チームで目標達成!
仕事を楽しんで成果をあげる
2024年6月24日
流通お店づくりトピックス
■業種・業態:スーパー/飲食店
■キーワード:モチベーション/エンゲージメント/5コモンパーパス/C
売上目標の達成やお客様に選んでもらえる店づくりには、従業員が高いモチベーションを持ち、全員一丸となって課題に取り組むことが大切。従業員のやる気を高めるためのノウハウ、チームで目標を達成するための組織づくりなどについて紹介します。
「エンゲージメント」が高いと離職率が大幅に低下
ハーバード大学でイノベーションを研究するトニー・ワグナーによると、仕事へのモチベーションが高く、社会に貢献する人は、「遊び」→「情熱」→「使命感」という3ステップを踏んで仕事に取り組んでいることがわかっています。最初はまるで遊んでいるように楽しみながら仕事を行う。次にそれが情熱に変わり、やがて「世の中の役に立ちたい」という使命感の域にまで達します。
仕事を楽しめない部下に向かって、「これは社会的に意義のある仕事だから頑張れ!」とハッパをかけるだけではモチベーションは上がりません。最初に「楽しむ」という段階があって初めて仕事に対する情熱が生まれ、それが使命感に発展するのです。
近年、人材開発の分野で注目されている言葉に「エンゲージメント」があります。英語で「誓約」「約束」「契約」などの意味があり、「深いつながりをもった関係性」を表します。人材開発においては、「働く企業に対する従業員の愛着や貢献の意思」を意味します。エンゲージメントが高い状態では、楽しい、気分がよいなどのポジティブな感情が続き、生産性も高まります(図1)。また、離職率が大幅に低下するという研究結果もあります(図2)。
ポジティブ感情が多く、生産性が高い状態が「エンゲージメント」。一方、生産性は高いけれど、ストレスが多いと「バーンアウト」、つまり突然やる気を失ってしまう燃え尽き症候群になる可能性がある。楽しいけれど生産性が低いのが「カウチポテト」で、おしゃべりしながらだらだら仕事をするようなイメージ。そして生産性が低く、ストレスが多いのが、いわゆるブラック企業に多い「ブラック」だ。
従業員のエンゲージメントが強い企業と弱い企業を比較すると、売上、利益、お客様の評価、欠勤率、安全上の問題など、様々な点で差異が表れることがわかっている。特に離職率は、エンゲージメントが特に強い従業員と特に弱い従業員とでは約8倍の開きがある。
仕事を楽しむことで内的モチベーションが向上
では、どうすれば従業員に仕事を楽しんでもらい、エンゲージメントの高い状態をつくり出せるのでしょうか。
モチベーションには外的モチベーションと内的モチベーションの2つがあります(図3)。外的モチベーションは、上司からほめられる、給料が上がるなど、外からの要因によって変わるモチベーションのことです。それも重要な要素ですが、外的モチベーションは自分でコントロールできず、長続きしません。一方、内的モチベーションは興味や関心が起点になっており、「楽しいからやる」「好きだからやる」といった自分の内側から湧き起こるモチベーションです。高いエンゲージメントは、この内的モチベーションから生まれます。
具体的手法として、上司はまず部下一人一人に「仕事で何をやっているときが楽しいか」「自分の仕事の中で夢中になれる部分は何か」を面談や対話を通して明らかにしていきます。次にその時間や要素をどうしたら増やせるか、部下といっしょになって考えます。
たとえば、「商品が棚にきれいに並んでいるのを見るのが好き」という部下なら、お客様を引きつける魅力的な陳列方法を考えてもらいます。「お客様と雑談しているときが楽しい」部下なら、品出しの仕事を減らし、接客に携わる時間が増えるよう調整するなどが考えられます。大切なのはスタッフの「楽しい」「充実感を感じる」と思える時間が増えるよう環境を整えてあげることです。
自らの興味や関心から生まれる「内的モチベーション」は長続きし、エンゲージメントを高める要因となる。一方、報酬や人からほめられることによる「外的モチベーション」は自分ではコントロールできないため、維持することが難しい。
自分の「強み」を生かすと「遊び」が「情熱」に転化
好きなこと、楽しいと思えることをひたすらやっていると、それがいつの間にか得意になり、自分の「強み」になります。自分の強みを具体的に意識できるようになると、自己効力感、つまりは自信が増し、さらに仕事を楽しめるようになります。これが次の段階、「情熱」への転化です。
アメリカの世論調査会社ギャラップ社の調査によると、「自分の強みを生かして働いている人は、仕事に行くのが楽しいと感じ、職場の同僚ともポジティブにかかわっている。自分はよい会社で働いていると満足し、毎日より多くのことを成し遂げていると感じる」という結果が出ています。また、強みを生かすことにフォーカスしている人はそうでない人に比べ、「自分は素晴らしい人生を送っている」と答える人が3倍、「仕事に主体的にかかわっている」という人は6倍に上りました。つまり、上司が部下の強みを知り、それを仕事に生かせるようサポートすることが、生産性が高く、強いチームをつくることにつながります。
個人の「好き」「楽しい」が使命感や貢献感につながる
強みを生かし、情熱をもって働けるようになったら、いよいよ最後の段階、「使命感」です。使命感は、その仕事が自分の「天職」だと感じることから生まれます。天職だからといって、必ずしも高尚な仕事とは限りません。その仕事が「好き」「楽しい」「自分に合っている」「充実感や貢献感を感じる」と思えば、天職の可能性が高いといえます。しかし、天職だと思っても、その仕事が世の中にどう役立っているのかを実感できなければ、使命感を持つまでには至らないかもしれません。
情熱を使命感に高めるには、企業の理念・使命と個人の価値観が一致していることが不可欠ですが、企業理念が抽象的でわかりにくい場合もあります。そのときは、企業理念のどの部分に共感するかを対話や研修などを通じて考えてもらい、それを日々の仕事の中で発揮するにはどうすればよいかを探究させるという方法があります。
大事なことは個人の「強み」や「楽しさ」を最優先することです。使命感や貢献感もその延長で生まれることが多く、個人の価値観や大切にしていることが発展し、それらにつながるほうが本気になれます。
モチベーションが長く続く「5C」のサイクル
従業員のエンゲージメントが高い会社に共通して見られるのが、ギャラップ社が提唱している「卓越したチームの5Cモデル」です(図4)。
このサイクルを回すことでエンゲージメントやモチベーションが向上し、しかもそれが長く続くことがわかっています。
この5Cモデルの中心に位置づけられるのが「コモンパーパス(共通のゴール)」で、チーム全体の目標に相当します。「コネクション」は、従業員が共通のゴールであるコモンパーパスに共感することでつながっている状態を表しています。
その結果、従業員同士のポジティブな「コミュニケーション」が生まれ、互いに協力しあって仕事を進めます(コラボレーション)。そこで生まれた成果や個人の成長を互いに認め、称賛すること(セレブレーション)で、エンゲージメントやモチベーションがさらに高まります。
5Cの中で最初に行うことが、共通のゴールであるコモンパーパスの設定です。企業理念だけでなく、店舗や部署単位でもっと身近に感じられる目標をコモンパーパスとすることもできます。その場合は、スタッフみんなで話し合い、自分たちの中から出てきたものを設定することが、5Cをうまく回し、モチベーションの高いチームにする秘訣です。
監修:佐藤 真一(さとう しんいち)
株式会社アドファンス・ラボ代表取締役
※当記事は2024年4月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

