外食で加速する配膳ロボットの導入
ロボットが動く店内の光景があたりまえに!

2024年6月24日

国内流通トピックス

■業種・業態:飲食店  
■キーワード:インバウンド/ファミレス/AI技術/作業効率アップ

配膳ロボットのイラストイメージ画像

日常生活が戻り、インバウンドの追い風もあって業績回復が続く外食業界。その一方で、人手不足は深刻化しています。求人難から休業したり営業時間を短縮する店が出て、さらに都心では時給1500円近い募集も見られる状況の中、導入が広がっているのが配膳ロボットです。今回は、飲食店がロボット導入を加速させている背景や効果について、実際に導入された店舗の声を紹介します。

ファミレスのスタンダードな姿に

大手ファミリーレストランチェーンのイラストイメージ画像

某大手ファミリーレストランチェーンでは、8割近い店舗に配膳ロボットが導入されました。最初はロボットが動き回る店内に違和感を感じた利用者も、いまでは普通の光景として受け入れ、小さな子供は目を輝かせています。

配膳ロボットの実験導入が始まったのは、かれこれ10年近く前です。当初はロボットが走行進路を認識するために床にテープが貼られ、走行音も今に比べて大きく、正面の障害物を検知して停止はしても避けるような機能は備えていませんでした。

どちらかというと、自動で配膳すると言うよりも、配膳やバッシングの作業を補助するのに利用され、人とロボットが一緒に動くというぎこちなさがありました。

当時、実験導入を進めていたあるステーキレストランでは、「配膳、下膳の作業が楽になるというよりも、多くの料理をいっぺんに運んだり、サラダバーに野菜を補充する際にワゴン代わりに使っています」と言い、実際、ロボットはフロアの片隅に放置されているような状況でした。

それが大きく代わったのは、AI技術を導入したかわいらしい外観の配膳ロボットが登場してからでしょう。走行進路を示す床のテープは不要になり、AIカメラが障害物を検知して待機したり避けたりして自走します。作業補助をするロボットから人の代わりになるロボットへ進化し、今ではロボットだけが動き回り、料理はセルフでロボットから受け取る光景は普通になりました。

配膳ロボットは、採用難、人手不足が続く中、セルフレジと合わせて店になくてはならない存在になりつつあります。

専門料理店にも導入が進む

地方都市とんかつ専門店のイメージ画像

一口に飲食店と言っても業態は様々です。カウンター中心でテイクアウト比率の高いファストフードや、ハイタッチな人的サービスを重視するディナーレストランでは、配膳ロボットを導入する傾向は見られませんし、その必要もないかもしれません。

配膳ロボットの導入が進んでいるのは、ファミリーレストランなど日常的外食を提供する大型店舗が中心ですが、このところ中規模の専門料理店でも導入が始まっています。

地方都市にとんかつ専門店を展開するG社では、働き方改革関連法が施行された2019年頃から「今後、人口が減ることは明らかであり、同時に働き手も減るという先を見越して、今取り組んでおくべきだと考えました」と労働環境の改善を進めるために、セルフオーダーやセルフレジを活用。

折しも新型コロナウイルス感染拡大もあり、コンタクトレス化をさらに進め、お客様だけでなく従業員も安心して働ける環境作りを進めるために配膳ロボットも追加導入しました。

本来の目的は、ITを活用することで働く環境整備と生産性を図り、結果としてスタッフの賃金をアップすることが目的だといいます。

「当初、セルフオーダーや配膳ロボットなど、お客様と接する部分のシステム化には抵抗がありました。接客による人との関わりが外食の楽しみでもあるのに、システム化が進み人との関わりが少なくなった店舗を飲食店とよべるのかという疑問があったのです。

一方で、昔は呼び出しベルにも抵抗があった高齢者も、今はベルがないと不便に感じるまで意識が変化しています。時代とともに進化するテクノロジーに合わせ、お客様の反応も変わってきているので、セルフ化と友に配膳ロボットの導入に踏み切りました」といいます。

スタッフの負担が大幅に軽減

テーブルへの配膳をスタッフの手でおこなうイメージ画像

G社では、前述の通り、当初は外食本来の楽しみが薄れてしまうことを危惧し、配膳ロボットの導入を躊躇していました。しかし、外食業界の経営者の集まりなどで情報交換する中で、飲食店におけるロボットの必要性を強く感じたと言います。実際に導入してみると、スタッフからも好評で仕事が楽になった、作業効率が上がったという声が多く聞かれるとのことです。

特に利便性を感じている部分がバッシングの作業です。G社の店には座敷席もあることから、これまではバッシングの際に何度も靴を着脱し、段差を上がり下りする動作が必要でした。配膳ロボットを使うようになって、通路にロボットをスタンバイさせておけばまとめて運べるため、最小限の動作で片付けられるようになったのだといいます。

こうした業務改善で特に年配スタッフから「楽になった」との声が多く出ているとのこと。高齢者でも働きやすい環境づくりができたことで、今後の高齢者採用も期待できるといいます。

一方で、一部のお客様からサービス低下だとの声が出たのも事実です。そのためスタッフに余裕がある時は、配膳ロボットの後をスタッフが付いて歩き、テーブルへの提供はスタッフの手でおこなうなど、ロボットに任せっぱなしにならないように配慮しています。それでも、重いお膳を運ぶ必要がなくなったので、重い御膳を運ぶ配膳、下膳でのスタッフの負担は大幅に改善されたと言います。

配膳ロボットの導入による効果が見えてきたことで、配膳ロボットを増やすことができれば、さらにスタッフに余裕ができ、より質の高いサービスの提供につながるとの期待がかかります。

月刊「飲食店経営」 編集部
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2024年3月時点のものです。
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