人はなぜネトゲの課金にハマる?
数ある商品やサービスの中から、私たちはなぜそれを選んでしまうのか?

2024年10月29日

お店づくりトピックス

■業種・業態:小売業  
■キーワード:行動経済学/サンクコスト効果/ポイントカード

ネットゲームをしている男性のイラストイメージ

費やしたお金が惜しくなる「サンクコスト効果」

スマートフォンの普及によってネット(ソーシャル)ゲームにハマる人が増えています。通称ネトゲと呼ばれるオンラインゲームは基本プレイ料こそ無料ですが、ゲームを有利に進めるために、道具やキャラクターなどのアイテムを集める必要があります。こうしたアイテムは、一般に「ガチャ」と呼ばれるシステムを用いて、ランダムに出現します。その結果、より強力なアイテムを得るために有料のガチャに多額の課金をしてしまい、気づいたらその金額が何十万という高額になってしまう人も少なくありません。

冷静に考えれば、そこまでのめり込む前にやめるという判断もできるはずですが、「ここでやめたらもったいない」「今まで注ぎ込んだお金や時間が無駄になってしまう」という心理が働くためです。行動経済学ではこれを「サンクコスト効果」と呼びます。サンクコストとはすでに支払ってしまい、取り返すことのできない費用のことで、金銭だけでなく、時間や労力も含まれます。このサンクコストが大きければ大きいほどやめづらくなり、費用や労力もさらに増大する傾向があります。

ポイントカードや定期購入にも応用

サンクコスト効果は、私たちが目にする商品やサービスにも応用されています。利用金額や頻度に応じて特典を受けられるポイントカードは、「これまで溜めてきたポイントを無駄にしたくない」という理由から、来店を促す動機付けになります。利用するほど割引率のランクが上がる通販サイトでは、「あと1,000円買えば、ゴールドランクになるから」と、つい不要な商品まで買ってしまうことがあります。

「無料お試しサービス」や「初回割引」もサンクコスト効果を利用しています。無料で利用すると、お得な期間が終わっても「ここでやめるのはもったいない」という意識が芽生え、有料サービスに誘導できることがあるからです。毎号付録などが付き、すべて購入すると完成する分冊の雑誌や書籍などは、創刊号の価格を安く抑え、まず購入してもらってから、サンクコスト効果によって定期購読してもらおうという狙いもあります。

監修:阿部 誠(東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)

※当記事は2024年10月時点のものです。
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