東京23区の繁盛店6店舗に見る
「流行る飲食店のポイント」
2025年11月20日
お店づくりトピックス
■業種・業態:飲食店
■キーワード:繁盛店/SNS/集客効果

東京23区には、昼夜問わず膨大な数の人口が集中している上、連日、様々な地域から大勢の観光客が訪れます。そのため飲食店の新規開業が大変多いのですが、競争が激しいため、廃業件数の多さも桁違いです。しかし繁盛のポイントを確実に押さえた業態を立ち上げたなら、著しい成果が得られます。
「流行る飲食店のポイント」を、ここ2、3年、東京23区内でオープンした6店舗の繁盛店から抽出してみました。
隠れ家風の新店舗は、ミシュラン店出身シェフの「フレンチ+和」が好評
2024年7月、港区新橋にオープンした和食の店は、当地でドミナント展開している企業の新店舗。近隣の姉妹店が予約だけで満席になるので、来店客をお断りするのが心苦しく、ご案内するために出店したと言います。視認性の低い雑居ビル3階の立地ですが、店内は無機質なつくりと植物の緑が調和し、おしゃれな空間。隠れ家のように落ち着ける雰囲気が好評です。
料理のコンセプトは「WASHOKU(和食・話食・輪食)」。同店は社内で「シェフのアトリエ」と位置づけられているだけに、ミシュラン店出身のシェフが積極的に新メニューを開発。「味噌漬けローストポーク」や「和風生ポテトフライ」など、フレンチに和のエッセンスを取り入れた料理は、どれも好評を博しています。
ピンチヒッターとして出店した店ですが、今ではファンが定着。口コミやSNSの投稿を見て来店する人も多く、訪れるたびに新しい料理提案が楽しめるため、リピーターが増加しています。
1年スパンの綿密なスケジュールでSNSやグルメサイトを活用し、集客効果をあげる
2017年に神田神保町で、1号店となる日本酒バルをオープン。その後出店した様々な業態は、いずれも初月から好調に売上げを伸ばしてきました。2023年12月には渋谷に寿司と原始焼きと日本酒の新業態をオープン。するとこの店も、初月の売上げが1,100万円と好スタートを切り、半年後には1,500万円に。
同店の立地選定にはWebマーケティングを活用し、当時増え続けていたインバウンドが集まるエリアとして渋谷に着目しました。とはいえ狙いは日本人客。駅に近い繁華街はインバウンドで埋まり、日本人の商圏はその外側に広がるので、マークシティ渋谷の裏側への出店を決めたのです。
集客については1年のスパンで考えて、最初の2~3か月はSNSで情報を発信し、3~9か月はグルメサイトを活用、その後はリピーターの獲得に注力するという綿密なスケジュールを組みました。
料理については、職人が握る寿司と、豪快な原始焼きという2本柱の組み合わせが新鮮でインパクトがあります。炭火焼も炉端焼きは珍しくありませんが、炭火の周囲に串を打った魚などを焼く原始焼きは、あまり見かけないため新鮮です。また寿司は、職人による握りの他に、お客様が楽しみながら自分で巻く手巻きも揃えてバラエティ感を高めています。
カジュアルな業態にお得感のあるシステムを導入し、若い世代の高い支持を集める
牡蠣料理をメインにした店を、赤坂で5店舗展開していて、なかでも2022年4月にオープンした4号店は、連日若年層の予約で満席状態です。約13坪、26席の店舗規模ながら、月商は高い月で1,000万円を超えるという繁盛ぶりを見せています。
繁盛要因のひとつが、お得感を打ち出したサービスシステム。料理は生牡蠣その他が食べ放題。また、ドリンクはテーブル脇の壁に設けた蛇口から出る焼酎を、セルフでジョッキに注ぎます。それを店内の冷蔵庫内にある50種類余りの割り材で割り、楽しむというシステムです。
赤坂はビジネス街です。しかし交通の便がいいので、SNSの情報に敏感な若い世代をターゲットにした業態なら集客できると判断。そこでカジュアルな業態にお得感のあるシステムを導入したところ、狙い通りヒットしました。
料理は各地から取り寄せる生牡蠣をはじめとする様々な牡蠣料理のほか、肉料理など50種類以上。すべて食べ放題で、時間は120分、料金は予約で1人5,980円(税別)の設定です。
入り口は英国パブ風。奥には個室も用意し、多様な用途ニーズに応える酒場
2024年11月に渋谷にオープンしたのが、「日本の酒場と海外のパブを融合させたイメージ」の店。運営企業は、カフェやレストランなどの飲食店を国内外で86店舗(2025年9月現在)展開しています。2025年の創業30周年を前に、これまでの集大成の店としてこの店を出店しました。
店舗づくりの特徴は、入り口にスタンディングエリアや、職人の技が見えるカウンター席を設けるなど、“見せる”ことの重視。入り口ではパブ使いもできる一方で、奥に入るとダイニングテーブル席や個室、テラス席も用意するなど、幅広い利用シーンに対応しています。
フードは和食をベースに同社流のアレンジを加え、ジャンルレスなつまみを用意。本物志向のお客様に向けて品質を高めた酒場メニューを揃えました。2軒目利用の拡大を図り、海外のパブ文化を取り入れた「火曜日にタコスを」やDJなどのイベントも企画しています。
SNSで来店したお客様が満足し、SNSで拡散-理想的なパターンを見せる8坪の店
2024年10月、渋谷駅から徒歩6分、神泉駅から同3分のビル1階にオープンした、創作料理の店。店舗面積は8坪とコンパクトですが、入りやすい路面店です。周辺にはオフィスビルが多く、道玄坂につながるビル前の通りは1日約1万人もの人が通行。そこで店舗外観にはステンドグラスとネオン管を配しました。それらが非日常感を放つため、思わず足を止める通行者が少なくありません。
また通行量の多さから様々なニーズが見込めます。そのため、本格的な料理が食べられる一方で、サクッと飲んだり、2軒目利用もできたりする新しいポジションの店づくりにトライしました。基本スタイルは、ナチュールワインやワインと、それに合う創作料理を楽しむ店です。ただし店長兼料理長が「バルでもビストロでもない」と話すように、料理のジャンルも酒類も幅広く揃えて、多様なニーズに応えています。
集客に関しては、路面店ということもあり、インスタグラムで主にメニューを発信。ストーリーズを毎日更新して、そこからインスタグラムに誘導するので、アーカイブで全メニューを見られるようにしています。SNSによって来店したお客様が、料理や店の雰囲気、そして接客に満足し、SNSで拡散するという、理想的な流れが出来上がっているのです。
秘伝のタレで食べるジンギスカンの超人気店が、初めて北海道を出て東京に1号店を出店
2024年7月、北海道に本社を置くジンギスカンの人気店が、東京に初出店しました。同社はすすきのを中心に、北海道でジンギスカンの繁盛店を6店舗展開。道外1号店となった上野御徒町の店も、秘伝のタレで食べるマトンのジンギスカンを求める人たちによって、行列店となっています。
同店で使うマトンは札幌から空輸していますが、チルド技術が革新的に進んでいるため、味はすすきのと変わらないとのこと。チルドで仕入れたマトンを開店前に従業員が手切りするので、新鮮で美味しいジンギスカンが提供できます。また売れ行きがよく、マトンの回転が速いことも、常に新鮮な肉を提供できる要因です。
北海道に来るたびに同社の店舗を利用するお客様も珍しくなく、以前から「東京にも出店してほしい」との声が寄せられていました。そして創業70周年を機に新しいことへの挑戦をと、東京進出を決めたのです。
店舗は上野御徒町の春日通り沿いに建つビルの1・2階にあり、視認性は良好。同社三代目の現副社長が、東京中を歩き回って物件を決めました。決め手は「雰囲気がすすきのと似ているから」だとのこと。
最後に今回取り上げた繁盛店の流行るポイントをまとめます。これらのポイントは6店舗すべての共通するものではありません。それぞれの店に特徴があり、それが店の個性としてお客様を引きつける魅力になっています。
繁盛店6店舗から抽出した「流行る飲食店のポイント」
| 出店エリア、立地 | 企業ブランドが浸透しているドミナントエリアに集中出店 |
|---|---|
| 店舗づくり | 目を引く非日常的な外観 |
| 視認性やエンタメ性を重視した店舗レイアウト | |
| 入口にスタンディングエリアを設け、道行く人に賑わいを見せて誘引 | |
| おしゃれな空間づくりながら居心地よく感じさせる店内 | |
| 料理 | 新メニュー開発に積極的 |
| 実力のある職人シェフを起用して本格的な料理を提供 | |
| 長年多くのお客様に愛されてきた「秘伝の○○」がある強み | |
| 飲料 | 各席の壁に蛇口を設け、セルフで焼酎を飲み放題に |
| 種類豊富に揃えたアルコールメニュー | |
| マーケティング 情報発信 |
SNSマーケティングに注力 |
| 立地選定にWebマーケティングを活用 | |
| 大商圏なので、リピーターよりも新規顧客獲得に注力した動画をSNSで配信 | |
| 「地方の有名店が東京進出」という話題をSNSで発信 | |
| サービスシステム イベント |
若い世代に的を絞り、カジュアルな居酒屋で食べ放題や飲み放題を導入 |
| 「○○料理特集」などの効果的なイベントをこまめに開催 |
(注)これらのポイントは6店舗に共通するものではありません
(文)流通ジャーナリスト 渡辺米英
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭
※当記事は2025年10月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

