ID-POSは、FSP+リテールメディアで真価を発揮

2024年12月17日

国内流通トピックス 

■業種・業態:小売業  
■キーワード:販売履歴/販促手法/レシートクーポン/リテールメディア

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FSPは、ID-POSにより「来店頻度や購入金額などで顧客を店への貢献度に応じてランク分けし、貢献度に応じて提供する特典を変える販促手法」のことです。ID-POSは個人を特定できることで、販促手法としてのワンツーワンマーケティングを可能にします。

そしてさらに、ID-POSデータを元にした可能性に注目が集まっています。それがリテールメディアです。リテールメディアとは、リアル店舗ならびにネットショップなどEC事業を展開する小売企業が提供する各種デジタル系のメディア広告の総称です。

ではID-POSによってどのような広告が可能で、収益化することが出来るのか。また課題についてご紹介します。

身近な存在となったリテールメディア

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小売業は、仕入れた商品を店舗で販売することで収益を上げるビジネスであり、それ以外の収益源はほとんどありませんでした。

ところが、ID-POSやネットスーパーなどWebサイトで、個々のお客様へ直接アプローチできるようになり、販売履歴などから一人ひとりのお客様に適した広告やリコメンドを行うなど、さまざまな販促手法を駆使できるようになりました。

例えば、レジで発行されるレシートクーポンをご利用の方は多いと思います。これもリテールメディアの一つで、店はメーカーから広告収入を得ています。

最近では、某コンビニがレジカウンターの上にデジタルサイネージを設置し、商品の広告を流しているところをご覧になった方がいらっしゃるかと思います。ここで映し出される広告も小売店側の収入に繋がります。

また、コンビニのスマホアプリやネットスーパーの注文画面に表示されるクーポンなど特典を利用する光景は珍しくなくなりました。ここで表示される商品クーポンは、メーカーの広告です。

さらに収益を上げているのが、小売業のECサイトやスマホアプリへの広告出稿です。

デジタルサイネージのような大きな投資を必要とせず、多くの広告をスピーディーに掲載できるため、チェーン店がもっとも注目している分野であり、今後はさらに多くのチェーン店へと広がる可能性があります。

ID-POSとリテールメディアの関係

さて、こうしたスマホアプリやWebサイトを活用した広告とID-POSがどう関係するのでしょうか。一つは、個を特定して購買履歴等の情報から、購買特性に応じたリコメンドを簡単に打ちやすくなり、広告効果も測定できることです。

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誰に対しても同じ広告を発信するのではなく、個人属性や購買履歴から一人ひとりの特性に応じて興味を持ってもらえる商品の広告を打つことができるようになります。

大手のECサイトでは、あたりまえのように購入履歴から関連商品をリコメンドされた経験があるかと思います。

それと同じように、ネットスーパーや店が提供する会員アプリ、POSなどで広告を発信して広告収入に繋げることが可能になります。

なぜ今、リテールメディアなのか

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リテールメディアが注目され始めたきっかけは、米国の世界最大の小売業W社の広告部門の売上が急拡大したためです。

ではなぜ小売業の広告収益が増えているのでしょうか。まず上げられるのが「デジタル広告の費用上昇」です。

既存のメディアからネット広告へのシフト傾向が強まるとともに、ネットの広告単価は上昇傾向にあります。

次に、「サードパーティCookieの制限強化」があります。規制が本格化すれば、閲覧者に対して繰り返し広告配信するといった手法が取りにくくなります。

このようにネット関連広告の変化により、消費者に最も近い存在である小売店の顧客接点での広告に注目が集まっているのです。

新たな収益源として期待されるが課題も

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最近では、ID-POSの導入やスマホ会員アプリの活用、そしてネットスーパー事業に参入するスーパーも増えています。そこで得られるデータは詳細で膨大なものです。

そのデータを活用して詳細な分析を行おうとすると、ビッグデータを収集保管し、解析するだけのプラットフォームが必要となります。

しかし、大手チェーンですらそこにかかるコストに二の足を踏む状況であり、今後さらなるダウンサイジングが求められます。

また、広告を出して頂けるメーカーなどの広告主を見つけなくてはなりません。

小売業がそうした広告営業を行うのは難しく、広告代理店などの力を借りる必要がでてきます。さらに、広告主が求めるデータの提供が可能かという点も重要です。

広告主となるメーカーや卸は、店から提供されるデータにWebでのデータの収集、分析、広告効果測定の同程度のレベルのデータの粒度を求め、定量的な測定と顧客や購買履歴等のトラッキングとオファーという高度なデータ活用を求めています。

そしてさらに重要なのが、広告効果です。広告主であるメーカーなどが、広告効果が上がっていると評価してくれなければ、継続的な広告の出稿にはつながりません。

こうした課題があり、まだ中小規模の小売業が簡単に参入出来る分野ではないものの、大きな可能性を持っているのは事実です。

ID-POSや会員アプリでの広告、そしてネットスーパーの注文画面などへの広告については、すでに動き出している状況で、プラットフォームの構築や投資の問題など課題はありますが、小売業がマーケティング事業に力を入れて、広告から収益を得られる時代はすぐそこまで来ているようです。

今回は、ID-POSだからこそ可能になったFSPの先に見えてきたマーケティングの一つ、リテールメディアについて紹介しました。

※FSP=Frequent Shoppers Program(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)

(文)販売革新 編集部
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2024年11月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。