小規模店舗の販路拡大を支援する「持続化補助金」

2025年6月16日

国内流通トピックス

■業種・業態:飲食店  
■キーワード:事業計画書/販路開拓/創業型/自然災害/公募

小規模店舗で働く人のイメージ画像

「持続化補助金(小規模事業者持続化補助金)」は、小規模店舗などを対象として、販路開拓を支援する補助金です。対象となるのが、飲食店が含まれる商業・サービス業では従業員数が5人以下、これより多い従業員がいる店や会社は対象外です。
では、持続化補助金のポイントを紹介しましょう。

事業計画書の作成のサポートが得られる

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持続化補助金の特徴は3つあり、まずは補助金の審査対象となる事業計画書の作成のサポートを商工会議所・商工会で得られることです。補助金申請の入門編としては最適であり、どちらも非会員でも相談に乗ってもらえるので、最寄りの商工会議所・商工会に問い合わせてみましょう。

ただし、商工会議所・商工会によって、専門相談員が事業計画書の書き方を一から丁寧に教えてくれるところと、アドバイスのみのところと、さまざまなようです。
知識がないまま問い合わせるよりも、中小企業庁の「ミラサポPlus」というサイトに、事業計画書の書き方の解説があります。

まずはこのサイトで「小規模事業者持続化補助金 事業計画書」と検索して、じっくり読むことから始めましょう。不明な点などは、事業計画書を書いてみてから、相談したほうがよいでしょう。

事業計画書は「会社の羅針盤」であり、経営者が書けるようになると、役員や従業員などと情報共有しやすくなり、補助金や融資の申請にも役立ちます。

ネットを使った販路開拓にも使える

ノートパソコンの画面を見ながら笑顔のふたりのイメージ画像

2つ目は、ネットを使った販路開拓にも使えることです。

ホームページの開設や更新、SNSだけでなくバナー広告などとともに、テレビ・新聞・雑誌への広告出稿、新聞折り込みチラシ、展示会への出展など、オフラインにも使うことができます。

ただし、ウェブサイト関連費のみによる申請はできません。ウェブサイト関連費は、補助金交付申請額の4分の1(最大50万円)が上限だと定められています。

ここからは、対象となる経費について詳しく説明していきます。

飲食店にとって図表1の対象経費の機械装置等費に当たるのが、生産・販売拡大のための鍋・オーブン・冷凍冷蔵庫、高齢者向け椅子やベビーチェアなどです。これらを今あるものを性能の良いものに取り替えたり、更新したりするのは対象外となります。

広報費がテレビ・新聞・雑誌への広告出稿などのオフラインの販路開拓、ウェブサイト関連費がオンラインの販路開拓で、スマートフォン用のアプリなどシステム開発が加わります。

委託・外注費には店舗改装・バリアフリー化工事、利用客向けトイレの改装工事などが含まれます。
前述のように、ウェブサイト関連費は上限が4分の1(最大50万円)と決まっているので、広報費や新商品開発費などと組み合わせて、ウェブサイト関連費のボリュームを少なくするのがコツになります。

事業内容が異なれば毎年申請可能

申請書のイメージ画像

3つ目は、一般型の補助金額は50万円(最大250万円)と低いのですが、毎年申請できることです。ただし、前回の「補助事業実施期間終了日」の翌月から1年以上経過していることと、事業計画書の内容を変える必要があります。同じ内容では審査が通らないということです。

例えば、1年目の事業計画では「お店を改装し、和式トイレを洋式にして、立ち飲みコーナーを新設、同時にホームページを開設」として、採択されたとします。

2年目はこの内容を変えなければなりません。「外国人客向きの新メニューの開発と写真入り英語版メニューの作成、ホームページの更新、SNSの開設」のように、外国人客の増大を狙ったものにします。そして、3年目は「急速冷凍冷蔵機器導入で量産、地元ローカル紙に広告を出稿」といった感じに、補助金の目的である販路開拓を入れ込むのがポイントになります。

これに加えて、申請書には「前回の補助事業との違い」を明らかにしておく必要があります。

持続化補助金の公募スケジュールは、図表2の通り。この後も追加発表される見込みなので、サイトをマメにチェックして確認しましょう。

創業型ならば最大250万円で他の特典もある

NEW OPENと書いてある黒板と時計のイメージ画像

持続化補助金には創業型もあり、図表1のように、起業後3年以内であれば、補助金が200万円と大きくなります。ただし、「特定創業支援等事業」という支援を受けた証明書が必要になります。

これは産業競争力強化法に基づき、国の認定を受けた自治体が実施するセミナーや個別の創業面談を受け、創業に必要な知識(経営・財務・販路拡大・人材育成)を学べるもの。宮城県、神奈川県、大阪府、福岡県など21府県では、すべての市町村で認定されています。

特定創業支援等事業は2014年から設けられている制度なのですが、ほとんど知られていません。本年度から、知名度がある持続化補助金に「創業型・第1回」として新設することで、利用者増を狙ったと予想されます。

この証明書の交付を受けると、次のような特典があります。

  1. 会社設立時の登録免許税の半額軽減:法人登記には最低でも株式会社設立は15万円かかりますが、それが7.5万円に軽減されますが、登記後では認められません。
  2. 日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」の貸付利率が引き下げられること。
  3. 自治体独自の創業促進補助金や創業融資の金利優遇が、受けられる可能性があること。

創業当初は資金繰りに苦労することが多いので、有効に活用したいものです。創業前であれば非常に有利で、創業後でも2や3の対象になります。最寄りの市町村に「特定創業支援等事業について聞きたい」と問い合わせてみましょう。

自然災害の被災時にも支援

休業中の店のイメージ画像

最後に、ぜひ覚えておいてほしいのが、持続化補助金には災害支援枠があり、自然災害の被災時に支援する補助金としても使われるということです。

2025年5月には、石川県、富山県、福井県、新潟県に事務所や店舗があって、2024年能登半島地震、能登豪雨により被害を受けた小規模事業者に対して、7次公募の受付を行っていました。店舗の破損や設備の破壊など直接被害ならば、最大200万円まで支給されます。

また、間接被害ならば最大100万円になります。間接被害とは、地震や豪雨の影響により、前年比20%以上減少した店が対象になるということです。

どちらも補助率は3分の2、または定額です。要件を満たせば費用の満額が出るというわけです。対象となるのは、図表1の機械装置等費などに加えて、設備処分費、修繕費、車両購入費です。

これまでも、持続化補助金は2016年の熊本地震、17年の九州北部豪雨災害、19年の台風19号、20号、21号などに、いち早く対応してきました。

事業再建に向けて、被災事業者が自ら策定した経営計画に沿った販路開拓に要する経費に対して、補助金が出ます。経営計画の策定には、商工会・商工会議所の経営指導員のアドバイスが得られることになっています。

近年、台風や大雨、地震といった自然被害が大きくなっています。被災したときの大きな助けになるのも、持続化補助金なのです。

●図表1 持続化補助金の支給内容

対象 支給額 対象経費 限度
一般型(販路開拓) 経費×2/3、または3/4(賃金引き上げ特例のうち赤字事業者) 機械装置等費(鍋・オーブン・冷凍 冷蔵庫、高齢者向け椅子やベビーチェアなど)、広報費(テレビ・新聞・雑誌への広告出稿、新聞折り込みチラシなど)、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、新商品開発費、借料、委託・外注費 50万円(インボイス特例対象事業者+50万円、賃金引き上げ特例対象事業者は+150万円)
創業型(起業後3年以内) 経費×2/3 200万円(インボイス特例対象事業者+50万円)
一般型:
https://r6.jizokukahojokin.info/(商工会議所)、
https://www.jizokukanb.com/jizokuka_r6h/(商工会)
創業型:
https://r6.jizokukahojokin.info/sogyo/

●図表2 持続化補助金の公募スケジュール

対象 開始 締切
一般 創業
第15回 2024年2月9日 3月14日
第16回 2024年5月8日 5月27日
第17回 第1回 2025年5月1日 6月13日
第18回 第2回 未発表 未発表

※例年、年2回以上行われています

以上、小規模店舗では、なかなか販促費に費用を割くことができないものです。
販路開拓を支援する持続化補助金を有効に活用することを検討されてはいかがでしょうか。

(文)飲食店経営 編集部
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2025年5月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。