ABC分析の考え方と飲食店での活用法

2025年2月19日

お店づくりトピックス

■業種・業態:飲食店  
■キーワード:ABC分析/分析手法/売上貢献度/利益貢献度

飲食店のメニューのイメージ画像

仕入れ食材の高騰や人手不足、賃金の引き上げなど、飲食店を取り巻く環境は厳しさを増しています。こうした中、メニューの絞り込みや変更によって、売上、利益の確保や作業負担の軽減を図る飲食店が増えています。
そこで欠かせないのが、メニューの売れ行きや利益の実態把握です。ここでは、オーソドックスな分析手法のABC分析についてご紹介します。

ABC分析の考え方

ABC分析のイメージ画像

ABC分析は、幅広い分野で活用されている分析手法の一つで、飲食店に限らず小売店などでも用いられています。

この分析手法は、イタリアのパレートという大学教授が見つけ出した法則がベースと言われています。

すべての経済事象は、ほんの一握りの要因が全体の事象の大半を決定付けるというもで、「パレートの法則」とよばれます。

この考え方を基に、重点管理ポイントを決める手法がABC分析です。「28(にはち)の原則」といわれるのもパレートの法則に由来しています。

ABC分析では、商品別の売上あるいは出数、荒利の構成比を算出し、それを降順に並べ替え、上位からの累計値を計算します。

その累計値の75%までをAグループあるいはA商品群とし、95%までをB、それ以上をCと分類し、それぞれの商品の売上、出数、荒利の貢献度を明らかにして、メニュー改廃などを検討する際に利用します。

また、それぞれの実績値と累計値をグラフ化したものをパレート図と言います。

ABC分析の進め方

データのグラフのイメージ画像

まず、メニュー別の売上額、出数、荒利のデータを準備します。

次に売上ABCであれば
①メニューアイテム別の売上構成比を計算高い順に並べます。
②各メニューの売上構成比を積み上げ累計を求めます。累計の合計は100%になるはずです。
③累計構成比の高いほうから上位75%までの商品群をAグループとします。
④75%を超え95%以下の商品群をB部門とし、それ以外をCグループとします。
以上の手順で得られた集計表がABC分析表です。

(図表1)は、売上のABC分析表です。Aグループに入る商品は、売上貢献度が高い看板商品。逆に下位のCグループ商品は、売上貢献度の低い改廃の対象となる商品群と判断されます。

(図表1)

<売上ABC分析例>

(図表1)売上ABC分析例の画像

このABC分析表をさらに視覚的にしてわかりやすくするために、各メニューの構成比と累計値を元に作成したグラフがパレート図です(図表2)。

棒グラフはメニューごとの売上構成比を、折れ線グラフは上位からの累計値をとっています。
こうしてみると限られたメニューによって売上の多くを占めている事がよくわかります。

(図表2)

(図表2)売上ABCパレート図の画像

出数のABC分析でお客様の支持率を見る

食事風景の画像

売上のABCは大切ですが、お客様の人気のバロメーターである出数やお店の利益の対しての貢献度を無視するわけにはいきません。

そこで、売上だけでなく、出数と荒利についても同様の手法を使って集計し、総合的にメニュー改訂を検討する必要があります。

(図表3)は、出数ABC分析表の例です。

(図表3)

<出数ABC分析例>

(図表3)出数ABC分析例の画像

出数は、言うまでものなくお客様支持のバロメーターといえる指標です。

出数ABCを見る事によって、お客様の人気の高い商品をピックアップし、出数が多いことでオペレーションが乱れ、品質が下がらないように注意します。

しかし、人気が高いのはとても重要な事ですが、売価が異なりますから人気があれば売上や利益の貢献度が高いという訳ではありません。

中には、利益が伴わない商品もありますし、人気を落とさず利益が取れる商品に育てることもポイントになります。

(図表4)は、出数ABCをパレート図にしたものです。
先ほどの売上パレート図と同様に、お客様の人気が集中する商品を、視覚的にとらえることができます。

(図表4)

(図表4)出数ABCパレート図の画像

荒利のABC分析で利益貢献度を調べる

飲食店でメニューを広げているイメージ画像

売上、出数のABCに続いて(図表5)は、メニューの利益貢献度の分析表です。

売上貢献度を測る売上ABC、お客様支持のバロメーターとも言える出数ABCは、とても重要な意味を持ちますが、どれだけお店の利益に貢献しているかを見逃すわけにはいきません。

利益貢献度の高いメニューの出数を増やしていくためのPRを考えたり、価格を少し下げたりすることで出数増を狙う場合もあります。

荒利ABCでは注意したいことがあります。メニュー原価には、労務費が含まれていないことです。数字の上では荒利が取れていても、熟練した職人が何昼夜もかけて仕込む商品などは、きっちりチェックし材料以外にかかる経費も考える必要があります。

(図表5)

<荒利ABC分析例>

(図表5)荒利ABC分析例の画像

続いて、(図表6)は荒利ABCのパレート図です。レシピがなくメニューの原価がわからない、あるいは仕入れ値の変動は激しく正確ではないとの声もありますが、大まかなメニュー原価がわかると、全体の中でどのメニューの利益貢献度が高いか把握することができます。

数が出るので儲かっているはずと思っていたものが、原価が高く予想以上に利益貢献度が低いと言った商品もあるかもしれません。

売上、出数、荒利それぞれの角度から分析を進めることで、メニューの改廃や絞り込み、販促商品の企画などに役立つはずです。

(図表6)

(図表6)荒利ABCパレート図の画像

季節性を捉えるために時系列で分析

飲食店でうどんを食べている女性のイメージ画像

ABC分析は、通常月単位やキャンペーン期間などで集計しますが、メニューの月ごとの動きを追いかけるとこで、季節性の高い商品の改廃のタイミングなどを検討するのに役立てることができます。

メニューは、寒暖差や湿度の変化で、お客様が好まれる商品が大きく変化します。
(図表7)は、10月から12月の3ヶ月間の売上ABCの動きを追ったものです。

季節が移り変わり、寒さが増す事で暖かい商品の売上が伸びはじめ、ハンバーグステーキという定番メニューの売上貢献度が下がって来ているのがわかります。

こうした動きを毎年記録しておくと、前年の実績を見ながらメニュー別の売上の動きを予測し、季節メニュー投入のタイミングや新商品の開発などに役立つはずです。

(図表7)

時系列の売上ABC分析例

(図表7)時系列の売上ABC分析例の画像

以上、飲食店におけるABC分析の活用例を紹介いたしました。

POSデータを基にしたABC分析を活用して、メニュー改定による作業負担軽減や利益改善に役立ててみてはいかがでしょうか。

(文)飲食店経営 編集部
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2025年1月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。