世界のネットスーパーを支えるテクノロジー集団

2024年12月17日

海外流通トピックス

■業種・業態:スーパー  
■キーワード:ネットスーパー/OSP/EC/ピッキング/ロボット

買い物カートと食材のイメージ画像

欧米だけではなく、日本や韓国などアジアでも広がっているネットスーパー。今回は、世界で拡大するネットスーパーを、技術面でも業務面でも支えているプラットフォームについてご紹介します。

世界の小売業者と提携

食材が棚に沢山並んでいるイラストのイメージ画像

今回ご紹介するのは、英国のO社によって開発された「OSP」です。OSPは、ECで注文処理から物流までを一貫して行うプラットフォームです。

AI、ロボットなどを駆使して自動化を推進し、ネットスーパーのECサイト構築から注文処理、商品の保管、管理、ピッキング、配送までの、商品が消費者の手に渡るまでの一連のプロセスをサポートする技術基盤やサービスを提供しています。

この10年間でOSPは急拡大していて、2023年期で米国、カナダ、英国、フランス、スペイン、スウェーブン、ポーランド、韓国、オーストラリアの12の主要な小売業者とパートナーシップを結んでいます。

日本では、流通最大手が2023年から始めたネットスーパーと独占的なパートナーシップ契約を結び、ロボットとAIを活用した無人倉庫などで大きな成果を上げています。

このO社が目指しているのは、「O社に頼めば、すぐにネットスーパーを始められる」というものです。

世界最大のネットスーパーと共に成長

ネットスーパーのイメージ画像

O社がユニークなのは、現在ではネットスーパー兼テクノロジーグループとなっていますが、もともとはシステムインテグレーターではないということです。

最初は、英国老舗小売大手と50対50の合弁会社を設立して、2000年にネットスーパーをスタート。2009年にはスマートフォン用のショッピングアプリを発表するなどして、現在では、英国最大のネットスーパーになるまで成長しました。

今では、世界最大級のネットスーパーと評されるほどです。この成功の裏側にはOSPがあります。

ネットスーパーは利益率が低く、難しいサービスと言われています。特にピッキング作業を人間が行うのは効率が悪く、ミスが頻繁に発生します。これを防ぐためにスタッフを訓練しても、離職率が高いため、結局は時間の浪費となり、人件費は大きな負担になっています。

さらに、扱っている商品がビン類のような硬いものから、レタスのように柔らかいものもあることや、さまざまなサイズの商品がある上、複数の温度管理が必要なことなど、ネットスーバーを高い収益性や成長性の見込めるビジネスにするためには、解決しなければならない課題がたくさんあります。その難しい領域にチャレンジしてきたのがO社というわけです。

倉庫内をロボットが移動してピッキング

倉庫内をロボットが移動するのイメージ画像

OSPには、AIを使って顧客に新製品をお薦めするような仕組みもあるのですが、最大の特徴といえるのは、ロボットを使ったピッキングです。

車輪付きの直方体型ロボットとアーム型ロボットの2種類のロボットを使うことで、労力をできる限り軽減して大幅なコスト削減を実現する、24時間365日、利用可能な自動ピッキング・ソリューションです。O社では、最大99%の労力削減を実現すると断言しています。

大規模なベルトコンベアーを用いた従来型倉庫よりも18倍速いともいわれ、信頼性が高く、経済性にも優れています。

倉庫内を見てみると、「グリッド」と呼ばれる格子状のフレームが組み立てられていて、フレームの下に商品の入ったコンテナが設置されています。

フレームの上を車輪付きの直方体型のロボット約1000台が最大秒速4m、わずか5mm間隔で自在に移動しています。カメラやセンサーを使って5万点以上の商品の中から、必要な商品を正確に認識して、コンテナから取り出し、アーム型ロボットの近くに運びます。

アーム型ロボットはディープランニング(深層学習)を使用して、新しい商品や壊れやすいものは丁寧かつ迅速に取り出し、詰め込むときにはAIが商品の形状や大きさに応じて、どのように配置すれば最も効率的で、損傷しないように梱包できるかを判断しています。

壊れやすい商品や液体類などは箱に梱包されることが多く、その他の食品や日用品はショッピングバッグに梱包されることが一般的です。商品の種類やサイズに応じて、適切な梱包方法を選びます。

このようなロボット・テクノロジーにより、平均50アイテムの注文を5分以内にピックアップしているといわれます。

O社の技術には、申請中を含めて2400件を超える特許があり、チームには2500人以上の技術者が在籍して、ソフトウェアおよびハードウェア・エンジニアリングの最先端で事業を展開しています。

配送料にダイナミック・プライシングを採用

荷物を受け渡しているのイメージ画像

OSPのネットスーパーは24時間注文を受け付けていますが、配送時間はそれぞれの国で異なります。

日本は朝7時~夜23時の間で1時間単位(当日~14日先まで指定可)、英国では朝5時30分~夜23時59分の間で1時間単位(当日~7日先、特定の期間やプロモーションによっては、14日先までの予約が可能な場合もあり)となっています。最低購入金額や配送料も、それぞれの国で異なります。

配送システムでは、注文が入るたびに最適な配送ルートをAIが計算して再構成し、小型トラック1台あたりの最大数の配達ができるようにしています。配送車両の重量や道路の状況、交通状況などを考慮して、最短かつ最速のルートを選択します。

加えて、配送料にダイナミック・プライシング(変動料金制)を採用しているのも、配送効率を大幅に向上させています。英国では99ペンスから6.99ポンドと幅を持たせています。2024年11月1日の為替レート(1ポンド=200円)で計算すると、最低料金が198円、最高料金が1,398円となります。

ピーク時間帯や忙しい時間帯には配送料が高く設定され、逆にオフピーク時間帯やあまり利用されない時間帯には配送料が安く設定されています。

ユーザーは、予約カレンダーに表示されている配送料を見ながら、自分のスケジュールや予算に合わせて、希望の時間帯を決めることになります。

実店舗が多数ある米国ではハブアンドスポークを採用

荷物配送システムのイラストイメージ画像

OSPは、米国で提携している大手スーパーマーケットチェーンKで「ハブアンドスポーク」というモデルを構築しています。

ハブアンドスポークとは、中央のハブ(大型配送センター)から各スポーク(地域の配送拠点や店舗)に商品を発送するというシステムです。

これにより、既存の店舗ネットワークを利用して効率的に注文を処理し、顧客への配送を迅速に行うことができます。

このモデルは米国のような大きな国や、広範な配送ネットワークを持つ小売業者にとって非常に効果的だといわれています。

今回は、世界で成長著しいネットスーパーの事業を支えるO社の取り組みについて紹介しました。

(文)経済ジャーナリスト 嶋津典代
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2024年11月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。