Z世代を中心に浸透する新たな消費スタイル

2024年5月23日

流通トピックス

■業種・業態:小売業  
■キーワード:体験/コト消費/サブスク/エシカル消費

スーパーマーケットの看板イメージ画像

今後の消費を支えるZ世代(1990年第後半〜2010年生まれ)。その消費スタイルについて関心が高まっています。今回は、Z世代に代表されるサブスクリプション、コト消費、エシカル消費の三つ観点で考えてみます。

お金の使い方は無駄を省く、体験、エシカルへと移行

バーチャル空間でのショッピングのイラストイメージ画像

電気料金や食料品など生活に不可欠なインフラに加え、輸入にたよるあらゆる商品の値上がりが続き、深刻なインフレによる節約志向が高まっています。必要なときに必要な分だけ利用するという、無駄を省こうという意識が高まり、サブスクリプションが広がっています。

また、よく言われるモノ消費からコト消費への転換が顕著で、イベントやレジャーなどへ支出が増えています。これはZ世代に限定されるわけでなく、旅行、健康そして学びへの支出が伸びています。

こうしたことから、飲食店や小売では、小売の意味のリテールとエンター底面とを掛け合わせたリテールテインメントを重視する店があらわれ、そもそもモノを売らないショールーミング型の店舗が出てきています。

そして、商品やコンテンツの背景にある思いやストーリーを重要視する、エシカル消費を強める志向が強まっているといわれます。

細分化され広がるサブスク

バーチャル空間でのショッピングのイラストイメージ画像

サブスクには大きく「製品/サービス提供タイプ」と「購買支援タイプ」に分かれます。前者は、さらに①補充型、②キュレーション型、③利用券型と分類できると考えています。

  • は、日々消費する商品を決まったタイミングで届けるサービス。常に必要となるものですので、注文のし忘れや買い忘れの防止に役立ちます。
  • は、月1回程度の頻度で、顧客に適した商品を箱詰めして届けるサービスです。コスメやアパレルなど、自分に合うものを知りたい、いろいろ試したいというニーズに応えてくれます。
  • は、製品を所有せず一時的に利用できるサービス。高額で購入にためらう場合でも、レンタルという形で利用することができます。

購買支援タイプというのは、送料無料や即日配送、返品対応など、買物をスムーズにするサービス。頻繁に利用する店であれば、そうした商品購入に付随するサービスがあることで、利用メリットを感じることができます。

<サブスクリプションサービスの分類>

製品/サービス
提供タイプ
補充型
  • 日々消費するサプリ、プロテイン等を 決まったタイミングで届けるサービス
  • 注文のし忘れを防げる
キュレーション型
  • 月1回程度の頻度 で顧客に適した商品 (コスメ/アパレル等)を箱詰めして届けるサービス
  • 適した製品を選ぶ手間が省ける
利用権型
  • 製品を所有せず、一時利用することが出来るサービス
  • 高額な製品を利用することも可能
購買支援タイプ
  • 無料・即日配送、返品対応等の買い物をスムーズにするサービス
  • 頻繁に利用する店であればメリット大

アメリカのサブスクの状況

メタバース空間にてショッピングしている女性のイラスト画像

ではアメリカの状況を見てみましょう。

製品/サービス提供タイプの①補充型では、アメリカのディスカウントスーパーのT社の例をご紹介します。継続購入するプロテインやサプリなどの定期購買を、割引によって誘引しています。店舗では、定期購買によってどれだけ得になるかを表示し、サブスク会員になってもらった後は、アプリ上で管理します。オン・オフラインチャネルを活用した、定期購買型の販促です。

また、ペット用品のECショップCでも、補充型サブスクサービスを提供しています。ペットフードは定期購入するものですので、サブスクと相性が良いようです。サイト上では、通常の検索結果にも定期購買との価格差を表示し、お得感を訴求することで入会を勧めています。

②キュレーション型サブスクの先駆けといえるのが、10年からスタートしたBです。会員申込時に美白、シミ予防といった美容に関するゴールを設定することで、適したランダムな商品が毎月届く仕組みです。

③利用券型のサービスで代表的なのが、家庭内エクササイズ製品とオンラインフィットネスを合わせたPがあります。アメリカでは知名度が高く、高価な機器を月額でレンタルすることができるサービスです。ただレンタルするのではなく、トレーナーによるトレーニングメニューを閲覧することも可能です。バイクに設置された画面で、人気講師による指導を受けることができる点が、ユーザーの継続を促す役割にもなっています。

また、R社でも、服を持たずに楽しめるサブスクサービスを展開していて、月額89ドルで最大5アイテムの服を借りることができます。

そして、世界最大の小売業W社では、すでに3000万人を超える会員を獲得していて、無料配送、返品対応だけでなく、旅行の予約や動画ストリーミング、ガソリンスタンドの割引など、さまざまなメリットが得られます。

インフレ下ということもあり、各社ともサブスク加入でどれほどの経済的メリットがあるのかをアピールしています。「メンバーシップになると、年間○ドル安くなる」といった文言をサイトトップや購入画面に持ってくることで、興味をひくように工夫しています。

商品との出会いへの回帰で出現した“モノを売らない店”

メタバース空間にてショッピングしている女性のイラスト画像

これまで実店舗は、その場で商品を手に取り試して購入するという役割が主でしたが、O2Oが浸透してからは、実店舗の役割の一部がウェブへと移行しました。そしてコロナ禍では、よりウェブでの商品検索、購入が主流となり、受け取り時に実店舗を活用する流れが一般化しました。

そして今、単にモノを買う消費からコト消費へ移行しているという背景から、実店舗で商品を受け取りながら体験したいというニーズが高まっています。商品との遭遇への回帰が進んでいるといえるようです。

物を売らない店の代表的なブランドは、ニューヨーク発のSです。2018年に創業したD2Cブランド向けのサービス強化型小売で、現在2店を運営しています。2022年にオープンしたニューヨーク店では、各ブランドの商品を、キッチンやダイニングといった生活シーンに応じたレイアウトをしているのが特徴です。商品をただ陳列するのではなく、ライフスタイルに合わせた使い方を提案しているのです。また、試食や商品体験ワークショップの開催により、一層インタラクティブな提案を行っています。

商品の購入はQRコードを読み取り、ECへ遷移。店舗では商品の展示を行うだけとなっています。

またアメリカの大手百貨店Nでは、商品受取・返却、試着、お直しのサービスに特化した店を出店しています。出店エリアは住宅街で、生活動線上にあることで、顧客との接点づくりを重視した店舗となっています。物販を行わないため、在庫管理や品出し作業がなく、スタッフは接客に専念できるメリットもあります。

また、体験に重きを置く玩具店Cでは、森の中をイメージした空間や、子どもが遊べる遊具などを設置しています。また、イベントスペースでは子ども向けの催しが定期的に行われており、その参加費が収入源となっています。

購買に強い影響を与えるエシカル消費とは

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ある調査によると、アメリカではエシカル消費の認知が67%に達し、それが購買にも強い影響を与えていることが分かっています。一方で日本では言葉や意味を知らない人が54%と半数もおり、まだまだ認知が低い状況といえるでしょう。

そもそもエシカル消費とは、地域の活性化や雇用なども含む、人や社会、環境に配慮した消費行動を意味します。例えば、環境への配慮では、エコマーク表示や有機農産物、シェアリングなどがあり、社会への配慮では障がい者が作った商品、フェアトレード商品、地域への配慮では地産地消、応援消費などが上げられます。

アメリカのスーパー各社では、持続可能なモデルやFLOHON(Fresh、Local、Organic,Healthy,Natural)を意識した品揃えなどが進んでいます。例えば、Wでは、店舗屋上に屋内農園を併設し、そこで栽培した作物を販売しています。また、各社、生鮮日配を中心にオーガニックが根付いており、地元生産の商品などの扱いが増えています。

アパレルブランドも各社意欲的に取り組んでいます。

Mでは、拠点であるサンフランシスコで生産されたローカルな素材を使用する他、不要になったTシャツを持ち込むと、1枚5ドルのディスカウントを受けられるようにしています。

またEでは、素材のみならず、工場や物流などの労働環境にも配慮。無理のない持続可能な製造を意識しています。さらに、ECサイト上には、製品別に素材費、人件費、輸送費など、どこにどれだけのコストが掛かっているかを開示しています。

これにより、労働者にきちんと対価を払っているかなどが分かるようになっています。

(文)データコム株式会社
取締役 経営推進部部長 小野寺裕貴
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2024年1月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。