「ニュートリスコア」に続いて登場した「エコスコア」

2025年1月20日

海外流通トピックス

■業種・業態:小売業  
■キーワード:エコスコア/ニュートリスコア/アプリ/商品パッケージ

エコスコアのイメージ画像

食品パッケージの前面ラベル表示FOP(Front-of-Package labeling)として、ECで最も利用されているのが、ニュートリスコア(Nutri-Score)ですが、そしてニュートリスコアと並んで前面に表示されることもあるエコスコア(Eco-Score)について紹介いたします。

フランスで生まれたエコスコア

スーパーマーケットで買った品物のイメージ画像

エコスコアは、2021年1月にフランスの非営利のプロジェクト、オープン・フード・ファクツ(Open Food Facts)などによって開発され、その後、フランスの環境移行庁(ADEME)によって採用されました。

2021年3月にベルギーに本社を置くディスカウントスーパーマーケットチェーンが、食品の環境への影響が消費者の選択の重要な基準になると考え、いち早く導入しました。それに、ドイツとフランスのスーパーマーケットチェーンが後に続きました。

フランスの某スーパーマーケットチェーンでは、ナショナルブランドとプライベートブランドのすべての食品に、エコスコアを表示しています。

「エコスコアは、お客様が日常的に購入する商品を選択する際に役立ちます。誰もが環境への影響が少ない商品を選択できるようになります」と導入理由を述べています。

エコスコアは、ニュートリスコアに似たモデルに基づいて設計されており、15の環境影響などをまとめたスコアは、次のようにA(緑、環境負荷が最も低い)からE(赤、環境負荷が最も高い)までの文字が書かれた色付きの葉の形をしたロゴで表されます。

エコスコアのイメージ画像
出所:オープン・フード・ファクツ

エコスコアは、次のことを望んでいる人たちに役立ちます。食品購入によって、環境への影響を実際に減らすことができることを示唆しています。

  • 肉は少量でも質の良いものを食べたい
  • オーガニック商品や品質ラベルの付いた商品をもっと消費したい
  • 包装を少なくした地元産や季節の商品を好む
  • 問題のある原料(絶滅危惧種の魚、持続不可能なパーム油など)を含む商品を制限する

エコスコアの計算方法

エコスコアのイメージ画像

エコスコアは、ADEME(フランス環境エネルギー管理庁)のライフサイクル分析(LCA)と、それだけではカバーされていない環境への影響をボーナスとペナルティで調整して計算します。100点満点で示され、AからEの5段階で格付けされています。

LCAは、6つの生産ステップ(農業、加工、包装、輸送、流通、消費)と15の環境影響指標(気候変動/カーボンフットプリント、オゾン層の破壊、電離放射線、土地、水、エネルギーの使用、大気・海水・淡水の汚染、資源の枯渇など)で評価されます。

環境への影響については、次の4つで調整します。

  1. 生産方法
    公式ラベルや環境上の利点を保証するラベル、認証が付いた商品にはボーナスが付与されます。具体的には、オーガニック、フェアトレードのほか、HVE(環境価値重視認定:農場に対して与えられる環境認証)、ラベル・ルージュ(高品質な食品を示す公式の赤い色の品質保証マーク)、ブルー・ブラン・クール(フランスを拠点とする非政府組織がオメガ3を豊富に含む牧草、亜麻、アルファルファなどを加えた飼料で育てた畜産物を認証)、MSC/ASC(水産資源と環境に配慮した漁業によって獲られた水産物に付されるMSC、環境や社会への影響を配慮した方法で養殖された水産物に付けられるASC)
  2. 材料の産地
    原料の原産地に基づいて、ボーナスが付与されます。このボーナスは輸送への影響と各生産国の環境政策も考慮されます。
  3. 絶滅危惧種
    パーム油など、生物多様性や生態系に重大な悪影響を及ぼす成分を含む商品にはペナルティが科せられます。パーム油の生産は、大規模な森林破壊の原因となっています。
  4. パッケージ
    過剰包装している場合はペナルティが科され、包装の循環性(リサイクル原材料の使用とリサイクル性)を考慮して計算されます。

アプリで簡単にエコスコアを見られる

アプリで簡単にエコスコアを見られるのイメージ画像

エコスコアは、ニュートリスコアほど商品に表示されていませんが、エコスコアのロゴの写真を使用した、食品データベースのオープン・フード・ファクツ(Open Food Facts:OFF)で見ることができます。

OFFのアプリを使用すると、商品のバーコードをスキャンするだけで、エコスコアをすぐに取得できます。

さらにOFFのウェブでは、フランスで販売されている75万種類以上の食品のエコスコアを誰でも閲覧、比較できます。検索結果には、環境への影響を示すエコスコアだけではなく、栄養価を示すニュートリスコアなども表示されます。

エコスコアを正確に計算するためには、成分の由来やパッケージの素材に関する詳細な情報が必要なため、食品メーカーに対して、生産者向けの無料プラットフォームを介して、すでに所有している情報を提供するように求めています。

エコスコアとニュートリスコアのどちらが重要か

スーパーマーケットで腕を組んで考える人たちのイメージ画像

食品には、ニュートリスコアをはじめオーガニック、フェアトレード、HVE、ラベル・ルージュなど、さまざまなラベルが貼られています。このようなラベルが急増すると情報過多になり、消費者が持続可能な選択を行う能力を妨げる可能があります。

前述したようにOFFでは、エコスコアとニュートリスコアの両方がすでに記載されています。多くの場合、栄養価と環境面では評価が異なり、食品に対する肯定的な評価と否定的な評価が混在しています。

そのため、消費者は購入の決定時に、栄養価と環境面のどちらの側面がより重要であるか考えなくてはなりません。例えば、栄養価は優れている(栄養スコアA)が、環境への影響が大きい(エコスコアE)という商品に遭遇するといった場合も考えられるからです。

ドイツでは、1,000人を超える消費者を対象として、2023年1月と2月にオンライン調査実験を実施したところ、ニュートリスコアは62.6%、エコスコア30.3%の人が知っていて、食料品の買い物では、ニュートリスコアが最も信頼されているとの結果が出ました。

この調査では、環境への肯定的な情報は、栄養価にプラスの影響を与え、その逆もまた同様であることもわかりました。環境への影響が小さい(エコスコアA)と、栄養価が悪くて(栄養スコアE)もプラスの効果があり、栄養価(栄養スコアA)だと、環境への影響(エコスコアE)が大きくても大目に見る傾向があることが明らかになったのです。

つまり、栄養価の評価には無関係であるはずの環境という情報が、影響を与えているこということです。

商品の魅力は、栄養スコアAとエコスコアAが最も高くなり、一方、両方のEと否定的なラベルが提示されると、製品の魅力は最も大きく低下します。2つの否定的なラベルが付いた食品の魅力は低下するため、メーカーはこれを避ける必要があります。
こうした関連性が、あまりエコスコアが普及しない理由かもしれません。さらにフランスでは、農薬、生物多様性、気候変動対応などを評価するプラネットスコア(Planet Score)という同様のマークもあることも影響しているようです。

さらに特筆すべきことは、このようなエコマークの表示ではなく、スマートフォン用の商品スキャナーアプリが広がり、簡単にニュートリスコアやエコスコアを確認することができ、消費者の環境への意識を高めることに繋がっていて、メーカーや小売業の対応にも影響を及ぼしはじめています。

(文)経済ジャーナリスト 嶋津典代
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2024年12月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。