売価の見直しとマージンミックス
2024年8月19日
海外流通トピックス
■業種・業態:スーパー
■キーワード:荒利益率/売上構成比/トータル利益
円安が進み、ついに1ドル160円を突破しました。こうした円安や物流コスト増などを背景に、食品を中心に仕入れコストが上昇し、値上げせざるを得ないといった状況が続いています。消費者側も、エネルギーコストや賃料の上昇など、家計を圧迫する頭の痛い問題ばかりで、価格を見る目はシビアになっています。生活に欠かせない食料品の価格には特に敏感で、ディスカウントスーパーなどを買い回る消費者も増えています。こうした中、お店にとって頭が痛いのは、コスト増を吸収しなければならないため、値上げをしたいが客離れにつながらないか、という心配です。
値上げなどの売価変更の影響
「仕入れ価格が上昇しているのに、値上げせずに売り続けるのは難しい。しかし、値上げによって客離れにつがらないだろうか」。こうした声があちこちから聞こえてきます。
値上げはやむを得ないとして、お店は、どこまでが許容される範囲なのかを探りつつ、自店の販売動向や競合他店の価格設定も参考にしながら、売価の変更を行っています。もちろん、一律同額の値上げではなく、商品の特性や自店の売りを考えながら値付けを考えています。
こうした売価の変更の際に気になるのは、顧客の反応はもちろんですが、値上げした結果、トータルの利益がどう変わってくるかです。
利益の変動要因は、客数、買上点数、購買単価は当然として、売価変更による代替商品への移行や特売、セール待ちなど多様な要素が含まれるため、一体どの程度トータル利益が変わってくるかを予測するのは難しいものがあります。
売場を見ている経験からの判断も大切ですが、ある程度の見込みを立てることも必要でしょう。そこでオーソドックスな考え方ですが、マージンミックスについて簡単にご紹介します。
荒利益率と売上構成比から試算する
ここで紹介するのは、相乗積を用いた試算例です。商品それぞれの荒利益率と売上構成比を掛け合わせた数値が相乗積で利益の貢献度を示し、その合計がトータルの利益率になります。
そこで、価格据置き、値上げ、値下げをそれぞれ行った際に、売上の変化を予想しトータルの利益率を試算します。売上構成比の変化を予測するのは難しいですが、当てずっぽうで売価変更するよりも、試算したトータル利益を一つの目標として、売り方を工夫するなどが大切になります。
トータル利益を確保するために必要なこと
図表でお分かりの通り、荒利益率の高い商品の売上構成比を伸ばせば、トータルの利益率は改善します。逆に値下げしたような商品に売上が偏れば、トータルの利益率は減少することになります。
店としてみれば、荒利益率の高い商品を販売するに越したことはないわけです。そこで、販売する際の基本的なポイントを簡単に紹介します。
① POPなどを活用して商品の魅力をアピールする
POPは動かないセールスといわれるくらいに、商品PRに役立ちます。商品陳列棚の小さなPOPでも、見入ってしまうことがあるかと思います。飲食店のメニューブックを開いて、指さしPOPでオススメと書かれていると、つい注文してしまうこともあるはずです。
② 価格が高い方が品質が良いという心理を利用する
お客様は安い商品だけを目当てに買物に来るわけではありません。食品のように品質を判断することが難しい場合、消費者心理として、価格から品質を推察する機能が働くといわれます。
価格の高い商品と安い商品を並べると、一番価格の安い商品が最も売れるとは限らず、中間的な価格の商品が伸びることが多々あります。
③ 関連商品と組み合わせて販売する
料理のフェアなどで、その料理に使う食材や調味料を併せて陳列することで、選びやすくて便利で買いやすい売場にするなど、買手の利便性を高める工夫をすると、一手間かかりますが効果的です。
以上、3つご紹介しましたが、どれも販売の基本であり、特別なことではありません。
結局のところ、お客様の立場になって、買い物しやすく便利で納得感のあるアピールをすることが大切ということでしょうか。
(文)販売革新 編集部
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭
※当記事は2024年6月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

