POSデータで見る「売上構成比」と「客単価」の分析方法
2025年10月22日
国内流通トピックス
■業種・業態:飲食業
■キーワード:売上構成比/客単価/売上貢献度/収益性

昨今の環境変化により、価格を値上げすると客数が減るという現象が一部飲食店で起きています。一方で、客数を増加させるためには、接客サービス・商品の品質向上、販売促進の強化、お客様に当店をより知って頂く、情報を伝える・広める活動、そして原価の品質向上、原価削減など、様々な取り組みが必要となります。
重要なのは、これらの施策を通じて最終的に売上総利益を以前と同等、またはそれ以上にすることです。これこそが当店を強いお店にすることに繋がるのです。そのためには、まず現状を正確に把握し、どこに改善の余地があるのかを数値で明確にする必要があります。
売上構成比と客単価の分析は、まさにその第一歩となる重要な分析手法といえます。
売上構成比分析の基本的な考え方
まず、売上構成比とは何かについて考えてみましょう。
売上構成比とは、総売上に対する各商品カテゴリーや時間帯の売上割合を示す指標です。この数値を正確に把握することで、「どこに力を入れるべきか」「どの部門が利益に貢献しているか」が客観的に判断できます。
<売上構成比の計算式>
売上構成比(%)= 各カテゴリーの売上÷総売上×100
では、カフェレストランA店(月間売上500万円)での分析例を紹介します。
売上構成比表
| カテゴリー | 売上金額 | 構成比 | 粗利率 | 粗利額 |
|---|---|---|---|---|
| フード | 300万円 | 60% | 40% | 120万円 |
| ドリンク | 150万円 | 30% | 70% | 105万円 |
| デザート | 50万円 | 10% | 60% | 30万円 |
| 合計 | 500万円 | 100% | 51% | 255万円 |
この分析表から分かることは、3つあります。
- フードが売上の60%を占める主力事業である
- ドリンクは売上構成比30%だが、粗利率70%と高収益である
- デザートは売上構成比10%と低いが、粗利率60%と改善余地がありそうだ
時間帯別売上構成比の分析
次ぎに同じ店舗の時間帯別データを見てみましょう。
■ランチタイム(11:00-14:00)
- 総売上:300万円(月間売上の60%)
- ランチセット:195万円(65%)
- ドリンク単体:60万円(20%)
- サイドメニュー:45万円(15%)
■ディナータイム(17:00-21:00)
- 総売上:200万円(月間売上の40%)
- アラカルト料理:90万円(45%)
- コース料理:60万円(30%)
- アルコール類:50万円(25%)
このデータから読み取れることと改善策について考えてみましょう。
まず、ランチの売上がディナーを上回っています。ディナータイムの問題の一つは、アルコール比率が25%と低いことにありそうです。そのため、ディナータイムのアルコールメニュー強化にまず着手することが必要と考えられると思います。
客単価の分析
客単価は、総売上÷総客数で計算するもので、店舗の収益性を測る最も重要な指標の一つです。単純な平均値だけでなく、その構成要素を分解することで、具体的な改善策が見えてきます。
■カフェレストランA店の例
- 月間売上:500万円
- 月間来客数:10,000人
- 平均客単価:500円
ここからさらに詳しく分析するため、客単価を分解してみましょう。
<客単価分解の計算式>
客単価=主商品単価+サブ商品単価+ドリンク単価+その他
となります。
■カフェレストランA店の客単価の分解
- 主商品(メイン料理)平均単価:350円
- サイド商品平均単価:100円(注文率60%)
- ドリンク平均単価:50円(注文率80%)
- デザート平均単価:25円(注文率20%)
この数字で計算すると
350円 + (100円×0.6) + (50円×0.8) + (25円×0.2) = 350 + 60 + 40 + 5 = 455円
になります。
実際の客単価500円との差額45円は、セット割引やその他要因によるものです。
次ぎに注文率向上による客単価アップについて、現在の数値を基に、注文率改善の効果を計算してみましょう。
現在の状況
| 商品カテゴリー | 平均単価 | 注文率 | 客単価への貢献 |
|---|---|---|---|
| メイン料理 | 350円 | 100% | 350円 |
| サイド商品 | 100円 | 60% | 60円 |
| ドリンク | 50円 | 80% | 40円 |
| デザート | 25円 | 20% | 5円 |
| 合計 | - | - | 455円 |
改善目標(注文率向上)
| 商品カテゴリ | 平均単価 | 改善後注文率 | 改善後貢献額 | 向上額 |
|---|---|---|---|---|
| メイン料理 | 350円 | 100% | 350円 | - |
| サイド商品 | 100円 | 75% (+15%) |
75円 | +15円 |
| ドリンク | 50円 | 90% (+10%) |
45円 | +5円 |
| デザート | 25円 | 35% (+15%) |
8.75円 | +3.75円 |
| 合計 | - | - | 478.75円 | +23.75円 |
改善効果は、下記のとおりです。
- 客単価が、23.75円(+5.2%)アップした
- 月間来客数10,000人での増収効果は237,500円だった
- 年間での増収効果は、2,850,000万円となった
商品別売上貢献度の分析
次ぎに、人気メニューの客単価貢献度について考えてみましょう。
<客単価貢献度の計算式>
客単価貢献額 = メニュー単価 × 注文率
人気メニューTOP5の貢献度の分析
| 順位 | メニュー名 | 単価 | 月間注文数 | 注文率 | 売上金額 | 客単価貢献額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ハンバーガーセット | 980円 | 3,500食 | 35% | 343万円 | 343円 |
| 2 | パスタランチ | 1,200円 | 2,500食 | 25% | 300万円 | 300円 |
| 3 | サラダセット | 780円 | 2,000食 | 20% | 156万円 | 156円 |
| 4 | カレーライス | 850円 | 1,500食 | 15% | 127.5万円 | 127.5円 |
| 5 | サンドイッチ | 580円 | 1,000食 | 10% | 58万円 | 58円 |
上表の例では、
ハンバーガーセットの貢献度は、980円 × 35% = 343円となります。
ハンバーガーセットは、貢献度が高いだけに品質がブレないように、特に注意する必要があります。
メニュー別の収益性の分析
各メニューの収益性を詳しく分析してみましょう。
メニュー別収益性分析
| メニュー名 | 単価 | 原価 | 粗利額 | 粗利率 | 注文率 | 粗利貢献額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ハンバーガーセット | 980円 | 490円 | 490円 | 50% | 35% | 171.5円 |
| パスタランチ | 1,200円 | 480円 | 720円 | 60% | 25% | 180円 |
| サラダセット | 780円 | 312円 | 468円 | 60% | 20% | 93.6円 |
| カレーライス | 850円 | 340円 | 510円 | 60% | 15% | 76.5円 |
| サンドイッチ | 580円 | 290円 | 290円 | 50% | 10% | 29円 |
この表から読み取れるのは3点です。
- パスタランチは、粗利貢献額が最も高い(180円)
- サンドイッチは、注文率・粗利率ともに改善余地がありそうだ
- そこで、パスタランチの販促強化、サンドイッチの見直し検討が必要である
このように、売上構成比と客単価の分析は、収益性を高めるための重要な指標です。これらの数値を正確に把握し、定期的に分析することをおすすめします。
株式会社横浜マネジメントコンサルティングJPS
中小企業診断士 江草 和彦
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭
※当記事は2025年9月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

