レシピや食材注文もできるスマート家電

2024年5月23日

海外流通トピックス

■業種・業態:スーパー  
■キーワード:タッチパネル/オンラインカート/モバイルアプリ/カスタムレシピ

スマート家電のイメージ画像

ネットに繋がるレンジや冷蔵庫などのスマート家電製品とECの連携が進んでいます。家電製品のタッチパネルで料理を選ぶと必要な食材をネットで購入できたり、冷蔵庫の在庫をもとにAIが料理提案するなど、スマート家電の進化によってスーパーマーケットの販売方法がさらに広がる可能性が出てきています。

レンジから、レシピの食材を直接注文

電子レンジのイラスト画像

中国家電メーカー系のG社は、2023年12月に米国大手スーパーマーケットK社と提携して、スマート家電から直接食料品を購入できるようにしました。G社よると、15万人以上の消費者がこの機能と互換性のある機器を所有しているとのことです。

G社のWi-Fi接続されたレンジやスライドインレンジ(上に3口コンロが付いているレンジ)のタッチパネルでK社が提供する数多くのレシピが見られ、必要な食材や調味料が購入できるようになります。レシピ機能は配達、またはKの店舗での受け取りのためにレシピの材料を注文する機能と統合されているというわけです。

レシピには季節ごとのものもあり、ユーザーを飽きさせません。例えば、チキン丸焼きのタコスやソーセージ入りパンニョッキなどの便利な食事から、ポークロインのアップルロールやセイボリー ブレッドなどの大勢で楽しめるホリデー料理まで、誰もが楽しめる料理が揃っています。

使い方は、タッチパネルの中のレシピを選んで、気に入ったものを探して、料理の写真、材料のリストと作り方を確認します。これで良ければ、材料のリストにある「カートに入れる」ボタンを押すと購入できます。そして「OK」ボタンを押せば終了。これでK社のオンラインカートに商品を入れることができるというわけです。必要なすべての材料や調味料を揃えることができます。

この機能を使うには、最初にタッチパネルに表示されたQRコードをスマートフォンでスキャンして、K社のネット通販サイトにサインインする必要があります。

材料が届いたら、レシピに戻り、作り方の指示に従い、ボタンを押していけば料理ができ上がります。K社が通販で提供しているのは、あらかじめレシピに合わせて必要な分量の食材や調味料のみがセットされ、食材を洗ったり皮をむいたりする手間もない「ミールキット」です。K社では、以前からサブスクリップション型のミールキットのオンライン販売を行っていたので、G社との連携はスムーズだったようです。

他のスーパーや家電メーカーの動向

タブレットを見ながらくだものをカットしているイメージ画像

こうしたサービスは、スーパーマーケット経営者の間で注目を集めているようです。消費者がデジタルでレシピを操作し、オンラインで食料品を注文できるようにするサービスが広がる可能性があります。

他のスーパーでも、広告会社のレシピネットワークを利用するユーザーが、いくつかのバナーの商品をオンラインカートに直接入れることを許可し始めたり、食料品を購入するためにECサイトと連携する買い物可能なコンテンツを開発したりしています。

そして、G社はショッピング可能なレシピ機能を採用している唯一の家電企業ではありません。たとえば、韓国系のS社では、冷蔵庫やレンジに表示されるレシピで使用する材料を発注するツールが搭載されています。ドイツ系のV社のマルチクッカーTにも、ショッピング可能なレシピ機能が組み込まれています。

なお、韓国系のS社は、スマート家電に力を入れていて、特に冷蔵庫は2016年から取り組んでいます。テクノロジー見本市の「CES 2024」では、庫内カメラの映像をAIで自動認識させることで、フードリストを自動生成する機能を実装したりするなどして、冷蔵庫に保管中の食材を中心とするレシピを提供する冷蔵庫を発表しています。

モバイルアプリではカスタムレシピを生成

スマホを操作している画像

G社は中国系企業ですが、もともとは1907年に創業した米国が誇る巨大企業の家電部門であり、米国の全家庭の50%に設置されているといいます。同社の製品には、冷蔵庫、冷凍庫、調理用品、食器洗い機、洗濯機、乾燥機、ワインクーラー、エアコン、水ろ過システムがあります。

これらの家電は、Sモバイルアプリと連携しています。2023年8月から提供しているアプリには、Google Cloudの生成AIを使用した2つの革新的な機能が含まれています。

1つ目は、ユーザーの食べ物の好みや、冷蔵庫にある食品に基づいてカスタムレシピを生成する機能です。例えば、午後6時半になっても夕食の献立が決まらずに、冷蔵庫にはランダムな食材がいくつか入っているときに、ユーザーは、レシピのカテゴリーと料理の種類を選択し、利用可能な材料を入力し、食事の好みを含めることができます。

そして、材料、説明書、さらには写真付きのカスタマイズされたレシピを受け取ることができるというわけです。

ユーザーは、スマートフォンのアプリストアでSアプリをダウンロードし、ユーザーアカウントを作成することで、家庭のG製品がネットに接続されていない場合でも、いつでも使用可能になります。

もう1つの機能は、会話型AIインターフェイスであるSアシスタントです。購入した製品に関連する質問をすると、すぐに回答が提供されます。水ろ過システムであれば、浄水フィルターの交換に関する推奨事項から掃除のヒントまで、迅速かつ正確な回答を提供します。ユーザーは、取扱説明書を保存したり、関連するページを見つけたりする手間がなくなったというわけです。

G社は、ユーザーの役に立つために、Google Cloud の最先端の AI ツールを使用して、これらのサービスを迅速に開発。いくつかのアップデートも計画しています。例えば、カスタムレシピのレビュー機能は2023年秋後半に開始され、ユーザーがレシピを評価するようになれば、ユーザーの利益のためにAIモデルをさらに強化できるようになります。

2024年1月には、権威あるIoT企業、製品に贈られる賞をG社とSモバイルアプリの2つが受賞しています。消費者のさらなる利便性の向上に努め、卓越性のベンチマークとして不動の地位を築いていくとG社は語っています。

(文)経済ジャーナリスト 嶋津典代
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2024年2月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。