BEYOND THE FUTURE!~未来を越えて~ リテールテックJAPAN 2024 の様子

BEYOND THE FUTURE!~未来を越えて~
リテールテックJAPAN 2024 レポート

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リテールテックJAPANはトータル流通情報システムからAI・データ活用まで、流通・小売・飲食業界向けのITソリューションが一堂に会する国内最大級の展示会。東芝テックブースでは今年も数多くの新製品、最新ソリューションや近未来を見据えた新たなテクノロジーが紹介され、大きな注目を集めました。注目の新製品やソリューション・サービスを中心に今年の東芝テックブースをレポートします。

シアターステージでは近未来の買い物体験を紹介

第40回流通情報総合展リテールテックJAPAN 2024で東芝テックが掲げたテーマは「BEYOND THE FUTURE!~未来を越えて~」。ビジョンが最も強く表されたのは、来場者を最初に迎えるシアターステージとそれに続くNEXT ACTの2コーナーでした。

シアターステージでは、グローバルリテールプラットフォーム「ELERA」がサプライチェーンにおいて、パートナーとの共創によるエコシステムを実現し、⽣活をより豊かにしていく「ワクワクする買い物の未来」を表現していました。

シアターステージ イメージ画像

シアターステージ

近い将来に実現を目指すソリューションをミニステージ形式で紹介するNEXT ACTでは、量販店とアパレル専門店の二つを例に買い物体験の進化がより具体的に紹介されました。

量販店から見ていきましょう。店頭のお買い得商品を見比べ、経済的に賢い献立を考えるのは簡単ではありません。ミニステージで紹介されたのは、消費者一人ひとりの嗜好やライフスタイルに基づき、各種リテールメディアを通してお勧め献立をリアルタイムで提案するサービス。Webサイトへのアクセス履歴やSNSへの投稿と「スマートレシート」の購買履歴を分析することでより嗜好にマッチした提案を行うことが可能になります。

アパレル専門店の例として紹介されたのは、ディスプレイ組み込み型ミラーを情報端末として利用し、買い物を支援するソリューション。アパレル専門店の場合、ファッションに関する専門知識を持つ店舗スタッフの存在が実店舗に足を運んでもらう上で大きな意味を持ちますが、人手不足もありスタッフ確保は今後より難しくなることが予想されます。

店舗に設置したミラーを通し、嗜好・ライフスタイル、購買履歴に基づくおすすめコーディネートを提案したり、AIがマッチングを評価するソリューションは実店舗の新たな強みになるはずです。「ELERA」という新基盤が私たちの買い物体験を大きく変えるのもそう遠くない未来のことなのかもしれません。

機能を全面的に見直し一層の使いやすさを目指す

最新ソリューションは量販店、専門店、飲食店などの業種・業態別のほか、サプライチェーンマネジメントやBPOサービスなど、東芝テックならではのユニークなソリューションを紹介するコーナーに分けて展示。量販店ソリューションコーナーから今回の展示のポイントを見ていきたいと思います。

急速に普及するセルフレジは、小売りの現場が直面する人手不足の解消手段として欠かせない存在になろうとしています。量販店ソリューションコーナーの展示でまず注目したいのは、小売りの現場からのフィードバックを受けたセルフレジソリューションの進化です。

セルフレジおよび会計・チャージ機「SS-NEX」シリーズの拡充もその一つ。中でも注目を集めたのは、機器レイアウトを全面的に見直し、消費者と店舗スタッフ双方にとっての使いやすさを追求したセルフレジ「SS-N1G」です。

進化のポイントは大きく二つ。一つはセルフレジ専用機器として自動釣銭機を新たに開発した点です。これまでは既存の自動釣銭機を流用する関係上、紙幣・硬貨の投入口、釣銭受け口の配置に制約があり、それが釣銭取り忘れなどの問題にもつながっていました。専用機器化に伴うデザイン見直しによる直感的な操作の実現は、こうした課題の解決に大きな役割を果たすことが期待されます。また縦型専用機により釣銭容量が大幅に拡大されたことは、店舗スタッフによる営業時間内の硬貨補充の省力化にも貢献します。

もう一つの注目ポイントは、専用機器化に伴う機器レイアウトの全面的な見直しです。
これまでセルフレジ中央に配置された自動釣銭機を左側に移動したことは、消費者がより短い動線で商品登録を行うことに貢献。さらに店舗スタッフによるレジ締めやメンテナンスの省力化にも大きな役割を果たします。また、自動釣銭機を中央に配置した従来のレイアウトは食品ドロップの影響を受けやすく、ドロップを原因とした機器トラブルもたびたび発生していました。レイアウトの変更は、ドロップ漏れを原因とした機器トラブルの改善にも効果が期待されます。

セルフレジ「SS-N1G」イメージ画像

セルフレジ「SS-N1G」

「ピピットセルフ(カートタイプ)」の進化も注目したいポイントです。売り場で商品を選んだタイミングで商品登録を行う売り場移動型セルフレジ「ピピットセルフ」の登場は2020年のこと。タブレット一体型のカートタイプと消費者自身のスマホを登録用端末として利用するスマホタイプの二種類があり、消費者の観点では、見やすく、使いやすいカートタイプの人気が高いのですが、実はその運用には一つの課題がありました。それはバッテリ充電の手間です。市販バッテリを搭載した従来製品の場合、閉店後にカートからバッテリを取り出し、充電装置に接続するという手間が生じていました。1台のカートには2個のバッテリが搭載され、充電にはその都度、鍵を開けてバッテリを取り出していたと言えば、その手間が理解できるはずです。

新型「ピピットセルフ(カートタイプ)」の特長は、専用装置にカートを連結するだけで自動的に充電が行われる点です。8時間充電で13時間稼働するため、毎日の充電作業は閉店後にカートを連結格納するだけで完了。24時間型店舗の場合も夜間は「ピピットセルフ(カートタイプ)」を停止する運用が一般的なため、既存の業務フローを変更することなく導入が可能です。

注目したいもう一つのポイントは計量器による登録漏れ回避の実現です。店内を回遊しながら登録を行う売り場移動型セルフレジは、登録漏れの問題が以前から懸念されてきました。新型「ピピットセルフ(カートタイプ)」は、カゴ内の重量を計測することで、商品登録を終えずにカゴに商品が追加された際にアラートを表示。それにより、商品登録漏れを防止します。同様に、登録した商品を棚に戻す際の登録解除漏れについても、アラートにより解除漏れを防止します。なお計量器は底面ラックとも連動するため、お米やドリンクなどの購入にも対応します。

固定スキャナとハンディスキャナの“二本差し”実現も注目点の一つ。二本差しによるスキャナ使い分けは、よりスムーズな商品登録に大きな役割を果たすはずです。なおハンディスキャナについてはタッチスキャナとガンスキャナ、固定スキャナについては値引きシールを認識する東芝テック純正品と汎用品をニーズに応じて組み合わせることが可能です。

ピピットセルフ(カートタイプ) イメージ画像

ピピットセルフ(カートタイプ)

また会員登録を前提として運用されることが多い「ピピットセルフ」は、顧客囲い込みの手段としても有効です。こうした観点から注目したいのが、セキュリティゲート「ピピットチェック」と「ピピットセルフ」の連携による会計処理の大幅な省力化です。

セルフレジ導入店舗では、レシートのバーコードをかざすことで会計を終えたことを確認するセキュリティゲートの導入が進んでいます。「ピピットチェック」の導入により、各店舗が発行するプリペイドカードと連携することで、ピピットセルフに表示されるバーコードを読みとるだけで即座に会計を終えることが可能になることがその理由です。

行列に並ぶことなく会計が終えられる強みが、会員登録による顧客囲い込みに大きな意味を持つことは間違いありません。なお、商品登録中にプリペイドカード残高が不足した場合、アラートを表示。この場合もゲート通過前に入金を済ませることでスムーズな会計が実現します。

ピピットチェック イメージ画像

ピピットチェック

さらに小回りが利く無人店舗ソリューション

セルフ決済ソリューションでは、無人決済店舗システム「TTG-SENSE SHELF」も大きな注目を集めました。

天井のモーションセンサや商品棚の重量センサの情報に基づき無人決済を行うTTG-SENSEはこれまでコンビニ型小型店舗を想定した「TTG-SENSE」と、工事なし・電源だけで開業できる「TTG-SENSE MICRO」の二通りのサービスを提供してきました。その一方で7~20m2を想定する「TTG-SENSE MICRO」よりもさらに小規模な出店ニーズも少なくありませんでした。

こうした声に応え新たに発表されたのが、商品棚二つプラスレジを基本パッケージとした「TTG-SENSE SHELF」です。基本サイズは、横幅2860㎜×奥行600㎜×高さ2550㎜。それにより自販機コーナー程度のスペースでも無人店舗の運営が可能になります。

新たな需要として想定されるのは、これまで出店が困難だった駅や商業施設の空きスペース、職域内への出店です。自販機コーナーと違い、多様な形の商品が取り扱えるため、例えば駅構内ならTシャツや靴下などのアパレルや土産品、職域内であればスナック菓子のほか、弁当類の販売も可能です。

24時間体制の物流拠点など、福利厚生の観点からもコンビニ出店が求められるケースは少なくありませんが、人手確保という問題もあり、出店が困難であることが珍しくありません。TTG-SENSEはこうした社会課題の解決においても大きな役割を果たすことが期待されます。

TTG-SENSE SHELF(ティーティージー センス シェルフ) イメージ画像

TTG-SENSE SHELF(ティーティージー センス シェルフ)

クラウドPOSでいつどこからも売上を確認

飲食店ソリューションで大きな注目を集めたのは、この3月に発表された次期飲食店向けクラウド型POS「FSlegatony(エフエスレガトニー)」です。東芝テックはすでにモバイルPOSレジ「POSasy」を通しクラウド型POSシステム提供を開始していますが、こちらは汎用ハードウェアの利用を前提とした、必要最小限の機能を絞り込んだサービスという位置付けになります。

それに対し「FSlegatony」は専用POS筐体や飲食店向け無線オーダーシステム「OrderVelocity(オーダーベロシティ)」など、当社製ハードウェア・システムとの連携が可能。フードデリバリーやモバイルオーダーなどの外部サービスを経由した注文を一元管理する、飲食店向け注文連携サービス「OrderLinkage(オーダーリンケージ)」連携も含め、フルスペックのPOS機能をクラウド環境で提供することが大きな特長になります。

従来のクラウド型POSは、導入時の初期費用が抑えられるメリットがある一方、汎用タブレットやプリンタをハードウェアとして利用する関係上、機器トラブルが生じた際に店舗側の負担が大きくなることが避けられませんでした。堅牢性と24時間365日のサポート体制で定評がある東芝テック製ハードウェアを基盤にしたクラウド型POSは、この問題を解決し、POSシステムのクラウド移行において大きな役割を果たすことが期待されます。

クラウド型POSのメリットはそれだけではありません。店舗の売上情報をオーナーや本部側がリアルタイムで把握できる点もその一つ。売上データ分析やマスタ作成も可能なため、店舗側の負荷を軽減すると共に、状況に応じた経営判断も本部側で迅速に行えます。

常に最新機能がサブスクリプション方式で利用できる点も大きな特長です。オンプレ型のPOSシステムの場合、ソフトのバージョンアップを実行せずに運用を続けることも少なくありません。クラウド化はこうした課題の解決においても大きな意味を持ちます。

2024年夏の発売を予定する「FSlegatony」のUI画面は、先行する「POSasy」を踏襲。店舗規模や業態に応じて、2種類のクラウドサービスをスムーズに使い分けることができます。

FSlegatony(エフエスレガトニー) イメージ画像

FSlegatony(エフエスレガトニー)

店舗の世界観に溶け込むRFID決済ソリューション

専門店ソリューションの目玉は、アパレル店を中心に普及が進むRFID決済の可能性を大きく広げる「シールドレスチェックアウト」(参考出展)でした。

アパレル業界の場合、特に製造~販売を垂直統合するSPA業態と上流~下流の商品管理が効率的に行えるRFIDの親和性は以前から指摘されていますが、一方で店舗へのRFID決済導入には課題も少なくありません。その一つが誤読を巡る問題です。

読み取りに電波を利用するRFIDの場合、誤読防止には決済用スペースと売場を切り分けるなどの工夫が必要になります。特に小型店舗の場合、それによる店舗デザインの制約はRFID決済導入のハードルにもなっています。

「シールドレスチェックアウト」の最大の特長は、脳の神経回路の仕組みをコンピュータで再現したDNN(ディープニューラルネットワーク)に基づくAIが、レジ台に置いた商品のRFIDだけを正確に読み取ることにあります。それにより、レジ台周囲にRFタグを付けた商品が多数陳列されているような環境でも、読み間違いを心配することなくRFID決済が行えるようになります。

また今回は六角形のフラットなデザインのレジ台を参考出展していますが、レジ台デザインの自由度が高まる点も重要なポイントです。アパレル専門店の場合、店舗デザイン全体を通した世界観の提示が重要な意味を持ちます。「シールドレスチェックアウト」の特長は、今後のRFID普及において大きな役割を果たすことが期待されます。

シールドレスチェックアウト イメージ画像

シールドレスチェックアウト

店舗のIT化を縁の下で支援東芝テックのBPOサービス

小売や飲食の現場で多様なIT機器が活用される状況は、システムによる省力化に貢献する一方、その管理は新たな負荷につながっています。

システム障害への対応では、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなど、多様な原因が想定されるトラブルの原因を特定する必要があります。店舗側でこの問題を解決する場合、専門知識を備えるスタッフが不可欠です。既存のハードウェアメーカーがサポート体制の見直しや縮小を進める一方、全国規模のサポート網を持たないベンチャー企業が台頭してきている中、店舗側の負担は今後ますます増大することが想定されます。

こうした中、あらためて注目されているのが、東芝テックが以前から提供するマルチベンターで製品保守を行うBPOサービスです。切り分けの必要なく、サービスデスクに連絡することでワンストップのトラブル対応が実現することがその理由。それを支えるのが、24時間365日のサポートを全国展開する東芝テックの保守サポート体制の存在です。店舗のIT化ではダウンタイム削減も重要な課題の一つです。東芝テックのBPOサービスは、店舗のIT化においてより大きな役割を果たすはずです。

BPOサービス イメージ画像

BPOサービス

リテールテックJAPAN 2024では、アンケートにお答えいただいた来場者にノベルティをお渡ししておりましたが、その回答方法にバーコード・QRコードのほか、値引きシールなどの画像認識も可能な東芝テックのスキャナが活用されたことも注目ポイントです。

画像認識技術の普及が進む中、画像読み取り機能を備える東芝テックのスキャナは今後、多様な用途への活用が期待されます。

画像認識を利用したアンケートとノベルティ(オリジナルエコバッグ) イメージ画像

画像認識を利用したアンケートとノベルティ(オリジナルエコバッグ)

東芝テックブースではそのほかにも、さまざまなソリューションが紹介され、連日多くの人々で賑わいました。東芝テックが提案する未来の買い物体験の実現も間もなくのことかもしれません。