「無料」や「限定」に弱いのはなぜ?
数ある商品やサービスの中から、私たちはなぜそれを選んでしまうのか?
2024年7月22日
お店づくりトピックス
■業種・業態:小売業
■キーワード:損失回避性/タイムセール/バーゲン
人はできるだけ「損失」を回避する
「無料」という言葉には抗いがたい魅力があります。旬の時期に各地で開催される「サンマ祭り」には、無料で提供されるサンマを求めて大勢の人々が並びます。小売店の店頭などに試供品という名の無料サンプルが置いてあると、つい手に取ってしまいます。ほかにも、動画配信サービスの「無料お試し期間」やカード会社の「年会費無料」など、私たちが目にする商品やサービスには「無料」という文字があふれています。
人はなぜこうも「無料」という言葉にひかれるのでしょうか。理由の一つは負の価値をもたらす「損失」を完全に回避できるからです。タダ同然の10円で買った商品でも、気に入らなければ悔しい気持ちになりますが、無料ならばリスクはゼロ。経済的損失がないため、気になりません。
例えば、1,000円もらったときのうれしさと1,000円落としたときの悲しみを比較すると、同じ金額でも後者の方が心理的インパクトは大きいはずです。そのため、人はできるだけ損失を回避しようとします。これを「損失回避性」といいます。
本来以上の価値を感じてしまう時間や数量の「限定」
私たちが〝弱い〟もう一つの言葉が「限定」です。「100個だけの限定商品」「この春だけの限定カラー」などと言われると、それほど欲しくない商品でもつい手が伸びてしまいます。「希少性の法則」といって、人は数量や期間などを限定されると、その商品やサービスを希少だと認識し、本来以上の価値を感じてしまうからです。
チラシなどの広告でよく目にするのが、「3日間限定」「本日限りのサービス」といった期間を限定したタイムセールです。こちらは「その期間内に入手しないと損をしてしまう」という消費者の「損失回避性」にも訴えかけています。開店・閉店セールや各種バーゲンなども、こうした時間の限定性を利用した販促方法といえます。
監修:阿部 誠(東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)
※当記事は2024年5月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

