戦略に位置付けられます。

本記事では、店舗運営に欠かせないローコストオペレーションについて、概要から具体的な施策、導入により成功している企業の事例を紹介します。

ローコストオペレーションとは

ローコストオペレーションとは、極力コストの無駄を省き、効率的な店舗運営を図ることです。

消費の低迷や低価格志向の高まりといった消費者ニーズの変化、または店舗・業態間競争の激化により収益確保が困難になった状況においても、損失を出すことなく収益を確保していける仕組み作りとイメージするとよいでしょう。

ローコストオペレーション=人員削減ではない

コストの無駄を省くというと、人員削減が真っ先に浮かぶかもしれません。

しかし、「ローコストオペレーション=人員削減」といった単純化された方程式は成り立ちません。ローコストオペレーションは人件費も含めた事業経営にかかる費用の無駄を省くことと俯瞰して捉えるべきでしょう。

確固たる戦略もなく人員削減や人件費の抑制に安易に着手してしまうと、従業員のモチベーションは確実に失われ、サービスの質も低下します。結果、収益減を招く可能性を高めるだけです。

もちろん、明らかな無駄が生じていると判断できる場合では、人員の削減や人件費の抑制を検討してもよいでしょう。しかし大切なのは、無駄が生じている領域は人件費だけに限定されるものではないという視点です。

さまざまな業務において、コストの無駄は発生しています。事業活動の包括的な効率化を図り、コストの低減を図るアプローチから目を背けてはいけません。

ローコストオペレーションの具体的な施策

ローコストオペレーションを実現するためには、さまざまな施策が検討されます。

  • 作業の標準化
  • 人員配置の最適化
  • 人件費の最適化
  • 設備投資の圧縮
  • システムによる商品・在庫管理

作業における属人性の排除や人員配置の最適化はもちろんのこと、設備投資などにも目を向けて全体的に無駄を省く効率化を目指すことで、ローコストオペレーションを実現します。また、システムの活用により業務効率が高まると予測できる場合には、導入を積極的に検討すべきでしょう。

作業の標準化

作業の標準化とは、明確なマニュアルなどを用意して、すべての従業員が同一の業務で同一の成果を出せるようにオペレーションを整備することです。この「作業の標準化」がローコストオペレーションに結びつく理由は複数挙げられます。

  • 属人化を防げる
  • 業務品質が向上する
  • 作業を数値化できる

作業の属人化は組織の柔軟性を奪い、効率性を阻害します。たとえば作業自体はできていても、その仕組みや目的が失われた状態です。作業内容の保守や改修に迫られた際、仕組みを紐解くことから着手しなければならなくなるため、膨大な時間や労力を余儀なく割かれるでしょう。その間も当然、人件費などのコストは発生します。

これは逆にいうと、作業を標準化できていれば誰が担当しても同様の品質・成果を出せるようになるため、組織全体の業務品質の向上に寄与します。生産性も高まり、残業代や光熱費などのコスト削減にもなるでしょう。

作業の評価においても、数値による定量分析ができるようになれば、ボトルネックとなっている部分は一目瞭然になります。注力すべき工程が特定されれば従業員のモチベーションも安定し、業務効率化・生産性の向上によるコスト削減につながるでしょう。

人員配置の最適化

人員配置の最適化とは、従業員が持つ能力やスキル、経験に応じて最適なポジションに配置することです。各従業員が持つ能力・スキル、経験が十二分に発揮されるようになり、生産性の向上が見込めます。

組織内に適材適所の従業員を配置すれば、組織全体の生産性も上がっていくため、業務に充てる人数の見直しにもつながるでしょう。

人件費の最適化

人件費の最適化とは、人件費にかかる無駄を見直して最適化することです。

人件費の無駄は、1人あたりの生産性の低さとも相関関係があり、その背景には日々の作業や業務における無駄の多さが疑われます。そのため、人件費を最適化するにあたっては、作業や業務、オペレーションの仕組みに起因する無駄を丁寧に洗い出すアプローチが欠かせません。

ボトルネックを特定し、改善することで業務効率化が図れれば生産性も向上し、人件費の無駄を軽減できます。

設備投資の圧縮

設備投資の圧縮とは、設備にかかっている無駄なコストを省くことです。たとえば店舗建設時の内外装を簡素化する、あるいはLED照明を導入し電気代を抑えるなどの施策が挙げられます。

設備においては、初期投資と維持費が必ず発生します。特に金額が大きくなる初期投資の場合、減価償却コストの見直しはローコストオペレーションの実現に極めて効果的です。また、維持費においても定期的に見直しを図り、余剰コストを省いていきましょう。

システムによる商品・在庫管理

前項で設備投資の圧縮に触れていますが、システム化に関する設備投資はむしろ積極的に行うべきでしょう。

たとえば商品管理や在庫管理を人力で行っていては、時間と労力がかかりすぎます。その結果、接客品質が低下するような事態となれば、顧客の離反も招きかねません。

一方、POSシステムなどを導入すれば、商品・在庫の管理は劇的に効率化します。POSシステムを有効活用し顧客分析やエリアごとの売れ筋商品分析などにも着手すれば、マーケティングや販促の精度も高まるでしょう。

コストの無駄が省けるだけでなく、営業利益のアップにも寄与するため、確実に収益を上げていくオペレーションが構築されます。

POSデータの分析方法|マーケティングに活用して売上アップ

ローコストオペレーションの事例

ローコストオペレーションを取り入れ、成功している企業の具体的な事例も見ていきましょう。ここで紹介する成功事例では、業務や生産・物流工程などを徹底的に効率化し、システムを活用したデータ分析を行うなどの仕組み化に取り組んでいます。

家電量販店の事例

北欧テイストの家具を展開する量販店では、徹底的なローコストオペレーションを実施しています。

まず建設地は土地代の安価な郊外を選択。物流工程の無駄を省くために店舗数も最小限に留め、8,000~10,000万坪の大型店舗を展開しています。

また、平たく部品を梱包する「フラットパック方式」を採用し、生産・物流工程をさらに効率化。世界共通規格の商品を大量に生産したり、組立は消費者に任せたりといった手間を省く戦略を採用し、圧倒的な低価格を実現しています。

さらに店舗内においても導線やレイアウトを工夫し、消費者自らが多くの商品に興味を持つような仕掛けがなされています。これにより接客の手間も削減し、スタッフの人数を最小限に留め人件費の無駄も抑えられています。

衣料品チェーンストアの事例

業界トップクラスの売上を誇る衣料品チェーンストアでは、マニュアルによる業務標準化を徹底し、ローコストオペレーションを実現しています。

マニュアルでは優秀なベテラン社員のやり方を標準化。新人社員でも一定レベルで業務を遂行できるように整備し、作業の無駄を低減しています。さらに、マニュアルは常にブラッシュアップされます。顧客やスタッフから寄せられる改善提案を加味して、新たなマニュアルを発行。現状に最適化されたマニュアルをベースに業務に取り組み、日々効率化が図られています。

また、建設地は土地代の安い郊外を中心にしている点も、ローコストオペレーションにマッチした戦略です。

ホームセンターの事例

関東を中心に、東北、甲信、近畿、東海エリアに店舗展開しているホームセンターでは、仕組みの改善を徹底しておこない、ローコストオペレーションを実現しています。

たとえば発注支援システムの導入によるオペレーションコストの削減や、店舗人員の配置変更による労働時間の標準化を実践し、コストの無駄を省いています。

さらに、POS分析システムの活用により売れ筋・死に筋商品を迅速に把握。データを活用した売り場作りを行うことで、作業効率を向上させ、無駄なコストの発生を防いでいます。

まとめ

事業経営にかかる費用の無駄を省く。これはまさに「言うは易く行うは難し」の取り組みです。しかし、今後さらに競争が激化していくビジネスシーンや商圏で生き残っていくためには、ローコストオペレーションの実施は避けられません。

ただし、人件費の最適化などの施策を急速に進めては混乱を招き、従業員のモチベーション低下や離反にもつながりかねません。まずは業務オペレーションや個別の作業に無駄がないか、見直すことから始めてみましょう。

別窓 このアイコンのリンクは、新しいブラウザウィンドウ、または新しいタブを開きます。