顧客シェア競争の中で見直されるFSPの重要性

2024年11月22日

お店づくりトピックス

■業種・業態:量販店  
■キーワード:FSP/優良顧客/顧客シェア/マーケティング

ハートを積んだショッピングカートの画像

人口減少が続きライフスタイルも多様化した中、沢山のお客様を集めることだけを考える時代は終わり、一人ひとりのお客様にいかに多く足を運んで頂き、商品を購入頂くかを焦点とした取り組みが重要視される時代になっています。
今回は、多くのスーパーマーケットに導入されてきたFSPの概要についてご紹介いたします。

FSPがなぜ求められてきたか

タブレットに表示されるグラフのイメージ画像

FSPとは Frequent Shoppers Program(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)の略称で、来店頻度や購入金額などで顧客を店への貢献度に応じてランク分けし、貢献度に応じて提供する特典を変える販促手法です。

ここでは、FSPが求められてきた背景についてご説明しましょう。

モノが不足し、消費も画一的で欲しいモノが一緒であった時代は、マスマーケティング、マスプロダクション、マスプロモーション、マスセールスが効果的でした。いわゆる大量製造・大量販売・大量消費時代の競争の焦点は、いかに多くのお客様を獲得するかという「市場シェア」の拡大にありました。

しかし、人口が減少する社会になり、その上モノに満たされ消費が成熟した中で、投網を投げてお客様を集めてくるような手法は通用しにくくなりました。

そこで、数ではなく一人一人のお客様からどれだけ多く商品やサービスを購入して頂くか、「顧客シェア」を焦点にした競争に移り変わっています。

この顧客シェアを高めるというのは、顧客と継続的に取引することで得られる利益などの価値のことで、これをライフタイムバリュー(LTV(Life Time Value):顧客の生涯価値)と言います。
FSPが求められてきたのは、こうした市場シェアから顧客シェアを焦点にした競争に移り変わってきたからだといえます。

<マーケティングの変化>
<マーケティングの変化>の画像

お得意様の重要性

こちらの図表はあるお店のカード会員の月別の売上を高い順に並べ、お客様の数を上位から10等分してランク別の平均売上高と売上占有率をみるデシル分析例です。

<デシル分析例>
<デシル分析例>の画像

最上位の平均売上高と最下位の平均売上高の格差は、6月が約82.5倍、7月は約79.3倍と売上貢献度に大きな差があります。

また、上位20%の会員の売上構成比は、全会員の60%近くもあり、上位ランクの顧客の売上貢献度が非常に高く、最上位顧客が他店に奪われると大きな損失となります。それを別のお客様で補おうとすると、多くの新規顧客が必要になる上、そのためのコストも期間も計り知れません。

そこで、お客様の店への貢献度、すなわち店にもたらされる売上に応じて、そのお得意様にふさわしい特典やサービスを付与することで、自店につなぎ止め、他店へのスイッチを防ぐ必要があります。

そのために顧客データを分析し、一人ひとりのお得意様にふさわしい特典やサービスを提供するのがFSPであり、ロイヤルティプログラムと言われています。

具体的には、会員の貢献度ランクに応じてクーポンの発行額を変えたり、特別な上位ランクのお得意様には高い割引のクーポンをメールや会員アプリで発行するといった取り組みです。以前は、会員ランク別に商品価格を設定する店などもありました。

また、一人ひとりの顧客の購買履歴を分析して、例えば、米やビールなど定期的に購入される商品の購入サイクルを見つけ、事前に個客に知らせることで購入を促すと行ったことも可能になります。
実際、大手のECサイトでは、顧客ごとの購入履歴を分析し「そろそろ必要ではありませんか」といったオファーが届くことが多くあります。

またよく購入される商品の自動定期購入を薦めることで、消費を先取りする仕組みを持つECサイトがあるように、店からも個客に対して決め細かなオファーを送ることも可能になります。
勿論それには、ID-POSとFSPに対応するシステム、そして運営する人材も必要になります。

<FSPの基本的な流れ>
<FSPの基本的な流れ>の画像

品揃えへの活用

スーパーでワインを買う女性のイメージ画像

顧客シェアを獲得するには、お店へのロイヤルティの高い個客を作る必要があります。

そのためには、一人ひとりのお客様、すなわち「個客」が必要とする商品を揃えることも考えなくてはなりません。スーパーには一万点を超える商品がありますが、全ての人に欲しいものが並んでいるわけではなく、ライフタイルが多様化する中で、お客様の求める商品も異なるものです。

例えば、ワインを例にするとリーズナブルなテーブルワインを求める方は多くても、中には特定のワイナリーのワインが好きで数万円の高級ワインをお買上になるお客様もいるでしょう。単純にABC分析など行えば、手頃なテーブルワインはAランクに入り、高級ワインはCランクの死に筋になるかもしれません。

しかし、そのCランクのワインを求めるお客様が特に買上金額の高い重要なお得意様であれば、簡単にC商品だからと取扱を中止するわけにはいきません。そのワインが棚から消えることで、特別なお客様が他店へスイッチしてしまうことも考えられるからです。

FSPで一人ひとりのお客様の購買利益が集計され分析できるようになっていれば、上位ランクの特別なお客様が求める商品を揃えておくといった、きめ細かな品揃えも行うことが出来ます。

以上、今回はFSPの概要についてご紹介しました。

(文)販売革新 編集部
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2024年10月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。