明暗分かれる飲食業界
今、存在感を高める注目の三業態

2025年1月9日

国内流通トピックス

■業種・業態:飲食店  
■キーワード:注目業態/小麦の価格推移

存在感を高める注目の三業態のイメージ画像

コロナ禍で人気を博した焼肉業態と、安定した集客を図れると増え続けたラーメン業態。それに続き、存在感を高めている三つの業態があります。それがもんじゃ焼きと、ウナギ、天ぷらです。それぞれ注目度を高めている背景を解説していきます。

新スタイルのもんじゃ焼き

これまでのもんじゃ焼き店といえば、どこのお店もほとんど同じメニューとドリンクが並んでいて、雑居ビルの空中階に入っているのが当たり前でした。しかし、最近、写真映えする料理とドリンクを用意し、路面店で成功するもんじゃ焼き店が増加しています。

キーワードは、若者需要の開拓と少人数での営業です。そもそももんじゃ焼きは“粉もの”と呼ばれる業態で、原価が低く押さえられることで知られています。しかし、客層が限定されていて、売上のトップラインが決まっていたのも事実です。そこで最近、注目度を高めているもんじゃ焼き店では、写真映えするメニューで若者の需要を掘り起こしながら客単価のアップに成功しています。中には、2000円近いもんじゃ焼きと、1000円近いサワーが飛ぶように売れているお店もあるくらいです。これまでの常識を覆す売上をたたき出せるのも、写真映えする料理とドリンクで新しい価値を加え、新規客層にアプローチできたからに他なりません。

もんじゃ焼きのイメージ画像
もんじゃ焼きは、東京の郷土料理ともいわれる。戦後の物資が不足していた時代にうどん粉を溶いて少量の具材を加えソースで味付けをする安価な食べ物で子供のおやつでもあった。

また、お店にとっては人件費を押さえられるモデルである点も魅力が大きいです。基本的にもんじゃ焼きはお客に卓上でつくってもらえばいいため、キッチンスタッフは調理をする必要がありません。ホールスタッフも何品もオーダーが入ってくることがないため、配膳とバッシングに集中できます。それが回転率の向上につながっていることも、高い売上の実現に欠かせません。

輸入小麦の政府売渡価格の推移
輸入小麦の政府売渡価格の推移のイメージ画像
日本で流通する小麦の約8割は外国からの輸入小麦。小麦の生産国であるウクライナは、ロシアからの侵攻によって輸出量が減少。世界的に小麦の価格は上昇しているが、輸入小麦は日本政府が買い付けて、価格の変動を抑えて民間流通業者へ売り渡すため、小麦の価格は比較的安定しており価格も低く抑えられている。
そのため粉ものといわれる、もんじゃやお好み焼き、うどんやパスタなどは、農産物や食肉に比べて原価を抑えられる上、さまざまな料理に応用がきくといったメリットがある。

2024年のヒット業態、ウナギの魅力

2024年は、ウナギに対する関心が高まった一年だったといっても過言ではありません。普段、ウナギを食べたいと思っても、老舗と呼ばれる店が多く、高単価でなかなか手が届きづらいのが現実です。一方で、土用の丑の日などを中心に、ウナギを提供するチェーン店は多いものの、常時おいしいウナギをリーズナブルに提供する専門店はあまりありません。

つまり、市場と消費者のニーズにギャップが生じているといえるでしょう。現在、そこに目をつけ、いち早く参入するプレーヤーが増えており、中には、急速に店舗数を伸ばすブランドも登場しています。

ウナギのイメージ画像

これまでのウナギ店というと「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」の言葉に象徴されるように職人の存在が必須でした。しかし、多くの職人を雇うのが難しくなって店舗展開が難しかったり、人件費が高くなるので低価格で提供できなかったりと、いくつかの弊害がありました。現在、店舗数を伸ばしているあるブランドでは、そうした障壁を厨房の機械化によって乗り越え、アルバイトだけでも回せる店づくりを進めています。メニュー数も絞っているので、営業中に多くのスタッフがシフトインする必要もありません。それにより、フランチャイズで展開できるモデルを作り上げ、急速に加盟店を増やしています。

そのブランドの「うな重(梅)」の価格は、なんと1600円(税込)です。人件費をかけなくていいのはもちろん、家賃を低くおさえられている点も低価格の実現には欠かせません。ウナギは目的来店の業態のため、同店はあえて駅から少し歩く場所にお店をつくっています。しかも内観などの統一した規格を設けていないので物件は居抜きです。こうした出店戦略を取っているからこそコストから逆算をして、しっかりと利益の出る価格付けができています。

同ブランドは、いわゆる2等立地、3等立地でも高い売上をたたき出すお店も多く、注目度は日に日に高まっています。2024年だけでなく、2025年もウナギ業態の盛り上がりは続いていきそうです。

また、老舗の寿司店が、新たにウナギ専門店をオープンし好調なスタートを切った例もあります。ウナギは寿司と同じく職人の技術で価値を引き上げることが出来る上、比較的高単価でもお客様の納得感を得られるという強みがあります。

このように、新しい技術を活用して新しい対応のうなぎ専門店を成功させたり、同じ特徴や強みを持つ業態と合わせてシナジーを生み出すなど、まだまだウナギのポテンシャルを活かした新業態が登場しそうです。

ウナギの供給量の推移
ウナギの供給量の推移のイメージ画像
ヨーロッパウナギの養殖拡大によって、日本への輸出量は平成12年にピークを迎えた。しかし、資源減少とともに輸入量も減り、日本国内の供給に大きな影響を及ぼしウナギ流通の減少ともに価格は上昇し高級な食品になってきた。

2025年の注目筆頭株の天ぷら

2024年の後半にかけて、急速に存在感を高めているのは、天ぷらです。同業態の進化には、フライヤーの進化があります。これまでのフライヤーは、設置するのにある程度の広さが必要でした。しかし、最近開発されたフライヤーは非常に小型で、キッチンの隅に設置することができます。性能も優れており、アルバイトでも天ぷらを揚げることができ、職人を雇う必要がありません。それにより、人件費をおさえながら、質の高い天ぷらを提供できるようになり、多くのお店でそのフライヤーの導入が進んでいます。

小型化したフライヤーの優れている点は、人件費だけではありません。設置に場所を取らないため、既存の業態にプラス一品の提案ができるようになります。実際、ランチ帯は天ぷら店として営業をして成功を収めているお店もあります。また、小型フライヤーは外国人スタッフでも天ぷらを揚げることができるようになり、必ずしも日本人がいる必要もありません。そのため海外で天ぷら店を展開する構想を描いていたりするケースもあります。

厨房機器の進化によって、柔軟性の高い提案が可能になり、今後、これまでには出てこなかった新しい天ぷら業態が出てくる可能性があります。2025年は、天ぷらに高い注目が集まる一年になるかもしれません。

(文)飲食店経営 編集部
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2024年11月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。