お試し購入で売れている?それともリピート購入?
トライアル&リピート分析で見えてくること

2024年9月25日

お店づくりトピックス

■業種・業態:小売業  
■キーワード:ファン/購買行動/分析/FSP

スーパーなどで商品を手に取るイメージ画像

スーパーやコンビニで新商品の販売をはじめた時。目新しく試しに買って頂いているのか、リピート購入でファンが付いてきたのかによって、商品の販売傾向は大きく変わります。
お試しだけでリピートがなければ、販売数はすぐに頭打ちになり、何らかの手立てが必要になります。今回は、ID-POSだからこそ可能になったトライアル&リピート分析(Trial and Repeat Analysis)について紹介します。

リピート購入の読み間違い

テーブルに肘をついて思案する男性のイメージ画像

以前、某レストランチェーンが販売したデザートが大ヒットしたときのことです。

ブームが一段落した頃、商品部の責任者の方にお話をお聞きしたところ、「確かに大ヒットだったのですが、最終的にはあまり大きな利益にはつながりませんでした」と意外な答えが返ってきました。

期間限定で販売したのですが、売れ行き好調でマスコミにも大きく取りあげられたので期間を延長し大量に追加発注したのですが、どうやらこれが裏目に出たようです。

というのも、販売好調で売上は右肩上がり。しかし、ファン化が進みリピーターが繰り返し購入頂いていると思っていたのが、話題となってお試し購入していたお客様が一巡して一気に売上が下がり、残ったのは大量の在庫だったと言うのです。

要因はそれだけではなく、同業のレストランもコンビニもデパ地下の専門店もブームと知って同じ種類の商品を投入したことの影響も大きいかと思いますが、試し買いとリピート買いの見込みが甘かったのは確かかもしれません。

しかし、当時のPOSシステムでそれを把握することは難しく、いわゆる勘と経験が頼りだったのは事実です。それが今、ID-POSの普及で分析できるようになりました。

それがトライアル&リピート分析(Trial and Repeat Analysis)です。

トライアル&リピート分析とは

分析のイメージ画像

トライアル&リピート分析は、顧客の購買行動を理解するために用いられる分析手法の一つです。この分析では、お試し購入の新規購入顧客(トライアル顧客)とリピート顧客(繰り返し購入する顧客)の割合を比較します。

分析方法はいろいろありますが、今回はリピート購入率からみえてくる基本的な考え方を紹介します。

ここでは、下記のように計算してご説明します。一般的には顧客数で説明するのですが、顧客1人一人に背番号がついていなくては分析ができないので、ここでは会員数としています。

  • トライアル率=1回だけ購入した会員数÷全会員数
  • リピート率=同一商品を2回以上購入した会員数÷1回だけ購入した会員数

図表は、この数字を使って特定商品の週別の推移をまとめたものです。商品を投入した週から徐々にトライアル率が下がり、反対にリピート率が一気に増えているように見えます。しかし、販売実数を見ると、リピート販売数はあまり伸びていないことが分かります。

特定商品の週別の推移をまとめた図表画像
※トライアル数=1回だけ購入した会員数
※リピート数=トライアル購入の後に同じ商品を2回以上購入した会員数
<計算方法>
※トライアル率=トライアル数÷会員数
※リピート率=リピート数÷トライアル数

例えば、グラフのように再購入率が低いと、試し買いが一巡したところで販売数は一気に減少します。そこで間違った販売予測を立てて発注すると過剰在庫になり、ロスにならないように値下げをして売り切らなくてはならいないような事態になります。せっかく新商品を投入したのに、売場のスペースを取るだけのお荷物商品になってしまうことにもなりかねません。

仮に、新規購入顧客が再購入する頻度が低いのであれば、POPや口頭でサジェスティブする、売価を変更するなどして、再購入を促すために売り方を工夫しなくてはならないでしょう。

しかし、それでも再購入が増えないのであれば、そもそも商品の魅力や品質、値入の問題かもしれません。いろいろ手を打って効果がなければロングセラー商品に成長する見込みは薄いかもしれません。

週別のトライアル数とリピート数の図表画像

トライアル&リピート分析の重要性

ここでは、トライアル購入とリピート購入の割合によって、在庫や発注に影響する点につて説明しましたが、トライアル&リピート分析は、顧客の購買行動の理解を深め、販売方法や値入、製品の改善等々、マーケティング全般の戦略に必要不可欠な与件を与えてくれます。

新規顧客を獲得するために、初めて商品を試す顧客を増やすにはどうしたらよいか。また、リピート購入率を高めるためにはどのような対策をすれば良いかといった観点だけでなく、さらに掘り下げた見方も大切です。

FSP*の理解が必要になりますが、年代、エリアなどの顧客属性別の状況、さらにロイヤルティのランクに応じた販売状況などの分析も必要になるでしょう。

*FSPとは Frequent Shoppers Program(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)の略称。
来店頻度や購入金額などで顧客を店への貢献度に応じてランク分けし、貢献度に応じて提供する特典を変える販促手法。

(文)販売革新 編集部
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2024年7月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。