高級レストランのワインはなぜおいしい?
数ある商品やサービスの中から、私たちはなぜそれを選んでしまうのか?

2024年6月24日

流通お店づくりトピックス

■業種・業態:飲食店  
■キーワード:確証バイアス/経験/顧客満足度

スーパーで1980円の値札が付いたお寿司を手に持っている女性のイラストイメージ

欲しい情報だけを信じる「確証バイアス」

グラスに注がれた一杯の赤ワイン。何の説明もなく飲んでもおいしいと感じるかもしれませんが、「フランスの有名なワイナリーの希少ワインで、1本数万円します」のように、飲む前に「貴重で高価なワイン」という情報が与えられると、さらにおいしく感じたりしませんか。これは自分が欲しい情報だけを探し、信じるという「確証バイアス」の一種です。

2種類のワインを飲み比べ、どちらが1本100万円する超高級ワインかを当てたり、プロが弾くバイオリンを聴き比べ、1億円以上するストラディバリウスの音色を当てたりする人気のテレビ番組では、半数ぐらいの人が答えを外します。つまり、その分野の専門家でもない限り、一流のものとそうでないものの区別は、なかなか難しいというのが現実です。

経験するすべてが顧客満足度に影響

確証バイアスは日常生活の様々な場面で顔を出します。例えば、面接官が採用試験において「この人は一流大学を卒業しているから、優秀に違いない」と思い込んだり、経営判断において自分が立てた仮説に合ったデータや事実ばかりを集めてしまい、正しい判断ができなくなったりするケースが知られています。

小売業やサービス業では、確証バイアスを知ることでお客様の満足度をより高めることができます。例えば、飲食店は料理の味だけでなく、店内のインテリアや雰囲気、食器、ウエイターのマナーなど、そこで体験するすべてがお客様の満足度に影響します。店内の雰囲気がよく、接客も心地よければ、実際の何倍もおいしいと感じるかもしれません。

ただし、注意すべき点もあります。消費者は商品やサービスが高額であるほど高い期待を抱くため、実際の経験が期待値を下回ると顧客満足度は大きく下がります。実際に購入や体験をしてみたら〝がっかり〟とならないよう、価格に見合った価値を提供する必要があります。

      

監修:阿部 誠(東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)

※当記事は2024年4月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。