はじめてでも、2回目以降も安心の
「IT導入補助金2025」
2025年6月16日
国内流通トピックス
■業種・業態:飲食店
■キーワード:IT導入補助金/従業員50人以下/補助金額/ITツール

補助金の中でも、はじめてでも申請しやすくて、毎年受け取ることが可能なIT導入補助金について紹介します。従業員数が6人以上ならば、まずはIT導入補助金の申請をおすすめします。
なお、補助金にはその年の政策が反映されるため、内容が前年とまったく同じということはなく、毎年少しずつ変わります。申請時期も、毎年異なります。
もらわなければ損なIT導入補助金2025

IT導入補助金の名称には、正式には西暦が併記されています。
今年はIT導入補助金2025ですので、ここからは「IT導入補助金2025 公募要領」に従って紹介していきます。補助金名に西暦が併記されているのはこれだけで、毎年春から数回募集が行われています。
セルフオーダーや予約管理なども補助金の対象となっていて、飲食店も受給しやすく、補助金の原資となる税金を払っている事業から見れば、申請しなければもったいない補助金の一つといえます。
従業員50人以下の飲食店が対象

対象となるのは中小企業・小規模事業者で、飲食店の場合、従業員50人以下ならば申請できます。大手企業に比べて、なかなか進まない中小企業のIT化を促進するためにつくられた補助金のため、他の補助金にはない大きな特徴があります。
それは申請のハードルをできるだけ低くして、はじめての企業でも、2回目以降の企業にも、使いやすくしていることです。毎年補助金をもらいながら、IT化を促進することも可能です。そして中小企業の生産性を向上して、毎年賃上げをしていくのが、国の大きな狙いなのです。
はじめてでも安心のサポート体制

IT導入補助金2025の特徴を見ていきましょう。まずは、多くの補助金で求められる3~5年の事業計画書を作成する必要がないことが挙げられます。また、補助金申請がはじめてでも不安がないように、万全のサポート体制がとられています。
審査のポイントになるのが、労働生産性の向上率です。1年後に3%以上と、3年間に年平均3%以上成長するという事業計画を策定しなければなりません。この労働生産性の向上の目標が、実現可能で合理的であることがカギとなります。実現するためには、経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っていることが重要になってきます。
登録されているIT導入支援事業者のITツールを選ぶことで、その支援事業者がこうした成長の策定についても、サポートをしてくれることになっています。そして、アフターサポートまで行います。
なお、前年度に交付されていれば、労働生産性は3%ではなく、4%に引き上げられます。1%だけですが、2回目以降は条件が厳しくなるというわけです。
最大450万円の4プロセスはハードルが高い

支給内容は、図表1のようにITツールの「1~3プロセス」で、ソフトウェア購入費やクラウド利用費などの2分の1、最大で150万円が補助されます。「4プロセス」だと最大で450万円と大きくなりますが、後述するように「賃上げ」が必須となります。わかりにくいのですが、図表1の支給額の3分の2を補助する賃上げ特約とは異なります。
この「1~3プロセス」「4プロセス」というのは、図表2の「業務プロセスなど」を示しています。この中の「業務固有」というのは、飲食業だけに設けられているITツールのことです。それぞれの業種ごとに、ふさわしいものが設けられています。
それでは、「セルフオーダーシステム」を導入したいと考えると、プロセスはどうなるのでしょうか。業務プロセスは「業種固有」の1プロセスとなります。
さらにグルメサイトのネット予約や電話予約を一元管理したいのであれば「予約管理」で、業務プロセスは「顧客対応・販売支援」が該当し、合計2プロセスになります。
さらに電話でよく聞かれるような「週末の開店は何時ですか?」「休業日はありますか?」のような、よくある質問に対して「チャットボットシステム」を導入したいのであれば「汎用」に該当し、合計3プロセスになります。それぞれ、図表2では赤字で示しています。
4プロセスにすれば補助金額が大きくなりますが、前述したように「賃上げ」という要件が追加されます。これは事業計画期間に、給与⽀給総額を年平均成⻑率1.5%以上増加させて、事業場内最低賃⾦を地域別最低賃⾦にプラス30円以上の⽔準にする賃⾦引き上げ計画を策定し、従業員に表明するのが必要になるということです。
補助金額100万円以下が45%

2023年の採択結果を見ると100万円以下が45%に対し、450万円で採択されたのは、わずか0.1%とハードルが非常に高くなります。そして、採択されても賃上げが達成できないと返還が必要になるため、注意が必要です。
採択されやすくなるには、無理しないで、毎年2プロセスぐらいを導入していくこと。1年目はセルフオーダーとシフト作成、2年目は予約管理と出退勤申請・管理というやり方もあります。
「通常枠」の採択率を見ると23年度が75.3%、24年度が65.88%でした。採択率を高めるには、審査の加点項目を増やすこと。加点対象は、「クラウド対応」などのほか、公募要領に記載があるので、よく確認しましょう。
ITツールの見つけ方

ITツールは、「IT導入補助金2025」サイトのメニューで「ITツール検索」を選択。セルフオーダーであれば、例えば、ツール名に「Order」と入れて検索すると「Relax Order NS」とできます。
または、「IT導入支援事業者」から「東芝テック」といったように探すこともできます。「絞り込みオプション」で飲食業向けを選ぶのもいいでしょう。
IT導入補助金2025の公募スケジュールは図表3の通りです。この後、追加発表される見込みなので、サイトをマメにチェックして確認しましょう。IT導入補助金2024とIT導入補助金2023は、ともに7回公募がありました。
なお、本稿ではメインの通常枠を紹介しましたが、この他、インボイス枠、セキュリティ対策推進枠、複数社連携IT導入枠があります。
●図表1 IT導入補助金2025(通常枠)の支給内容
対象 | 支給額 | 対象経費 | 限度 |
---|---|---|---|
1~3プロセス | 経費×1/2、または2/3(地域別最低賃金+50円以内が全従業員の30%・3カ月以上) | ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用料最大2年分)、導入関連費 | 150万円 |
4プロセス以上 | 450万円 |
●図表2 対象となるITツール
業務プロセスなど | ITツール |
---|---|
顧客対応・販売支援 | 無人受付システム、無人チェックイン、順番発券機システム、予約受付台帳など |
決済・債権債務・資金回収 | 決済(POSレジ、券売機システム、多通貨対応)、発注・仕入管理など |
供給・在庫・物流 | 取引条件管理(取引先、納入条件)など |
会計・財務・経営 | 予算統制、資金繰り計画など |
総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス・統合業務 | 出退勤申請・管理、シフト作成、給与計算、社内向け研修ツール(階級別研修、セキュリティ研修、eラーニング作成・配信機能)など |
業種固有(飲食業) | セルフオーダーシステム、オーダーエントリーシステム、テーブル管理(注文履歴、配席・配膳状況、来店履歴、客層分析)、飲食店舗向けレシピ・メニュー管理(調理工程)、食材棚卸・店間移動・廃棄管理複数店舗対応、店舗改善業務管理(従業員満足度、顧客満足度、QSCチェック) |
汎用 | チャットボットシステム、OCRなど |
<IT導入補助金2025(通常枠)の公募スケジュール>
開始 | 締切 | |
---|---|---|
第1回 | 2025年3月31日 | 5月12日 |
第2回 | ― | 6月16日 |
第3回 | ― | 7月18日 |
※2023年度、2024年度はともに7回募集がありました
このように「IT導入補助金2025」は中小飲食店に取ってハードルの高いIT投資を協力にサポートしてくれるものです。ぜひ、申請を検討されてはいかがでしょうか。
(文)飲食店経営 編集部
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭
※当記事は2025年5月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。