モチベーションも売上も上がる!「接客」の心得
2025年4月17日
お店づくりトピックス
■業種・業態:小売業
■キーワード:モチベーション/接客/傾聴力/スキル/ニーズ
「『売上を上げよう』と言われてもモチベーションが上がらない」「一生懸命接客しているけれど、売上に結びつかない」。接客に携わる店舗スタッフの中にはこうした悩みを持つ人も多いようです。接客に何よりも大切なのは「お客様を喜ばそう」「お客様の役に立とう」というモチベーションです。売上とモチベーションを両立させるために心得ておきたい接客の基本をお伝えします。
モチベーションなき接客は成果が上がりにくい
接客にはなぜモチベーションが必要なのでしょうか。商品知識や販売スキルをいくら学んでも、扱っている商品やサービスに思い入れがなかったり、「お客様を喜ばせたい」というモチベーションがないと、接客が単なる「作業」となり、なかなか成果に結びつきにくいからです。モチベーションという土台があって初めて、学んだ知識やスキルが生きてきます(図1)。
接客の仕事に就いている人は、「人と話すのが好き」「お客様の笑顔が見たい」という思いを持って働いている人も多いと思います。しかし、物を売る(売上を上げる)ことに一生懸命になってしまうと、お客様のことがおざなりになりがちです。お客様はそれを敏感に感じとります。売る側の都合ではなく、「お客様に喜んでもらう」という接客の基本に立ち返る必要があります。
認識しておきたいのは、店舗スタッフにとって接客は仕事でも、お客様は買物や飲食を楽しむために、プライベートでお店に来ているということです。プライベートでは楽しい時間を過ごしたいと思っており、不愉快な対応を拒むのは当たり前の心理です。
接客はお客様の快・不快を無視しては成り立ちません。接客するスタッフに求められるのは、「こんなことを言ったらお客様はどう感じるか」「こんな態度を取ったらどんな気持ちになるか」を考えられる想像力、あるいは感受性と言ってもいいかもしれません。こうした能力は他の仕事でも必要ですが、接客では特に重要です。
接客に向いている人は、たとえ気分が落ち込んでいても、お客様の前では良い笑顔をつくれる人です。普段から愛想のよくない人がそのままの顔でお客様に接したら、たちまち「感じが悪い人」になってしまいます。
販売員の印象がそのままお店や商品の印象に
接客業ではなぜ感じよくしなければならないのでしょうか。一つには「販売員の印象=そのお店や商品の印象」になるからです。
「自分を偽りたくない」「自分を大切にしたい」と、仕事上の顔をつくることに抵抗がある人もいますが、公私を分けることと自分を大切にすることは別です。お客様に対する顔をつくるのは、接客業に求められる最低限のマナーです。それを「自分らしさ」という言葉で否定しては社会では通用しません。
接客の基本的な考え方として、お客様から信頼されて初めて商品が売れます。特に、お客様にきちんと説明し、納得して買っていただくような商品の場合、販売員が信用できなかったら、ほとんどの人が買わないでしょう。
一番わかりやすいのが、物販におけるカリスマ店員やスーパー販売員と呼ばれる人たちです。この人たちが勧める商品が売れるのは、お客様から絶大な信頼を得ているからです。
商品を売る前に自分を信頼してもらうこと、それが接客の基本です。そのためには感じの良さや愛想の良さといった「印象力」を上げるとともに、お客様が本当に求めている商品や有益な情報を提供できるよう自分自身を磨き、お客様にとって価値ある存在にならなければなりません。
傾聴力を高めお客様のニーズを引き出す
接客スタッフは自分の価値を高めるためにどんな力を身につける必要があるのでしょうか。それを表したのが図2です。まずは「知識力」として、商品知識や基本的な販売ノウハウが必要です。2つ目が前段でも述べてきた「印象力」。そして3つ目が「傾聴力」、4つ目が「プレゼン力」です。この4つの力を磨くことでお客様から信頼を得られるようになります。
中でも重要なのが「傾聴力」です(図3)。単にお客様の話を頷いて聞くだけでは傾聴していることになりません。聞くことによってお客様に安心感を与え、情報を引き出すのが傾聴力です。それは「お客様のために」というモチベーションがあってこそ可能になります。
お客様のニーズは不安や悩みがベースになっていることが多く、本音を聞き出すことでお客様が本当に求めている商品をお勧めできるようになります。傾聴力を高めることが「プレゼン力」の向上につながるのです。お客様が望む商品を提供できれば、結果的に売上を伸ばすことにつながります。
こうした力は一朝一夕に身につくものではありません。自分なりにいろいろな店を見に行き、どんな接客が行われているのかを、お客様の目線で体験することが大切です。売れている店、繁盛している店には多くのヒントがあります。
スタッフの意欲を高めるには褒めることが大切
図4はスタッフが意識すべき接客の心得ですが、「お客様の役に立ちたい」というスタッフのモチベーションを高めるために店長やマネージャーは何をすべきでしょうか。それは「褒めること」です。スタッフが良い接客をしたときや目標を達成したときなど、できるだけ多くの機会を捉え、褒めてください。そうすることで、スタッフ自身が「また次も頑張ろう」と主体性をもって動くようになります。褒める文化が根付いている店は概して雰囲気がよく、その良い雰囲気がお客様を呼びます。反対にスタッフ同士のいざこざが絶えない店は、業績の方も低迷していることが多いものです。
店の印象は掛け算に例えることができます。掛け算では数式の中に0が一つでも入っていれば、トータルの積も0になります。例えば、飲食店でテーブルを担当したスタッフがどんなに素晴らしい接客をしたとしても、最後に接したレジのスタッフの感じが悪ければ、そのお店の評価は0になってしまいます。誰か一人の対応によって店の印象が0にならないよう、店全体で接客レベルを上げる必要があります。
接客の機会が減るほど気配りや笑顔が重要に
近年はお客様自身で会計を行うセルフレジや、料理などをタブレットやスマホで注文するセルフオーダーシステムを導入する店舗が増え、スタッフがお客様に対面で接する機会が減っています。接客しないのだから、印象が悪くてもよいと考えるのは逆です。接客する機会が少なくなればなるほど、ちょっとした気配りや笑顔での挨拶などがより重要になり、その店の印象を大きく左右します。
接客スタッフにできることは、「お客様に喜ばれる」という存在価値の創出です。例えば、口コミサイトに「スタッフの笑顔がよかった」というコメントがつけば、そのスタッフの「笑顔」が価値になったということです。自分がいることによってお客様にどんな価値を提供できるのか。それを追求することが、売上とモチベーションを両立させるカギになってきます。
監修:柴田 昌孝(しばた まさたか)
店舗ビジネスラボ代表
※当記事は2025年4月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

