コロナ禍以降の予約管理システムのトレンド
2024年6月24日
国内流通トピックス
■業種・業態:飲食店
■キーワード:チャンスロス/コストコントロール/送客手数料/自動配席
数年前まで、飲食店を予約するときは電話が中心でした。しかし、近年、そうした状況が変わり、飲食店ではネット予約が当たり前になっています。その流れを牽引しているのが「予約管理システム」の広がりです。コロナ禍以降、新たにネット予約を始めたり、予約管理システムを別のサービスに置き換えたりするケースが増えています。そうした動きを探っていくと、取りこぼしをなくして集客と売上を最大化したいと考える飲食店の狙いを見て取ることができます。背景には「2回転目以降のニーズの喪失」と「コストコントロールの最適化」という二つの問題が関係しています。
チャンスロスを減らすために
まず「2回転目以降のニーズの喪失」でいうと、コロナ禍が落ち着いたものの2次会、3次会のニーズが十分に戻っていません。年末年始の宴会で少し盛り返したというデータがありますが、19年比でいうと、まだ心許ない数字です。そういった現状を踏まえると、ある程度の売上を確保するには1回転目で最大の集客を実現しないといけません。そこでネット予約の必要性が高まっています。
もう一方の「コストコントロールの最適化」は、人件費や原材料の高騰を受けて、重要性が増しています。そもそも飲食店は利益額が低い商売なので、コストをうまくコントロールしないと利益は上がりません。
しかし、材料費や人件費などのコスト高が進むに連れて、その難易度が上がっているのも事実です。そこである程度の集客の見込みを立てて人材と食材のロスが起きないようにコントロールする必要が出てきました。そこで予約管理システムを活用し、ネット予約を積極的に取りにいく動きが加速していると考えられます。
今選ばれているサービスの特徴
環境変化を受けて、これまで以上にネット予約の必要性が高まっていますが、どの予約管理システムでもいいというわけではありません。そこにも時代の変化を踏まえてトレンドがあります。今、選ばれているのが、グルメサイトが運営する以外のサービスです。ネット予約が主流になったとき、予約管理システムといえばグルメサイトを運営する会社が提供するものが一般的でしたが、そこに変化が出てきています。その理由は大きく二つです。
① 送客手数料
ここ数年、飲食店の間でグルメサイト離れが起きています。背景にあるのが送客手数料の高さです。原材料費などの高騰で少しでもコストを削りたい中、毎月、それなりの金額となる送客手数料は無視できません。宴会自体が減少し、少人数のグループで飲むことが多くなっているので、必ずしもグルメサイトに有料で掲載をしないといけないといった必要性もなくなりました。
そこで多くの飲食店が力を入れているのがSNSやGoogleからの予約です。「Google ビジネス プロフィール」の更新やMEO(Map Engine Optimization:マップ検索エンジン最適化)対策を行い、そこからの集客に成功している飲食店がかなり出始めています。
ただ、SNSやGoogleなどでお店のことを知った後、予約をするのがグルメサイト経由では意味がありません。そうした背景もあり、お店専用の予約フォームを作れる予約管理システムのニーズが高まっているのです。
② 自動配席
予約管理システムを導入したからといって、予約の管理業務がゼロになるわけではありません。特にグルメサイトに紐づいた予約台帳だと、自社が運営するグルメサイト経由の予約は自動で配席まで行ってくれますが、それ以外の媒体の予約はお店側で取り込む必要があったりします。
結果として、営業中も予約管理システムを操作する必要があり、席の在庫管理がスムーズにいかず、即予約を取ることができないケースも少なくありません。こういった事態を防ぐためにも、予約サイトとの連携先が多く、自動で配席や席の在庫管理を行ってくれる予約管理システムが人気を集めています。
そうしたシステムだと基本的に営業時間中は、予約台帳を操作する必要がありません。スタッフの負担を減らせて、予約は最大化できるため、飲食店にもたらさせるメリットは大きいのです。
今後のトレンドは
コロナ禍以降のインバウンド需要の戻りを受けて、海外からのお客様を取り込む上でも、予約管理システムの存在感は高まっています。インバウンド客に対する対策は、旅マエと旅ナカで異なります。
まず旅マエで効果的なのが、口コミサイトとSNSです。海外のお客様の場合、来日する数ヶ月前に予約を取るケースが少なくありません。ですので、ここを取り込むことができたら、さらに安定した経営を実現させることができるでしょう。
ただ口コミサイトの一部では、日本のグルメサイト経由で予約を受け付けることができますが、前述の通り手数料がかかってしまいます。そのため自社ホームページに誘導し、そこでさらに詳細な説明をしてから予約を受け付ける流れをつくっている飲食店も多くあります。
旅ナカで存在感を発揮するのはGoogleマップです。現在いる場所の近くから気になるお店を探して、来店するインバウンド客もかなり多く、そのときGoogleでそのまま予約ができる導線を作れていたら、インバウンド客をスムーズに取り込むことができるため、対策を強化する飲食店が増えています。
そして今後、予約管理システムの生命線になりそうなのがAIによる電話対応です。どんなに予約システムが普及しても、予約の100%がネット予約の飲食店はほとんどありません。少なからず電話での予約が残っています。しかし、電話がかかってくるのはかかって飲食店の忙しい時間帯であるケースが多く、ランチ帯や1回転目のピーク時にかかってきて、電話が取れずにチャンスロスになってしまうこともあります。
そもそも電話対応自体、高いスキルが求められるため、誰もができる業務ではありません。確認漏れやお客様との相違があったら、それがそのままクレームにつながることもあります。
こうした事態を解消するため、予約管理システムと合わせて、AIによる電話対応のサービスも提供するベンダーが増えてきています。人手不足が常態化する中で、電話対応の負担も増しているからこそ、今後、AIによる電話対応も当たり前になっていく可能性も高いと考えられます。
月刊「飲食店経営」 編集部
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭
※当記事は2024年3月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

