AIによるパーソナライズ型レシピ提案で10億ドル企業へ

2025年12月22日

海外流通トピックス

■業種・業態:小売業  
■キーワード:AI/レシピ/ミールキット/パーソナライズ

野菜が入った段ボールを開けて喜んでいる女性のイメージ画像

米国のミールキットというと、料理に必要な野菜や肉、魚が切ってあり、必要な調味料が揃っていて、レシピ通りに炒めたり、煮たりするだけで完成というイメージですが、それが変わってきました。

「切ってある食材+レシピ」から、「AIによる食材提案+冷蔵庫の活用」へと進化しているのです。調理の手間を減らすだけでなく、生活のリズムや健康志向に寄り添うように変化しています。

従来型ミールキットとパーソナライズ型の違い

料理をしているイメージ画像

米国の従来型ミールキットは、食材はカット済み、調味料も小分けしてあり、レシピ通りに調理すればレストラン風の料理が完成しました。

ミールキットの購入者の目的は、時短で料理することだったのです。
それがパーソナライズ型の食材・ミールのデリバリーサービスに変わってきています。

A社は、AI(人工知能)を活用して、ユーザーの好みや健康目標に合わせて、毎週、食品の選定を行います。

最近では、調理不要の冷凍食品や温めるだけのメニューも増え、より柔軟な食生活の提案が可能になっています。

A社では、野菜や肉はカット済みではなく未加工の状態で届くため、使い方の自由度が高くなります。

レシピに縛られず、冷蔵庫に入れる食材として、まるで自分で買ってきたかのような感覚になります。

さらに冷凍保存できるメニューもあるので、冷蔵庫の中で「使えるタイミングを待つ食材」として機能します。

忙しかったり、調理時間が取れなかったりしたときは、これらを好きなように使えばいいというわけです。

冷蔵庫に置いておけるという自由が生まれ、無理をして料理する必要がなくなり、食材の無駄が減り、柔軟な食生活が可能になります。

従来型のミールキットはレシピに合わせて食材を揃え、宅配するという流れで、冷蔵庫の存在は無視されていました。

しかし、A社などのパーソナライズ型では、利用者の好みや健康目標に応じて食材を選び、それに合ったレシピが提案されるようになっています。

レシピ通りに作らなくてもいいし、買ってきた食材と届けられた食材とを組み合わせて自分なりに料理してもいいし、提案通りに温めるだけのメニューにしてもいいのです。

冷蔵庫にある食材をもとに、レシピを聞くことも可能です。

つまり、レシピが主役ではなく、食材を軸にレシピが添えられる位置づけになったのです。

パーソナライズ型はどうして登場したか

食卓で手を合わせている男女のイメージ画像

ここでは、なぜパーソライズ型が登場したのかを見ていきます。

まず、米国では共働き・一人暮らしの増加によって、調理するよりも「食べるまでのスムーズさ」が重視されるようになったこと。

ヴィーガン・グルテンフリー・低糖質など健康志向の高まりによって、個別ニーズに対応する必要性が出てきたこと。

そして、AIの進化によってパーソナライズ提案が可能になり、「選ぶ手間」さえも省けるようになったこと。

「選ばなくても済む」「考えなくても済む」へと、体験の質が変化しています。

忙しい中、スーパーに行って「何を買おうかな」と食材を探して選んで購入するという手間がなくなり、さらに「何を作ろうかな」と考えながら冷蔵庫を見るのではなく、AIに相談できるという安心感は、忙しい生活の中で心の支えになります。

A社の会員用ページにはレシピ検索機能があり、食材名を入力すると、それを使ったレシピが一覧で出てきます。

例えば、「ズッキーニ」と入力すれば、ズッキーニ中心のレシピが提案されます。

さらにChatGPTではありませんが、目的特化型のAIとして、食材選びや調理提案に特化した応答を返すことができるようになっています。

対話も可能で、「ズッキーニとニンジンが余ったんだけど、何か作れる?」と聞くと、いくつかのレシピが返ってきます。

冷蔵庫を見て迷っていた時間が、ChatGPTとの会話に変わったのです。

パーソナライズの要になる最初の質問

食卓のイメージ画像

A社では、注文する前に、質問に答えることから始まります。

まず、「何人家族か」「子どもはいるか」など世帯構成から始まります。これにより、提案される食材の量やレシピの分量が調整されます。そして、子どもがいる場合、辛味やアレルゲン、食べやすさなどを考慮した提案が優先されます。

さらに「体重を減らしたい」「筋肉を増やしたい」「血糖値を安定させたい」など、健康目標や体重管理を選択できます。AIはこれをもとに、栄養バランスを考慮しながらカロリーを調整します。

この他、食の好みでは、肉や魚を食べない「ベジタリアン」だけではなく、肉は食べないが魚は食べる「ペスカタリアン」など、細分化された選択肢が用意され、チェック形式で回答する仕組みになっています。

栄養面では「低脂肪」「カロリーを意識する」「低コレストロール」「免疫力の向上」など、品質面では「有機農産物」「非遺伝子組み換え」などの基準も選択可能。

さらに、好きな食材や避けたい食材についても同様に回答できるため、提案の精度が高まる設計となっています。

調理にかけられる時間やコスト感覚についても回答します。「10分以内で調理したい」「価格は抑えたい」などの選択肢が用意されており、生活スタイルに合わせた提案が可能になるように質問は作られています。

翌週の提案もするAI

食材を片手にタブレットを確認している女性のイメージ画像

A社は、週ごとのサブスクリプション(定期購入)形式で、翌週の食材とレシピを提案・配送します。

朝昼晩の3食とおやつ(果物とチョコレートなどお菓子)が1日分として構成されており、毎日・毎食分を頼んでもいいし、晩ご飯だけ毎日、あるいは1日置きなど、好みに応じて柔軟に設定できます。

翌週分の注文をするときには、前週の履歴を踏まえて再構成された食材とレシピが表示されます。

このベースになっているのは、初回の質問(好み・アレルギー・調理頻度など)と、週ごとの操作履歴をもとに、AIがユーザーの傾向を学習します。

例えば、「ズッキーニはいつも承認している」「鶏肉は毎回削除している」などの行動が、週の提案に反映されるというわけです。

さらに食材の履歴を把握しているので、「この食材が余っているかも」とAIが推測した場合、同じ食材の再提案を避けたり、補完するレシピを提案したりします。食品ロスの削減にもつながるように設計されているわけです。

そして、「承認・変更・削除」の操作をしながら進めます。提案されたレシピが気に入らなければ、食材はそのままにしてレシピだけを変更することも可能です。

食材やレシピを削除したり、追加したりすることで、自分の生活リズムに合わせた提案へと整えていく仕組みです。

従来型のミールキットから転換して大成功

会議室で笑顔で会話する男女のイメージ画像

A社は、米国ニューヨーク市で2015年に創業しました。最初はグルテンフリーのミールキット企業で、野菜ヌードル+ソース+タンパク質のセットを宅配で販売していましたが、利益が出ませんでした。

そこで、自社製造のミールキットをやめ、大手ブランドと連携して「週の買い物をまるごと提案するAI食材サービス」に転換。

AIが提案しやすいように、食材数は600点ほどに絞って、1万5,000通りの食事を組み立て可能にしました。再出発した2021年から右肩上がりで、売上は上昇していきます。

2021年の売上1億6,100万ドルから、2024年は6億ドルを達成し、10億ドル・ブランドへの期待が語られるまでに成長しています。

なお、6億ドルという数字は、年間平均購入率が1,000ドル近くで、約60万世帯に配達しているので、この数字が出てきたものと思われます。
このように、冷蔵庫を開ける日常が、AIによって新しい食の体験へと変わり始めています。

(文)経済ジャーナリスト 嶋津典代
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2025年11月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。