人手不足をロボットなどで支援する「省力化投資補助金」

2025年7月15日

国内流通トピックス

■業種・業態:飲食店  
■キーワード:省力化投資補助金/書類/一般型

食事のイメージ画像

2024年に新設された「中小企業省力化投資補助金」(以下、省力化投資補助金)は、中小企業や小規模事業者を対象に、掃除ロボットや券売機など、人手不足を補う設備やシステムの導入を支援する制度です。半分が補助されますので、実質、配膳ロボットなどが半額で導入できるという注目の補助金です。

知っておきたい3つの特徴

「SUPPORT」と書かれた積み木のイメージ画像

この補助金には、3つの大きな特徴があります。

まず、申請受付に期限(2026年9月末まで)があることです。
「助成金」は法改正や制度改定と連動するものが多く、一定期間のみ申請可能な「暫定措置」が珍しくありませんが、審査制の「補助金」ではこうした期限付きの設計はまれです。

次に、リースも補助対象になる点です。
補助金は「後払い」のため、設備やシステムの導入時には、まず自社で購入し、実績報告の確認を経てから、経費の半額や3分の1などの補助金が支給される仕組みです。つまり、事前に自己資金や融資で補う必要があるというわけです。助成金も設備の購入がある場合は、後払いです。

リースを活用すれば、こうした資金の準備が不要で、初期投資を抑えつつ導入が可能。中小企業がリース会社と契約を締結し、リース会社が販売事業者から対象製品を購入するかたちとなります。

3つ目に「カタログ注文型」「一般型」という2つのタイプがあることです。
まずは前者の「カタログ注文型」から説明します。

製品を選びやすい「カタログ注文型」

カタログ注文型は、カタログに登録されている省力化製品の中から、業種や業務プロセス、課題に合った製品を選び、その販売事業者と共同で申請するものです。

IT導入補助金と同じように申請には、登録されている販売事業者のサポートが得られ、申請から交付決定まで最短で1カ月とスピーディです。また、導入後のアフターサービスも受けられるので安心です。

先述したように2026年9月末までの期間限定の補助金で、この間に決められた公募期間はなく、補助金では珍しく、いつでも申請が可能となっています。

補助金額は従業員数によって異なり、従業員21人以上の企業ならば1000万円、大幅な賃上げを行う場合は1500万円まで支給されます(詳細は図表1参照)。補助金の支払いが完了した後には、2回目以降の申請も可能で、補助上限額に達するまで申請できます。できるだけ早く申請したほうが有利というわけです。

申請に必要な書類について

電卓と筆記用具のイメージ画像

この補助金では、人手不足の証明が必要です。次の3つの中から1つ選択し、それぞれの理由に必要となる書類を提出する必要があります。

  1. 限られた人手で業務を遂行するため、直近1カ月の従業員の平均残業時間が月30時間を超えている
  2. 整理解雇ではない離職・退職により従業員数が前年度比で5%以上減少している
  3. 採用活動で求人を掲載したものの、充足には至らなかった

飲食店を対象とする製品には、清掃ロボット、配膳ロボット、券売機、自動精算機、入出金機、スチームコンベクションオーブン、自動フライヤー、食品包覆機(食品包あん機、餃子成型機など)があります(2025年6月現在)。製品は順次追加されています。

販売事業者検索や製品カタログ検索もできます。

審査のポイントになるのが、労働生産性の向上率です。カタログから選んだ製品を用いて、1年後に3%以上と、3年間に年平均3%以上の成長の策定をしなければなりません。2回目以降の申請を行う場合は、年平均4%になります。

事業計画を作成する際のポイントは、大きく次の3点です。

  1. 製品をどのように活用するか
    選定した製品を、現場でどんな場面・工程で使うのかを明確にします。例えば「清掃ロボットを営業時間前の店内清掃に使用」など、具体的に示すと効果的です。
  2. どんな省力化効果が見込まれるか
    導入製品が備える機能や性能によって、どのような業務が効率化・自動化されるのかを説明します。「人の手による作業がなくなり、1日あたり〇〇時間の削減につながる」など、効果をできるだけ数値で表現すると説得力が増します。
  3. 省力化で生まれた “人と時間” をどう活かすか
    省力化によって生じた余力(人員や時間)を、どの業務に再配分するのかを明示します。例えば「空いた時間を顧客対応に充てる」「既存スタッフの多能工化(複数業務を担える人材育成)を進める」など、前向きな活用計画が評価されます。

自由に選べて最大1億円の「一般型」

ノートパソコンを見ながら話し合うふたりのイメージ画像

2025年からは、オーダーメイドで設備導入が可能な「一般型」も新設されました。こちらは公募回数型で、最大1億円の大型補助金(詳細は図表2参照)となっており、詳細な事業計画書の提出が求められます。

補助対象は中小企業者・小規模企業者に加え、一定の条件を満たす「特定事業者の一部」も含まれます。例えば、サービス業・小売業(飲食店を含む)の場合、資本金10億円未満かつ従業員数300人以下であれば対象となる場合があります。詳細は事務局への確認をお願いします。
一般型では賃上げが必須であり、この他、主な要件として次の3点が設定されています。

  1. 労働生産性の年平均成長率4%以上の増加
  2. 1人あたり給与支給総額の年平均成長率が、店舗のある都道府県の最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、かつ給与支給総額の年平均成長率が2.0%以上
  3. 事業所内最低賃金が、都道府県の最低賃金+30円以上であること

人手不足の解消に向けてオーダーメイドの設備などを導入し、3〜5年の事業計画期間内で付加価値額の増加が見込まれる計画を策定する必要があります。審査項目や加点要素の詳細は、公募要領の「5-2 書面審査」に明記されているため、事業計画書の作成の際は熟読が必須です。

なお、「人手不足の状況にある」と申告する場合のみ、カタログ注文型と同様の証拠書類が求められます。

第1回の採択結果が公表されていて、採択率は約68.5%と高水準です。設備投資系の補助金として知られる「ものづくり補助金」は、2025年の採択率が17次公募で約29.4%、18次公募で35.8%と、省力化投資補助金よりも低めです。

ものづくり補助金は年々競争が激化しており、近年の採択率は30〜50%台で推移。特に直近では30%台前半にまで下がっています。省力化投資補助金のほうが狙い目だと言えます。補助金申請額は1,500万円以上~1,750万円未満が最も多くなっています。

公募スケジュールは図表3の通り。第3回の公募開始(公募要領の発表)が6月下旬、申請受付が8月上旬から行われる予定です。中小企業省力化投資補助金のサイトで確認しましょう。

<図表1> カタログ注文型の支給内容

対象 支給額 対象経費 限度
従業員5人以下 経費×1/2 カタログ掲載の機械装置、工具・器具、専用ソフトウェアなど 200万円(300万円)
6~20人 500万円(750万円)
21人以上 1,000万円(1,500万円)

カッコ内は大幅な賃上げを行う場合。事業場内最低賃金を45円以上増加させ、給与支給総額を6%以上増加させること。申請時に賃金引き上げ計画を従業員に表明すること。

※図表の詳細については、中小企業省力化投資補助金(https://shoryokuka.smrj.go.jp/)を参照下さい。

<図表2> 一般型の支給内容

対象 支給額 対象経費 限度
従業員5人以下 経費×1/2、
2/3、1/3
設備費、システム構築など 750万円(1,000万円)
6~20人 1,500万円(2,000万円)
21~50人 3,000万円(4,000万円)
51~100人以上 5,000万円(6,500万円)
101人以上 8,000万円(1億円)

カッコ内は大幅な賃上げを行う場合。事業場内最低賃金を45円以上増加させ、給与支給総額を6%以上増加させること。申請時に賃金引き上げ計画を従業員に表明すること。

<図表3> 一般型の公募スケジュール

  公募開始 申請受付 締切 採択発表日
第1回 2025年1月30日 3月19日 3月31日 6月16日
第2回 2025年4月15日 4月25日 5月30日 8月中旬
第3回 2025年6月下旬 8月上旬 8月下旬 11月下旬
第4回以降 未定 年3~4回予定

(文)飲食店経営 編集部
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2025年6月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。