「ワケあり商品」はなぜ人気がある?
数ある商品やサービスの中から、私たちはなぜそれを選んでしまうのか?

2025年7月15日

お店づくりトピックス

■業種・業態:小売業  
■キーワード:行動経済学/デメリット/信頼性

奮発して蟹を購入しようとしている男性のイラストイメージ

購入後の満足度も高い「ワケあり商品」

アウトレットの服や雑貨、規格外野菜やケーキの切れ端など、「こんな理由でお安くなっています」という「ワケあり商品」は、衣料品から食料品まであらゆるカテゴリーで見られます。ホテルにおいても、部屋からの眺望が良くないなどの理由で宿泊料が安くなったりします。レストランの平日限定、居酒屋のハッピーアワー、小売店の雨の日セールなど、比較的お客様が少ないときに提供されるサービスも、広い意味で「ワケあり商品」と言ってもいいでしょう。

こうした「ワケあり商品」に共通するのは、価格に敏感なお客様に対して、それほど重視されない商品のデメリット(規格外、在庫処分品等)を提示し、商品の品質には問題ないことを説明した上で、価格が安いというメリットを強調し、購買意欲を誘っている点です。

顧客満足度は、購入後の評価と購入前の期待値の差によって決まるため、期待値を低めに設定する「ワケあり」は、購入後の評価が同じでも満足度が高まる傾向があります。提供する側にとっても、規格外商品の販売や在庫処分で廃棄ロスをなくすことができ、効果的な販売方法といえます。

デメリットも伝え、信頼性を高める

メリットとデメリットの両方を伝えることによってお客様からの信頼を得るという手法は、広告では広く使われています。これは「両面提示の法則」と呼ばれ、デメリットをあえて伝えることで誠実な印象を与え、その商品やサービスへの信頼性を高める効果があります。「まずい!もう一杯」というセリフで大ヒットした青汁のCMなどがその代表例です。

両面提示広告において、メリットとデメリットのどちらを先に提示した方が効果的かは、受け手がどれだけ広告を詳細に吟味して理解しようとするかによって違いがあることがわかっています。

消費者の関心が高く、詳細に吟味する商品やサービスでは最初にポジティブ情報を、それほど関心が高くない場合は、先にネガティブ情報を提示した方が、最終的な評価が高まると考えられています。

監修:阿部 誠(東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)

※当記事は2025年7月時点のものです。
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