メニュー変更する際に有効なメニューミックスの活用法

2025年4月17日

国内流通トピックス

■業種・業態:飲食店  
■キーワード:メニュー変更/メニューミックス/原価率

メニューのイメージ画像

食材価格や人件費などの経費が上昇する中、メニューの値上げもやむを得ない状況です。しかし、客数減少などの影響を心配し、原価上昇分を販売価格に転嫁できずにいる飲食店が多くあります。

日本政策金融公庫が2025年1月に公表した「生活衛生関係営業の景気動向等調査結果」によれば、飲食店の経営上の問題点では、「仕入価格・人件費等の上昇を価格に転嫁困難」が54.7%と最も多く、次いで、「顧客数の減少」(40.3%)、「従業員の確保難」(19.8%)の順となっていて、経費の増加分をメニューへ価格転嫁することに苦慮していることがうかがえます。

値上げは避けては通れないところまできていますが、問題は、どのように価格を見直すかにあります。

食材価格の上昇により、どの程度トータルの原価率がアップしているか。また、値上げやメニュー変更によって、売上と利益はどう変わるかといったシミュレーションを行うのに有効なのがメニューミックスです。

メニューミックスとは

データを見ながら会議をするイメージ画像

メニューミックスとは、飲食店が提供するメニューそれぞれの売上構成比と原価率を基に、トータルの原価率を確認したり、メニュー構成を変更した際に全体の売上や原価率がどう変化するかを試算しながら、調整して決定したりする際に用いられます。

メニューの改訂は、顧客満足度の向上を第一に考えながら、売上や利益を最大化することが目的です。

メニューミックスを活用することで、メニュー価格や原価率の最適化を考える際に役立ちます。

では、メニューミックスによる全体の原価率の求め方を説明します(図表1)。

①メニューそれぞれの原価率を計算します。

レシピがあればそれぞれの材料の使用量と単価から原価を算出し、メニュー販売価格に対する割合すなわち原価率を計算します。

レシピを作っていない場合は、みなしでおおよその原価と原価率を決めておきます。

②1カ月など、一定期間のメニュー別の売上高と売上構成比を計算します。

POSレジをお使いであれば個々のメニューの売上は集計されますし、POSレジによって原価率を設定しておくことで、一定期間の売上構成比と原価率まで計算してくれるものもあります。

③それぞれのメニューの販売価格、原価、原価率、出数、売上高、売上構成比をメニューミックス表に記入し、原価率と売上構成比を掛けた相乗積(※)を計算します。

④それぞれのメニューの相乗積の合計が全体の原価率になります。

⑤原価率から利益率を計算し、売上高に掛けると利益が算出できます。

(※)相乗積とは、二つ以上の数を掛け合わせて得た積のことです。

メニューミックス表(図表1)

メニューミックス表(図表1)の画像

メニューミックス表を使った試算方法

テーブルに置かれたノートパソコンのイメージ画像

続いて、メニューミックスを使ったメニュー変更時の試算例を紹介します。メニューそれぞれの原価率と売上構成比を掛け合わせた相乗積は、原価に与える影響度を示し、その合計が全体の原価率になります。

そこで、食材の値上がりの影響を考え、それぞれのメニューの原価を見直し、一部のメニューの値上げを行った際の出数の変化を予測して、価格改定後の売上高、原価率を試算します。

販売出数を予測するのは難しいのですが、過去の販売実績などを参考に予測して、試算してみましょう。

図表2の例では、図表1からメニューB、D、Eを値上げした際の出数の予測を立て、全体の原価率がどう変化するか、また利益はどう変わるかを試算しています。

メニューミックスによる試算例(図表2)

メニューミックスによる試算例(図表2)の画像

メニューミックスのポイント

メニューのイメージ画像

メニューミックスを考えるには、ABC分析やメニューマトリクス分析を活用して、自店の販売傾向や利益貢献度を測る必要があります。その上で、メニュー価格の見直しやメニューの入れ替えを行った際に、どのように売上、利益が変化するのかメニューミックスを使って検討します。

メニュー改訂後の出数を予測するのは難しいのですが、やみくもに値上げしたり、メニューを入れ替えたりするよりも見通しを考えやすく、販促にも力が入りますし、目標にもなるはずです。

では、メニューミックスを使った対応策例を3つ取り上げます。

  • 利益貢献度が低い商品の見直し 出数の少ないメニューは廃止するか、内容を見直すなどして売上を伸ばせる可能性を探ります。
  • 原価率を下げるための売り方を工夫する 原価率の低い商品の出数を増やすと全体の原価が下がるので、推奨メニューとして口頭で薦めたりPOPを使ったりして、出数を増やすようにします。
  • メニューブックのメニューの位置を工夫する 看板メニューや売りたいメニューを明確にするために、メニューブックの目につきやすい位置に表示します。

メニューミックスは、飲食店にとって戦略的な意味合いを持つ重要な考え方です。

現状のそれぞれのメニューの売上と原価で、全体の原価率や利益はどうなっているか。

またこのまま食材が値上がりして原価率が上がった場合に、全体の利益にどれだけ影響するか。

さらに、メニューの値上げによって出数や売上、原価率、利益はどう変化するかを試算することで、数字に裏打ちされた判断できるようになるでしょう。

(文)飲食店経営 編集部
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2025年3月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。