通行客を来店客に変える「歓迎感」が伝わる店づくり

2025年10月22日

お店づくりトピックス

■業種・業態:小売業  
■キーワード:集客力/ファサード/店頭演出/ブラックボード

通行客を来店客に変える「歓迎感」が伝わる店づくりのイメージ

売上が低迷している店の90%は「客数が増えない」という悩みを抱えています。その大きな理由が「店舗の視認性の低さ」と「入店のしづらさ」です。店舗の顔であるファサードを改善し「歓迎感」を出すことで、通行客を来店客に変える手法を紹介します。

売上増に不可欠な入店数アップ
写真で自店の「見え方」を確認

小売店や飲食店の売上が思うように伸びない主な原因は、期待通りの集客ができていない、あるいは新規のお客様の数が減っていることなどです。入店数が増えれば、売上もアップします。お客様に入店していただくためには「お店の存在を知ってもらう(視認性を高める)こと」が重要であり、さらに入店したいと思ってもらえる「歓迎感のあるお店」にする必要があります。

そこで、まず行なっていただきたいのが、通行人の目線で店舗の写真を撮り、自分の店がどのように見えているのかを確認することです(図1)。あなたのお店は10m以上離れた地点からもしっかり認識できたでしょうか。

図1 自店の「見え方」をカメラで確認する

集客力の高いファサード
5つのポイント

ある程度離れた場所からでもお店の存在を確認でき、一目で入ってみたくなるような「歓迎感」のある店にするには、ファサードが何よりも重要です。ファサードはフランス語で建物の外観や正面を意味し、店舗の色やデザインだけでなく、看板やのぼり、照明、メニューボード、ディスプレイなど、通行人の目に入る様々な要素が含まれます。集客力の高いファサードのポイントは次の5つです。

  1. 何屋か一目で分かる
  2. 遠くからでも分かる
  3. 店内の様子が分かる
  4. 入口間口が広い
  5. 入口周辺の演出をしている

まず重要なのは「①何屋か一目で分かる」ことです。通行客は入店するかどうか判断するときに、業種業態や商品・サービスの内容、価格帯、雰囲気などを店のファサードから判断します。例えば、ラーメン店なのに、店の前に牛丼やパフェなど、様々なメニューの看板やポスターが貼り出されていたら、いったい何の料理を売りにしているのか分からず、新規客は入店に二の足を踏んでしまいます。

歩いている通行客は目に入る情報量が限られており、A型看板などの販促ツールは2つで十分です。飲食店なら1つは「今月のおすすめバーガー」のように、何の店で何を売りにしているのか、店舗の5〜6m手前からもはっきり分かるものを、もう1つは店の前で入店を後押しする「商品のラインナップ」や「店のこだわり」が伝わるものを置くのが基本です。

販促物は通行客の動線に向け視認性を高める

次に「②店内の様子が分かる」ことが大切です。外から店内の様子が分からないと、新規客は不安に思います。ガラス張りのお店なのに、店内が見えないほどポスターやPOPが貼ってあったり、入口付近に背の高い什器などがあったりして店奥まで見通せないと、入店をためらう要因になります。2階や地下にある店舗の場合は、店内の様子が分かる写真を看板に貼っておくとよいでしょう。

「③遠くからでも分かる」ようにすることも入店率アップに欠かせません。通行客があなたの店を見つけ、入るか入らないかを判断する時間は約10秒です。店に近いところより、少しでも遠くから認識できる方が入店の可能性が高くなります。図1で撮影した写真をもとに、自店の看板や販促物がきちんと見えるかどうかを確認しましょう

視認性を高めるために工夫したいのが、看板をはじめとする販促物の「向き」です。A型看板などの動かせる販促物は、店舗の正面と平行に置くのではなく、通行量の多い方の動線に向けて45度の角度で設置します(写真1)。これだけで視認性が抜群によくなり、入店率が高まります。また、什器や商品、マネキンなどのディスプレイも通行客の多い方の動線に向け、自然に目に入るように置くと、視認性が高まるだけでなく「歓迎感」が生まれます(写真2)。什器や販促物を動かせない場合は、商品を通行客の方に向けて並べるだけでも印象が変わります(写真3)。

視認性を高めるには「色」を活用する方法があります。色は形やシルエットに比べ、遠くからでも認識しやすく、印象に残ります。例えば、お店のロゴの色が決まっているのなら、その色をすべての販促物に使って「色のかたまり」をつくると、遠くからでも認識しやすくなります(写真4)。

写真1.写真2.写真3.写真4.写真5

店頭演出で目を引きつけ通行客の素通りを防ぐ

「④入口間口が広い」店は、明るくオープンなイメージがあり、間口が広ければ広いほど通行客が入りやすくなります。店舗の規模によって異なりますが、入店しやすい入口間口の幅は、大型店で150〜200cm以上、狭小店でも120〜150cmは確保するのが望ましく、少なくとも90 cm以上は必要です。特に狭小店の場合、面積に比して什器や商品量が多くなりがちなので、商品カゴやワゴン、回転什器などはできるだけ撤去するか、店奥へ移動し、奥まで見通せるようにしましょう。

最後に「⑤入口周辺の演出」です。衣料品店ならマネキンを設置してディスプレイする、イタリアンレストランならワイン樽とワインの空瓶を置くなどが代表例ですが、華やかになれば何でもよいわけではなく、店のコンセプトに合っていることが重要です。

効果的な演出は通行客の目に止まるだけでなく、記憶に残りやすく、店名は分からなくても「うさぎのディスプレイの店」「赤い傘のカフェ」といったように、店を思い出させてくれます。

「店頭鮮度」を上げるブラックボードを有効活用

店頭演出は通行客の素通りを防ぎ、入店率を上げる上でも効果があります。平台やショーウインドーのある店舗は、季節や新商品、ライフスタイル、キャンペーンなどに合わせてテーマを決め、最低でも月に1回はディスプレイの内容を変更し、「店頭鮮度」を上げましょう。飲食店やサービス業の場合は、旬の食材やシーズンごとの提案などを行います。平台やショーウインドーが常に同じだと、お客様にとって風景の一部になり、足を止めなくなってしまいます。

また、ブラックボードを活用し、その日のおすすめ商品などを紹介する「ファサード・コミュニケーション」も有効です。例えば、通行客に向けて3秒以内で読める短いメッセージを毎日書くことで親近感を持ってもらい、来店に結びつけることができます(写真5)。

ここで紹介した5つを試すだけでも通行客に「歓迎感」が伝わり、入店率向上に効果的ですが、看板をもっと目立つものに変えるなど、ある程度予算が必要な場合は、中小企業庁の「小規模事業者持続化補助金」を利用するとよいでしょう。この補助金は新規顧客の獲得を目的とした施策も対象になるので、のぼりの購入やフロアマットの新調など、ファサードの改善に活用できます。ぜひホームページなどで確認してみてください。

監修:村越和子(むらこし かずこ)
株式会社ファンクリエイション代表取締役、店舗活性コンサルタント

※当記事は2025年10月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。