モチベーションを生み出す「上手に任せる」技術
2026年1月27日
お店づくりトピックス
■業種・業態:小売業
■キーワード:モチベーション/貢献感/成長ループ
チームで成果を上げるには、自分一人で抱え込まず、部下や他のメンバーに仕事を任せることが大切です。それが彼らの成長を促し、チーム全体のパフォーマンスや売上の向上に繋がります。ポイントはモチベーション。スタッフのやる気を引き出す「上手な任せ方」を紹介します。
「切り出し方」が肝心 意義や目的をしっかり伝える
「どうしても部下に任せられない」「他人に任せるのが苦手」という理由として多いのが、「自分でやった方が早い」です。プレーヤーとして有能な人ほど、そう考えてしまいがちです。しかし、仕事を任せず抱え込むことは、長い目で見ると部下や他のメンバーの成長の機会を奪い、チーム全体の力を低下させます。「任せる」ことによって、任された側は信頼されていると感じ、仕事に対するモチベーションが上がります。結果的にチーム全体のパフォーマンスが上がり、売上の向上などにも繋がります。
任せる上で最も重要なのが「切り出し方」です。最初の一言でその仕事をやってみようと思ってもらえる意欲をつくり出す必要があります。ポイントは「感謝される」「褒められる」「自分しかできない特別感」の3つです。加えて、なぜその仕事が必要なのかという「意義」や「目的」をきちんと伝えることが欠かせません。
例えば、資料作りを頼む際には単に依頼したい内容を伝えるだけでなく、「先週の資料ありがとう。役員会議でも分かりやすいと評判だったよ。これも次の販促企画が承認されるかどうかが、かかっている重要な書類なので、〇〇さんに頼むしかないと思っていてね」のように伝えます。
ここには前述の3つの要素と、「なぜそれが必要なのか」という理由がきちんと入っています。その仕事の意義や目的が分かれば、任された側も高いモチベーションで取り組むことができます。出来上がった資料もクオリティの高いものになるはずです。
基本は「適性」×「意欲」 Z世代は「貢献感」を重視
よい成果を上げるには、誰に頼むかも鍵になります。人は誰でも得意・不得意があり、「能力があるか、ないか」より、その仕事が「向いているか、向いていないか」の方が大切です。例えば、数字が苦手な人に細かい計算が必要な書類の作成を任せても、効率が悪いばかりか、本人のモチベーションも上がらないことでしょう。
さらに重要なのが「相手のやる気」、つまり「意欲があるかどうか」です。「意欲」には①自分の中で完結する意欲、②他者からもらう意欲、③他者に与える意欲の3つがあります(図1)。どれが優れているというわけではなく、どれもが立派なモチベーションになります。
例えば、「最近の若者は出世したいとか、お金を稼ぎたいという意欲に乏しい」などと言われていますが、彼らにまったく意欲がないわけではありません。むしろ③の「世の中の役に立ちたい」「チームに貢献したい」といった意欲を持っていることが多いのです。
Z世代といわれる現在の20代は成長願望が強く、自分の能力を生かすことや自分がチームのためにどう役立っているのかを気にする傾向があるので、任せる仕事の意義や目的をしっかり伝えると、高いモチベーションで取り組んでくれます。

過度な干渉は厳禁 軌道修正は相手の意見を尊重
一方、中高年以上は②の意欲に寄る傾向があります。彼らは今まで仕事をしてきたプライドや、自分なりのやり方があるので、あまり細かいことは指示せず、目的やゴールだけを伝え、到達方法は相手に任せるのがモチベーションを下げない秘訣です。
重要となるのは、人には様々な適性や意欲があることを理解し、メンバーの意欲(何がしたいか)と適性(何ができるか)を見極め、それにマッチした仕事を任せることです(図2)。その方が本人も満足し、高い成果を上げられます。そのためには普段から彼らの仕事ぶりを注視し、面談などを通じ、興味や意欲の源泉がどこにあるのかを知っておくことが大切です。
一度任せると決めたら、過度な干渉は禁物です。任せると言いながら、しつこいぐらい途中経過を聞いたり、あれこれ指図したりすると、相手は信頼されていないと感じ、やる気を失ってしまいます。ただし、相手の経験が少なく、不安に思っているようなら、途中経過に気を配り、必要に応じて軌道修正をアドバイスすることも必要です。その際も自分の考えを押し付けるのではなく、一緒に考えるという姿勢が大切です。
小売店や飲食店などでは、若い社員が年上のパート従業員やアルバイトに指示を出す場面もあります。そうした場合は基本的に敬語で話し、きちんと感謝の言葉を述べたり、褒めたりすることが欠かせません。作業の途中でも「頑張っていますね」などと声がけすると、相手はしっかり見てくれていると感じ、モチベーションが上がります。
最近は1日のうちの数時間だけアルバイトとして入るという働き方を選ぶ人も増えており、その日初めて会った人に指示を出すケースも増えています。
そのような場合は「これができれば、他のアルバイト先でも重宝される」など、何かその人の意欲創出につながる一言を伝えると、よりモチベーション高く働いてもらうことができます。

「まみむめも」で成長ループをつくり出す
ここまで見てきたように、仕事で高い成果を上げるにはメンバーのモチベーションが重要です。そのモチベーションを大きく左右するのが「任せ方」です。
「正しい任せ方」は相手のやる気を引き出し、達成感を与え、成長を促します。一方、「間違った任せ方」は成果が伴わないばかりか、せっかくの人材を潰すことになりかねません。
「間違った任せ方」とは、自分が楽になることだけを考えた、相手のことを考慮しない任せ方です。やってくれれば誰でもいいと考え、命令として押しつけ、フォローや感謝の言葉もありません。これでは任せられた方のモチベーションは下がる一方です(図3)。
「正しい任せ方」をするには、まず相手の身になって考えることが大切です。その仕事を行う余力があるかどうか。過度なプレッシャーにならないかどうか。その上で、その仕事の意義や目的、感謝の言葉などを伝えます。
仕事を任せることで、部下やメンバーは成長します。そこでまた次の仕事を任せます。そうした持続的成長を支えるキーワードが「任せる」から始まる、それぞれの頭文字を取った「まみむめも」です(図4)。
「まみむめも」を繰り返すことで、個人も組織もらせん階段を上るように成長していくことができます。「正しい任せ方」を実践し、メンバー全員が高いモチベーションで働ける、活気ある職場をつくっていただきたいと思います。

監修:山本 渉(やまもと・わたる)
ジェネラルマネージャー兼統括ディレクター
※当記事は2026年1月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

